ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。
「劇場版 仮面ライダー対じごく大使」考察
あらすじ
「東日本ロードレース選手権」に出場する本郷猛と滝和也。
立花藤兵衛、エミ、トッコが応援する中レースはスタート。
スタートダッシュを決めた猛と滝はトップ2を先取。
そんな2人をヘリから見下ろす怪しい影が…
奴らは世界征服を企む悪の組織「ショッカー」。
今回の作戦は最高幹部である「地獄大使」が指揮。
2人を目標地点に誘導出来次第、爆撃するよう指令を下す。
だが爆撃などこれから起こるであろう真の野望の前には些細な出来事だった…
バイクでスタートしヘリでゴール!棄権理由は世界の平和を守るため!
今回の劇場版は「ある大人の事情」があるためテレビ版との時系列を考察しようとするとどうやっても合わないことがわかる。
再生怪人種類から普通に考えると「カミキリキッド」が登場した66話「ショッカー墓場 よみがえる怪人たち」より前ということになるのだが、その大人の事情で急遽今作が初お披露目だったはずのカミキリキッドが劇場版公開前の66話に「先行」で登場という形になっている。
上記の形をテレビ版と時系列で辻褄を合わせようとすると劇場版が怪人カミキリキッドで66話が再生怪人カミキリキッドとなるはずなのだが、両方とも再生怪人ではなく「新怪人カミキリキッド」という扱いになっている。
そのため事情を知らずに今作を観賞したファンにとっては立花レーシングクラブの面々が記憶喪失、もしくは鳥頭になったのではないかと感じてしまうだろうがここは大人の事情によるものだ。
なのでこれはこれで独立したものという見方をすれば楽しく鑑賞できるだろう。
冒頭で展開される「東日本ロードレース選手権」も63話「怪人サイギャング 死のオートレース」でも行われており、こちらは63話に登場した怪人「サイギャング」に妨害されている。
だが63話ではショッカーを蹴散らした後レースに復帰し仮面ライダー1号「本郷猛」とFBI捜査官の「滝和也」がトップ1、2を独占。タフなレースを披露している。
現実の「全日本ロードレース選手権」が1ヶ月間隔で開催されていることを考えると63話から1ヶ月後の話しだろうか?
63話ではショッカーに邪魔をされた2人は今度こそ純粋にレースを楽しみたいところだ…
だがショッカーから注意を逸らしている時こそショッカーにとっての好機。
レースコースは決まっているので誘導もしやすい。
ヘリから戦闘員がレースを監視し分かれ道に差し掛かるところで待ち伏せしていた戦闘員が誘導矢印を正しい進路とは逆に変更し2人を脇道に誘導する。
そしてコースを間違えたと自覚をし降車した2人目がけてヘリから手榴弾を投下して爆破する。
2人の死体を確認するためにヘリを降下させた戦闘員だが生存していた2人に返り討ちにあう。
爆撃の音はスタート地点まで響き渡る。それと同時に猛と滝がコースアウトにより行方不明となったことが放送される。
レース運営が爆発音にはスルーなのがちょっと笑える。運営はバイクエンジンの破裂音だろうと感じたからかな?
心配になった立花レーシングクラブの面々は応援用の車に飛び乗りコースを捜索する。
この応援用の車というのが11話「吸血怪人ゲバコンドル」でも似たような栗色の塗装で登場したいわゆる「ブライダルカー」の応援車版だ。
ブライダルカーでは「結婚おめでとう」など新郎新婦を祝福する言葉が書かれるが今回はレース応援用なので「必勝」、「滝バンザイ」、「ヤレ本郷!イケ滝 頑張レ」などの応援メッセージが書かれている。
そして座席の天井には立花RCとレーシングクラブの略称で旗が掲げられている。
こういった応援メッセージを車に直接書いちゃうところが昔ながらの文化であり、効率化された現代ではあまりお目にかかれないであろう手間暇かけた温かい応援ですよね。
でも猛、滝の身の安全を確認しようとする緊迫した場面でこの痛車で爆走している姿はシュールだ(笑)
レースは邪魔をされたがショッカーの作戦を砕くには良い機会だと前向きな猛と滝は倒した戦闘員から服を剥ぎ取りヘリを奪取。
そのまま戦闘員のフリをしつつ地獄大使の命令で「ショッカー東京支部」へ潜入する。
明かされる野望は富士より高く、闇よりも深い
ショッカー東京支部へ潜入した猛と滝。
だが潜入の所作が悪かった!
ショッカーのアジトは至る所に監視カメラが設置されている。
そのためいくら戦闘員に変装していても両手を広げてコソコソとアジト内を歩いていたら明らかに「アジトの出入が不慣れ=アジトに初めて訪れた=部外者である」と気づかれるに決まっている。
どうせ変装しているなら堂々と任務から帰ってきた戦闘員を演じなければならなかった。
案の定それを見た地獄大使の罠にはまり密室に閉じ込められてしまう。
そして天井から毒ガスが降り注ぐ。このままでは2人とも溶けてしまうと猛は滝を肩車し天井の脱出口を開こうとする。
だが脱出口は怪人「カブトロング」が膝で抑えており開かない。
これを見た時に私は仮面ライダーに変身して脱出口をジャンプパンチで叩いてカブトロングの半月板を破壊するのはどうだ?とダークサイド的な考えがよぎったがそういった選択を2人はせず密室から消えてしまった。
溶けてしまったのか?と思ったが猛は仮面ライダーに変身しており、カブトロングの後方から現れた。
余談ですが猛は天井で脱出口を押さえていた怪人を声だけでカブトロングと判別していた。
そしてカブトロングもまた姿を見せていない仮面ライダーに対して、「何!?その声は仮面ライダー!」と言い当てている。
凄いですよね…もしかしたら変身前の猛かもしれない。実際、密室にいたのは猛だったのでよく仮面ライダーに変身した後だということはわかったな…マスクでこもった声だったからかな?こやつら利き怪人とか利き仮面ライダーとか強そう…
話しはそれたが密室を脱出した2人は作戦室に向かう。
だが地獄大使はおらず、もぬけの殻。
逃げられたかと思ったがどうやらある作戦のために移動を開始したようだ。
地獄大使がアジトを放棄した今、アジトは30秒後に爆発することが通告される。
その冥土の土産と言わんばかりにビデオ通信で地獄大使は今回の作戦概要を2人に明かす。
今回ショッカーはある秘密の場所に大要塞を構え、そのアジトに「スーパー破壊光線」を設置。
その装置を使えば日本全土にいつでもどこでも落雷させその土地を焼き払うことができるほど強力な兵器である。
これが今回ショッカーが企んでいる作戦概要だ。
これはすぐにでも大要塞の場所を特定してスーパー破壊光線を破壊しなければ!
だが作戦室のドアも閉ざされまたも密室となる。ドアを破壊しようにもショッカーのコンピュータが仮面ライダー対策用に強度を設計したドアのため破壊できない。
こういう時こそ59話「底なし沼の怪人ミミズ男!」で発見したエナジーコンバーター出力アップでパワー増強したいのだが時間がない…
爆発まで残り15秒…地獄大使も勝ちを確信したのか「グッドバイ!!仮面ライダー、滝和也」と上機嫌だ。
なんとか脱出方法を探ろうと仮面ライダーは超聴覚を使い時限爆弾の秒針が刻む音に耳を傾ける…
しかし、5秒前になっても脱出のめどが立たずアジトは大爆発。
このパートで少し分かりにくい表現が2つ。
1つは2人がアジト潜入時に閉じ込められた密室での脱出方法。
もう1つは作戦室からの脱出方法がわからないということだ。
前者は猛が仮面ライダーに変身して脱出したのだろうが、壁を破壊したなどの形跡がないため分かりにくい。またその後に訪れた作戦室では仮面ライダーが破壊できない強度のドアを使用していたのでアジト全体がその設計だった場合、最初の密室のドアをぶち破れたとも考えにくいため脱出方法が分かりにくいこと。
そして後者はそもそも爆弾をストップ、破壊できたわけでもなく、アジト全体が大爆発しているのにも関わらず2人とも無傷なのが疑問に残るところ。
仮面ライダーであれば爆発に耐えた可能性はあるが、滝は生身のため仮に仮面ライダーが庇ったとしてもかなりの重症を負うだろう。
後述するが今作で滝は常人離れしたとんでもない耐久力が披露されるためある意味「滝は爆弾程度では死なない」という印象付けなのかとすら思ってしまう。
どちらにせよこのパートの脱出劇はないに等しいほど分かりにくかった。
やはり仮面ライダーに敗走し続けた男のいうことは違うね!
アジトを2人ごと爆発したが地獄大使に油断はない。
スーパー破壊光線を大要塞に設置するまでは油断できないと立花レーシングクラブを襲い人質を確保する。
上機嫌に仮面ライダーと滝に別れを告げていたが、最高幹部はみな1度のみならず何度も仮面ライダーに苦汁をなめさせられた経験があるため、生きている可能性も考慮して先手を打つ。
やはりここが最高幹部と一般構成員との意識が大きく違うところだろう。
案の定アジトの大爆発からしれっと生還した滝はレーシングクラブに顔を出すも誰もいない。
マグカップは温かく、藤兵衛のパイプも転がったまま火が付いている。
何かおかしいと感じた滝は動き出す。
先行して猛はエミとトッコを乗せたジープを追跡。
ジープが停車したので難なく2人の救出に成功するがそれは罠であり、空から爆撃機かと思う音で3体の再生怪人「ゴキブリ男」、「ギリーラ」、「セミミンガ」が攻撃を仕掛けてくる。
そこへ「カミキリキッド」も加わり大乱戦。
仮面ライダーに変身して戦う猛はゴキブリ男を尋問し大要塞の場所が「富士山」であることを聞き出す。
富士山のどこかまで聞き出そうとするも口封じのためにカミキリキッドがゴキブリ男を光線で倒してしまう。
カミキリキッドは退散し仮面ライダーだけが取り残される。
その後ヘリで追いかけてきた滝と合流。
滝はヘリでショッカーの別動隊を追跡しており富士山にトラックで何かが運ばれていることを確認した。
エミとトッコの保護は滝に任せて仮面ライダーはトラックの追跡に向かう。
追跡に勘づいた地獄大使は白煙で目くらまし。
トラックは消え、その代わりに「ジャガーマン」と「サイギャング」のバイク隊が現れてバイクアクションに移行する。
この2体の怪人はテレビ版でもバイク隊を率いるほどバイクが得意な怪人だが、テレビ版では思ったよりバイクアクションが観れなかったのでこれは嬉しい演出だ。
しかもさすがは劇場版で予算が多いのかバイク隊の戦闘員はちゃんと専用のライダースーツとヘルメットを着用している。
季節にもよるが戦闘員のタイツだとバイクでの走行時は寒かろうし、今作のようにデコボコの草原を走るのであれば防具着用のほうが安全だ。
しかし、この場面てっきりバイクアクションでジャガーマンとサイギャングと戦うのかと思いきや戦わず、たまに走行ミスで戦闘員が事故を起こす程度のアクションシーンだった(程度ってね…(笑))。
それもそのはず、2体の怪人はある地点までの誘導要因に過ぎなかった。
2体が草むらの影に消えたため、その周辺が大要塞の入口と思い込んだ仮面ライダーはバイクを降車する。
大要塞の入口を探そうと周りを見回すと草原の向こうから「セミミンガ」率いる騎馬隊が現れる。
これは新しい!車、バイク、トラック、飛行機、ヘリなどあらゆる乗り物を使いこなしてきたショッカー。
だが今回は新たに馬に乗って登場!
これが案外理にかなっており、デコボコした草原をバイクで走るより馬のほうが圧倒的に小回りが利く。
そしてセミミンガが指す方向そびえ立つ十字架には藤兵衛とユリが磔られている。
仲間を人質に取られた仮面ライダーは抵抗できず、騎馬隊に囲まれて投げ縄で縛られ引き回される。
そこへ滝がヘリで救援に駆けつけるが草原の地下から破壊光線が現れヘリを撃ち落とす。
もう誰から観ても滝の死を覚悟したがやはり彼の耐久力は仮面ライダーについで人類最強。
今作の目玉であるスーパー破壊光線なら死んでいたかもしれないが破壊光線程度なら死なないと思わせる滝の安心感。
なんかショッカーにより命を落としたFBIの仲間たちの分だけ滝がパワーアップしているのではないかと感じるほど滝の生命力には凄みがある。仲間の分まで強くなるなんてカッコイイ!
滝はパラシュートで脱出し藤兵衛とユリを救出。
人質が解放された仮面ライダーは本領発揮し縄を振りほどき戦闘員から馬を奪う。
馬で機動力を得た仮面ライダーは次々と戦闘員を撃破。
まさにリアル騎馬戦が展開される中、劣勢となりつつあるセミミンガは騎馬隊とともに撤退する。
去り際の「退けー!退けー!」がまさに時代劇で観る敵将の姿だ。
セミミンガの羽がちょうど大将が羽織るマントみたいで意外と騎乗している姿が様になっているんですよね。
向かうは富士のショッカー大要塞!狙うはスーパー破壊光線!
セミミンガを撤退させた仮面ライダーはよくわからないけど草原から忽然と姿を消したので滝1人で富士山へ乗り込むことに。
滝は正面突破を試みるが突如行方をくらましていた猛が姿を現し滝を引き止める。
これは想像だがおそらく猛(仮面ライダー)が草原から消えたのはセミミンガを追っていったためではないだろうか?
セミミンガが退散する先はおそらく富士の大要塞。
そう予測した猛が後をつけた先で目にしたものが頂上に設置されたスーパー破壊光線。
それを見た猛は穏便にスーパー破壊光線を破壊することが最適と考えたため滝の正面突破を引き止め、迂回して頂上を目指す提案をしたのだろう。
…とも考えたがそういえば猛(仮面ライダー)はセミミンガの撤退方向と逆方向に馬を走らせて去って行っていることを思い出した…何やってたんだ…富士登山のためにスキーウェア取りに帰ったのかな?
何はともあれ戦闘員の監視を避けて頂上を目指す2人。
山の中腹に差し掛かりもうすぐ頂上というところで2人の前に11体もの再生怪人が現れる。
「海蛇男」、「ミミズ男」、「エイキング」、「ゴースター」、「プラノドン」、「キノコモルグ」、「ザンジオー」、「ドクモンド」、「ムササビードル」、「ザンブロンゾ」、「毒トカゲ男」と再生怪人どころか再々生怪人も並ぶ。
監視を避けたとはいえやはり頂上付近には幹部怪人を配置して守備を固めていたショッカー。
2人で相手をしていれば埒が明かないと猛は滝を先行して頂上に向かわせ仮面ライダーに変身する。
今作は仮面ライダー2号の登場はないため1号のみで再生怪人11体を相手にするのは可能なのだろうかと考えたがすぎた心配だったようだ。
よくよく考えると11体の内半数は旧1号もしくは旧2号が倒した怪人が含まれている。
ならば新1号となってパワーアップした仮面ライダーにとっては取るに足らない怪人もいるだろう。
唯一やばかったなと感じる怪人は59話「底なし沼の怪人ミミズ男!」で新1号を追い詰めた「ミミズ男」ぐらいだろうか。
だが学習能力の高い猛にとって1度戦い勝利した怪人をもう1度倒すのは造作もないこと。
11体に囲まれても全く怯まずに怪人たちに立ち向かう。
ザンブロンゾ、毒トカゲ男、ミミズ男を倒したところでザンジオーが勝利宣言!
仮面ライダーと再生怪人が戦っている間にスーパー破壊光線は設置完了。発射は秒読み状態。発射目標は「東京タワー」。
地獄大使は東京タワーがアメのように溶ける姿を想像してワクワクしている…
それを聞いた仮面ライダーは急いで滝の後を追い頂上へ大ジャンプ!
先行して大要塞へ向かった滝は動力室に忍び込んでいた。
スーパー破壊光線発射まであと30秒!
もう迷ってる暇はないと監視員を蹴散らし破壊光線の動力源?コントロール装置?をガチャガチャいじる。
こうすることで破壊光線発射がトリガーとなり回路がショート?して要塞が爆発するように機械を操作したようだ。
騒ぎを聞きつけたカミキリキッドが駆けつけるが、ザンジオーから騒ぎを聞いた仮面ライダーも同時に到着してもう一方の機械もガチャガチャ操作。
カミキリキッドは発射を止めさせるよう指示を出すも時すでに遅し。
スーパー破壊光線は大要塞もろとも大爆発を起こし、地獄大使もアジトを放棄し撤退を余儀なくされる。
現状(66話時点)ショッカー最大級の野望を砕かれた仮面ライダーに一矢報いようとカミキリキッドが立ちはだかる。
大要塞を破壊されても仮面ライダーを倒せばまたチャンスは訪れる。そういう気迫で迫りくるカミキリキッドは得意の光線で距離を保ちながら優勢に戦闘を進める。
だが光線の発射源である角をライダーパンチで破壊されたカミキリキッドは劣勢に追い込まれライダーキックで撃破される。
こうした結果を踏まえるとカミキリキッドが登場した66話「ショッカー墓場 よみがえる怪人たち」と今作後の67話「ショッカー首領出現!! ライダー危し」で首領自ら囮作戦を決行したのもなんとなくだが頷ける。
今作でこれだけ大きな作戦、そして日本での活動の中核を担うはずだった大要塞を破壊されさぞご立腹の時期であっただろう。
今作を観ることで67話はその怨念が起因した作戦なのではないかと勝手に勘ぐってしまう。
アジトを破壊されたなら偽のアジトで仮面ライダーを始末してやる!と意気込んだのが67話であるのではないだろうかという新たな視点で今作を観ることができて楽しかった!
時代が時代、タイミングがタイミングなら仮面ライダー2号、もしくは3号は滝和也だったかも?
今作はテレビ版では逆に描かれなさ過ぎたと感じる滝和也の有能っぷりが描かれている。
元々、FBI捜査官なので優秀であることは視聴者であれば周知の事実であり常人離れした身体能力で改造人間である戦闘員も圧倒する実力を持っている。
しかし幹部怪人クラスとなるとやはり分が悪いため捕まり人質となってしまい仮面ライダーに助けられるパターンが多い。
だが今作では再生怪人の群れにもひるむことなく互角に渡り合っている姿を確認できる。
その理由として滝の実力が単純にアップしているからだろう。
テレビ版ではたまに猛や一文字とトレーニングをやっていたことを匂わせるセリフやシーンがある。
そのため仮面ライダーほど見えにくい変化だが確実に滝も成長していたのであろう。
そして今作はざっくり言うと66話付近の出来事。この頃には初期の滝とは実力が大きく向上しており、仮面ライダーを通して戦闘データがある怪人、つまりは再生怪人であれば対抗できるようになっているのかもしれない。
それに80話「ゲルショッカー出現! 仮面ライダー最後の日!!」で結成されるゲルショッカーの戦闘員はショッカー戦闘員の3倍は強いがその戦闘員を圧倒していることからゲルショッカーの怪人のように2つの特性を持つ合成怪人ではなく、1つの特性しか持たないショッカー怪人であればこの時期辺りからは滝の敵ではなくなっていたのかもしれない。
しかも、しかもだ…滝は常人にもかかわらず圧倒的な耐久力と危機回避能力を誇り、今回もヘリが一瞬でバラバラになるほどの威力を持つ破壊光線をヘリとともに浴びたにもかかわらず無傷でパラシュートで降下してくるのである。
「ちっきしょう!ショッカーの野郎…ただじゃおかないぞ!」で済むんだから敵からしたらまいっちゃうよね…こりゃ敵さんが仮面ライダーとセットで消したがるわけだ…
富士の登山シーンでも改造人間である猛がハアハア言ってるのに滝は長縄担ぎながら先頭で登ってるんだからスタミナも凄い!
時代が時代なら滝兄ちゃん…あんた仮面ライダー3号だよ…
劇場版ならではの長尺が可能にする丁寧な演出
劇場版及び特番など長尺で描かれるストーリは普段テレビ版ではカットされてしまうであろうシーンや所作が描かれていることが新鮮で好きだったりする。
今作でも様々なシーンが丁寧に演出されている。
例えばキャラクターの特徴がわかる冒頭のレーススタートシーン。
立花レーシングクラブが応援する中で猛は控え目に微笑んだ後に軽く頷き、滝は白い歯を見せながらVサインで応える。
これだけでも猛はクールで感情を内に秘めるタイプであり、滝はFBIだが陽気で目立ちたがりなタイプであることがわかる。
また猛は大要塞を破壊するために富士山を登っているにも関わらず道中雪の匂いを嗅いだり、雪いじりをしたりするなど自然への好奇心が旺盛であることがわかる。
生化学研究者の好奇心が富士の大自然を前に抑えられないのだろう。
他にもヘリの通信員がちゃんとインカムを装着していたり、戦闘員に変装した猛が地獄大使からの通信にちゃんとハンカチで口を塞いで変声していたりと所作が細かい。
藤兵衛たちを誘拐する時も1人1人を床に開けた穴に運びこんでいく姿なんてテレビ版では絶対カットするよね!
滝もテレビ版ではFBIの割には推理力が垣間見えるシーンは少なく、猛や一文字が案を出したり解決してしまう場面が多い印象がある。
だが今回は立花レーシングクラブにメンバーが不在の時、マグカップを触り「まだ温かい」とつぶやいたり、パイプの火の不始末を見て藤兵衛の習慣では有り得ないなどFBI捜査官らしい推理力を見せる。
ショッカーアジトのドアもテレビ版のように板1枚のような薄いドアではなく、仮面ライダーが破壊できなさそうな重く頑丈そうなドアとなっている。
これらの演出はテレビ版ではカットされたり簡素化されることが多いので、今作は劇場版ならではのスケールとキャラクターの多彩な一面が楽しめるのが魅力の1つともなっている。
「劇場版 仮面ライダー対じごく大使」登場怪人のテレビシリーズ登場回紹介
仮面ライダー対じごく大使の再生怪人の登場回紹介記事
・ムササビードル:23話「空飛ぶ怪人ムササビードル」
・ザンブロンゾ:30話「よみがえる化石 吸血三葉虫」
・エイキング:38話「稲妻怪人エイキングの世界暗黒作戦」
・ゴースター:41話「マグマ怪人ゴースター 桜島大決戦」
・プラノドン:43話「怪鳥人プラノドンの襲撃」
・ザンジオー:「劇場版 仮面ライダー対ショッカー」
・ジャガーマン:53話「怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦」
・海蛇男:54話「ユウレイ村の海蛇男」
・ゴキブリ男:55話「ゴキブリ男!! 恐怖の細菌アドバルーン」
・ギリーラ:56話「アマゾンの毒蝶ギリーラ」
・ドクモンド:57話「土ぐも男ドクモンド」
・毒トカゲ男:58話「怪人毒トカゲ おそれ谷の決斗!!」
・ミミズ男:59話「底なし沼の怪人ミミズ男!」
・ハリネズラス:62話「怪人ハリネズラス 殺人どくろ作戦」
・サイギャング:63話「怪人サイギャング 死のオートレース」
・セミミンガ:64話「怪人セミミンガ みな殺しのうた!」
・カブトロング:65話「怪人昆虫博士とショッカースクール」
・カミキリキッド:66話「ショッカー墓場 よみがえる怪人たち」
今回は18体もの怪人が参戦するが仮面ライダーにはカミキリキッドと合わせて5体(内1体は実質カミキリキッドが撃破)しか撃破されていない。
「劇場版 仮面ライダー対ショッカー」でもそうだが長尺とはいえあくまで東映まんがまつりの1作品。
上映時間は35分ちょっとなのでテレビ版より10分程度長いだけなのであまりにもたくさんの怪人を出すとさばききれないのだろう。
だがそのため撃破されない怪人がその後のテレビ版で登場しないという矛盾発生理由が仮面ライダーが怪人を倒しきれないから矛盾が生じるのか、ショッカーが大量の怪人を上手く指揮できていないためその後の怪人の扱いが不明なのかどうにも消化不良なところはある。
だが今作も前作同様にこれからもしばらく続くテレビ版の通過点なので怪人のうち漏らしも「まあこれからまだまだ戦いは続くからショッカー全滅は変だよねって意味でとらえれば」そうややこしい話しでもないだろう。
どうしても辻褄厨みたいな感じになってしまうのが悪いクセだ…
ただ登場怪人の中でハリネズラスの扱いだけは小さく、エミとトッコが乗ったジープを追跡している猛がバイクで通ったのを確認して戦闘員に合図を出すだけの役割だった。
本当に一瞬であり、戦闘にも参加しないので登場してるといっても良いのかというレベルに留まっている。
でも幹部怪人が力を合わせて色んな場所から仮面ライダーを倒すために指揮しているんだよと視聴者に伝える意味では良かったのかな?
ストーリーの転換点と考察
滝和也が不死身なこと
色々考えました…
今回ショッカーの落ち度はどこか考えました…
ですがこれだ!という明確な落ち度は見つかりませんでした…
東京支部をうたっていたアジトを仮面ライダーと滝ごと爆破した時も地獄大使に油断はなかった。
それどころかもし2人が生存していた場合を想定して先手を打ち人質まで確保。
バイク隊と騎馬隊をぶつけることで仮面ライダーの追跡を巻き、大要塞に無事スーパー破壊光線を運び入れることにも成功している。
仮面ライダーが向かう先々で再生怪人をぶつけて時間稼ぎ。
最後は要塞入口付近に怪人を固めて防衛。
いつものような慢心は特に感じなかった。
強いて言うならばゴキブリ男が大要塞の場所が富士山であることをばらしてしまったことだが、富士山方面は事前に滝がヘリで追跡しており仮面ライダーが尋問しなくてもリサーチ済み。
ザンジオーがあとちょっとでスーパー破壊光線が発射されることを仮面ライダーに教えてしまっていたが、先行して侵入していた滝のみでも動力室を爆破することはできたのでそれほど大きな決め手でもない…
大要塞の場所とスーパー破壊光線の設置を目立ちやすい頂上に置いた結果、入口や破壊目標がふもとからも丸見えのため、猛と滝が目標を定めやすく発射時間前に要塞にたどり着いてしまったことが落ち度と言えるのか?
だけど全国にスーパー破壊光線を届かせるためにある程度高い標高が必要となるとやはり頂上一択であるのでそれを落ち度とするのは…ん~どうだろう…
これに関して良い方法があるとすれば滝が乗ったヘリを破壊した破壊光線の隠し方!あれは草原にカモフラージュしたハッチがいきなり開き現れたので滝も対応する間もなく光線の命中を許した。
あれと同じ方法でスーパー破壊光線を発射直前まで富士山の雪化粧にカモフラージュしたハッチ内に隠し猛と滝が捜索に手間取るようにして時間稼ぎ。
1度起動すれば場所を特定されすぐに破壊された可能性はあるが最初の破壊目標である東京タワーぐらいなら破壊できて東京を大混乱に陥れることができたかもしれない。
でも今回最大の落ち度というか誤算は「滝和也が不死身すぎた」ということ。
アジトごと爆発しても無傷、ヘリごと空中爆発させても無傷であり人質まで救出される。
ヘリで大要塞の場所を特定されたあげく、再生怪人と互角に渡り合い、最後にはダメ押しの動力室爆破。
テレビ版では仮面ライダーのことを不死身だと何回か発言している滝だがまさかのご本人が一番無敵超人だったというオチだ。しかも未改造である常人で…いや…未改造でも超人であったようだ…
はぁ~…ショッカーからしたらやってられんですわ!
いや~滝の活躍が観れて嬉しい!でもちょっと今回はチートすぎた(笑)
今回の特撮表現の面白さ
カミキリキッドによる地面からの侵入表現
立花レーシングクラブの面々を誘拐するためにカミキリキッドが床を突き破って登場するシーンがあるのだが、その前触れとしてまず地震が発生する。
これはカミキリキッドが地中を掘り進めている影響を表現しているのだろう。
そしてカーペットの下に空間を作りその下から緑のライトで照らすことでその下にカミキリキッドがいることを表現している。
なぜ光っていたかというとカミキリキッドは角から光線を発する能力があるので地中を掘り進める際に灯りとして光を発していたからではないかと考えられる。
ライダージャンプのぼやけ?
今作で悪い意味で気になったのがライダージャンプのシーンだ。
今作ではなぜか仮面ライダーのジャンプ姿をぼやかしているのだ。
これを初めて見た時、一瞬自分の視力に異常をきたしたんじゃないと感じたほどだ。
テレビ版ではない表現だが、なぜあえてこのような表現にしたのだろうか?
何度も前後のシーンを観て考察しても何を表現したかったのかが想像出来なかった。
例えば仮面ライダーの攻撃が顔面に食らった怪人の視点とかだったらなるほど!怪人がダメージを受けてフラフラな状態を怪人視点で表現しているのか!と納得がいくが別にそうでもない。
強いて言えばジャンプの勢いを表現するためにぼやかしている?その割にはジャンプ速度は遅い。
これでジャンプ速度が速ければ残像に見えなくもないがちょっと苦しいかな?
藤兵衛とユリの十字架はりつけ表現
これは申し訳ないけど必要なかったかも…
このシーンは草原の向こうに隠している十字架を起き上がらせ、いきなり仮面ライダーに人質を見せことで戦意を喪失させるというシーンを表現したかったのだろう。
この十字架が草原の向こうから現れるシーンは実写で表現せず、十字架模型に藤兵衛とユリ人形をはりつけて起き上がらせている。
例えばこの後、滝がパラシュートで降下するシーンがあるのだが、これならば実写での再現が難しい。
だが滝が無事であることを伝えるには必要なシーンなので模型を使ってでも表現するべきだろう。
だが、藤兵衛とユリの十字架はりつけ表現は模型を使ったシーンを入れなくてもその後実写なので十字架が立つ方向を指差して仮面ライダーにあれを見ろ!のみで良かったと思う。
十字架を草原の影から起き上がらせることで仮面ライダーをびっくりさせるという表現をしたかったのだろうが実写で表現できないのであれば無理に差し込まずにカットしても良かったと感じた。
特撮特有の荒削りな模型表現も好きなのであまりリアル志向すぎても楽しめないのはわかっているがこのシーンに関しては模型を使うことで逆に安っぽいシーンになってしまっているのが残念に思ったのが正直な感想だ。
滝の乗るヘリを破壊した破壊光線表現
草原の下から現れた破壊光線が滝のヘリに向けて発射される。
光線はレーザーのように直線的ではなくカミナリのようにビリビリというエフェクトになっている。
カミナリのような表現はエイキングなど電気系の怪人によく使われるカミナリマークにフラッシュを当てる表現ではなく今回はちゃんとヘリ目がけて細くビリビリとした光線出ているように観える。
破壊光線装置とエフェクトが重なっているのでアニメーションとかと合成したのだろうか?
騎馬戦アクション
今回セミミンガは空から爆撃、地上からは騎馬隊を指揮するなど活躍している。
騎馬隊の連携も見事で演じている戦闘員全員が馬を乗りこなしている姿がまるで大河ドラマの仕込みのようだ。
仮面ライダーが乗馬するという珍しい映像も観られてこれは純粋に面白かった。
これでバイクアクションがなかったら乗馬じゃなくてバイクアクションも観たかったとなっただろうが両方ともガッツリ観れてお得な気分だ。
馬による仮面ライダー引き回し表現
騎馬隊に投げ縄で縛られる仮面ライダー。
寄りのシーンで引き回されている表現はおそらく画面外で人間に引っ張られるなど力配分を調整してスーツアクター自ら引っ張られていると思う。
逆に引きのシーンで実際に馬に引き回されている仮面ライダーは空のスーツが引き回されているので脱力感が凄く、変な方向に身体が折れておりちょっとホラー…
だが引きのシーンの方法で実際の人物を引き回すとなると馬の力加減によっては人命に関わるのでスーツのみを引かせて正解だと思う。
スーパー破壊光線の造形
滝が操縦しているヘリを落とした破壊光線はパラボラアンテナの先にはんだこての先を装着したような造形だ。
そしてスーパー破壊光線はスーパーという差別化を図るため、はんだこての先の周りに旅客機のエンジンのようなものを3つ取り付けたスーパーな造形となっている。
雪山での戦闘アクション
雪山でのアクションは斜面を滑るように雪を舞い散らせながらのアクションで土とはまた違った迫力が楽しめる。
そして再生怪人が襲い掛かる中しばらく猛が変身せず滝とともに生身でアクションを繰り広げている姿が長尺なのも良かった。
テレビ版だと尺の都合上サクサクと仮面ライダーに変身して戦闘に移行することも多いので本郷猛のアクションが存分に楽しめるのは嬉しい。
特撮満足度(★で5段階評価)
特撮満足度
アクション:★★★★☆
高所:★★★★★
火力:★★★★☆
水場:☆☆☆☆☆
仕掛け:★★★★☆
「劇場版 仮面ライダー対じごく大使」の名言・迷言・珍言・失言
ゴキブリ男「どうして俺がやられるんだ」、カミキリキッド「貴様がまぬけだからだ!」、ゴキブリ男「悔しい…ゴリゴリゴリゴリ!」
今作は珍しく幹部怪人が仮面ライダーの尋問に屈して秘密を喋ってしまうシーンがある。
そのためこれ以上余計なことを喋らせないためにカミキリキッドがゴキブリ男を光線で黙らせるシーンがある(撃破する)。
その際のゴキブリ男の捨て台詞が上記のやり取りだ。
確かに尋問に集中している仮面ライダーを攻撃してゴキブリ男を解放しこれ以上余計なことを喋らせないようにする方法もあるのでゴキブリ男からしたら「どうして?」と思うのも無理はない。
だが秘密を少しでも漏らした裏切り者に帰る場所はなく消えるのみ…これがショッカーの掟だ…
???「悔しいです!」
立花藤兵衛「ライダー!俺たちにかまうな!」、ユリ「そうよ!諦めてるわ!」
2人とも人質になった俺らにかまうな戦え!という意味で飛び出した言葉だ。
仮面ライダーの迷いを捨てさせようとして飛び出して言葉なのだと思うけど特にユリのセリフの肝の座り方が凄いと感じた。
基本的に立花レーシングクラブやライダー少年隊員は藤兵衛イズムを受け継いでいるメンバーなので肝が据わっており、覚悟が違う。
だが仮に私が諦めてるわ!と言われたらニュアンス的に「あまりあなたに期待してないわ!」というふうにとってしまいそうな気がする…
私って期待されてないんだ…って
絶対助けないと呪うって期待値が高くても困るけど、期待されないのも悲しい…
でもユリはさすがレディース最古参なだけあって他のメンバーとひと味違いますね。
ロケ地(執筆者の調べ)
・「富士山」
感想・まとめ
今作は仮面ライダー2号が登場しない分、滝和也の活躍が多く描かれている。
最初は2号登場しないのか…と思ったが2号が登場してしまうと滝の活躍が減ってしまうのでこれはこれで良い劇場版だったと思う。
前作よりもスケールアップして富士を要塞とした大いなる野望、そしてそれを打ち砕いた後に仮面ライダーが富士山をバックにたたずむロケーションは最高だ。
オートレース、侵入、脱出、大爆発!バイク、騎馬戦、ヘリから降下!大量の怪人を相手に大自然での戦闘アクションと盛りだくさん!
テレビ版視聴者にこそ普段カットしてしまうであろう演出が散りばめられており新鮮だ。
今作をもって仮面ライダー(初代)の劇場版は終了してしまう…個人的に少し残念なのがゲルショッカー結成後の劇場版も観たかったなという願望があります。
こういう実写ものってアニメーションのようにいつか観れるかもしれないではなく、俳優も歳を重ねるのでテレビ版の番外編を製作するなら今作ってほしいと思ってしまいますよね。
現在は俳優の若い頃をモデルとしたグラフィックを作成して合成したり、AI音声の精度も向上しているので作ろうと思えば作れるのかもしれない。
私の考えが古いのかもしれないがそれでも「役者本人で観たい!」という願望は常に強くあります。
その…AIやCG、VFXで演じた疑似の本人で満足しない自分でありたい!という頑固さが私の中にはまだあります。
空想のものや大掛かりな物をCGやVFXで実写と違和感なくスケールアップできるのは魅力的です。
だけど俳優はなんかこう…血が通った人間に演じてほしいなとそう思うのです。
今回判明したこと
・今回使われたショッカーアジトのドアは仮面ライダーの力をコンピュータで計算した上で設計したドアとなっており、仮面ライダーの力では破壊できない強度となっている
・ショッカーは人工的に自由な場所にカミナリを落とすことができるスーパー破壊光線を持っている
・藤兵衛は普段パイプ煙草の火の始末を怠らない
・ショッカーには騎馬隊がある
・仮面ライダー1号(本郷猛)は乗馬もできる
・滝は破壊光線程度では死なない
・結果破壊光線に限らず滝は不死身!