ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。
あらすじ
深夜、研究に勤しむ本郷猛と研究所の同僚「沢田行彦」。
沢田は「全ての金属を溶かして燃やしてしまう液体火薬」開発の大詰めを迎えていた。
その忙しさのあまり弟の「沢田ミノル」にもなかなか会えないほど。
ショッカーの悪事を知る猛は沢田の研究が利用されると感じ忠告する。
だが沢田は産業の発達に役に立つと信念を持って研究している。
猛が帰宅した後、ついに沢田は液体火薬の実験に成功する。
しかし、その背後では確実に奴らの脅威が迫っていた…
「しゃれこうべ」にこだわりがある怪人
ショッカーの刺客、怪人「ドクモンド」は「土蜘蛛」の特性を持った怪人だ。
土蜘蛛は現実世界で「古代、天皇に従わなかった豪族」や「伝承上の妖怪」のことを指す。
今回は怪人なのでどちらかというと妖怪のほうの特性かと思いきやそうではない。
地中に穴を掘り人間を引きずり込むことのできる蜘蛛という意味での土蜘蛛だった。
つまり「土に生息する蜘蛛」という程度の意味合いだということだ。
どちらかというと35話「殺人女王蟻アリキメデス」で登場した怪人「アリキメデス（アリジゴク）」のほうが近い特性を持っている。
アリキメデスと違うところは引きずり込んだ人間を殺した後に「しゃれこうべ（頭蓋骨）」のみ残すというところだ。
これは土蜘蛛の腹の中を開くと1990個もの死人の首があったという伝承からきたものだろう。
また病院で沢田のカモフラージュとして頭蓋骨を使用したり、ショッカーが沢田の脳ミソを狙っていることから何かと死人の首を連想させる演出が多いのも今回の特徴だ。
アリキメデス自体に何か毒などはなく、戦闘能力もそれ程とびぬけて高くはないが地中に引きずり込む力は強い。
人を引きずり込む演出もそうだが、地中に潜り込む際にただ穴に戻るのではなく、しっかりと穴を土で塞ぎながら逃走する。
穴を塞がないと仮面ライダーの超聴覚でその穴から音を頼りに逃げた方向を特定されてしまうのでこれは良い逃げ方だと思った。
研究データ強奪レースの末に両者大惨事
「全ての金属を溶かして燃やしてしまう液体火薬」の開発に成功した沢田。
確実に今後の生産に繋げるために研究データを徹夜でまとめる。
データをまとめ終わった時には既に朝を迎えていた。
既にドクモンドは深夜に守衛を殺して研究所に侵入し、沢田が研究データをまとめるのを待っていた。
そして帰宅しようとする沢田に襲い掛かる。
それを振り払って車で逃走するのだが、戦闘員のかく乱によりハンドルを誤り崖下に落下。
沢田は死に研究データも燃えてしまう。
沢田しか再現できない液体火薬を2度と入手できないようになったため地獄大使もご立腹
だがたまたま通りがかった猛の救出により沢田は一命をとりとめた。
ここからがショッカーの恐ろしいところ。
研究データは燃えてしまったが、沢田の生存が確認できると耳を疑うような作戦を計画する。
それは沢田の脳みそを取り出し、それを使い怪人を生み出そうというのだ。
こうすることで研究データも手に入り、構成員としても使役できる。
だがやり方があまりにも人道に反している。
沢田の回復を待って弟を人質にとり聞き出すのではなく、重症の身体はいらないから脳みそだけ取り出せばいっかと考えているのだ。
彼らは改造人間として一応は人間を名乗っているが人道という道は通るつもりはないようだ。
彼らにあるのは悪道、もしくは怪道だろう。
ところでこの液体火薬どのような産業の発達に寄与するでしょうか。
沢田は必ず産業の発展に繋がると信じて開発を行うがあまりイメージできないのだ。
液体火薬は例えば砲弾の装填に火薬をいちいち補充する必要がなくなるなどメリットがあるが、その構造上液体火薬は別タンクからの補充となる。
そうすると供給した液体から順番に燃焼していけば良いが、先に注入された液体から一気にタンクの中の液体火薬に燃焼してしまうと爆発する危険性がある。
これだけ扱いにリスクが残る液体燃料だが沢田のものはさらに「全ての金属を溶かして燃やす」というとんでもないおまけ付きだ。
先ほどの例でいうと液体火薬を貯蔵している金属製のタンクまで溶けて燃える事になる。
沢田の液体火薬は試験管に入れている状態では溶けたり燃えたりはしていないので何でも溶けたり燃えるわけではなく金属に限定されていることがわかる。
しかし、危険なものを保存する場合金属製の入れ物は必須。
例えばガスタンクなんかも金属製だ。
ようはそういった危険なものを保存できるという金属のメリットを真っ向から台無しにする液体。
それが沢田の液体火薬なのだ。
考えてもみてほしい。
金属に覆われた強固なタンクにこの液体金属を保存したが最後、溶けて燃えるのだ。
こんなものがどの産業に役立つのか。
それは恐らく「戦争産業」だろう。
産業の発達どころか破壊活動をするショッカーにとってこれほど都合の良いものはない。
序盤の猛の忠告もショッカーのこともあるが、戦争など軍事的利用以外の利用方法が思いつかなかったからではないだろうか。
優秀な科学者であれば良い利用方法に転換してくれるかもしれないが、私には思いつかなかった。
病院長の不遇
沢田が入院する病院長はドクモンドにしゃれこうべにされてしまう。
これは病院長に代わりドクモンドが病院長に変装するためだ。
沢田の手術を担当したことで思わぬ標的となってしまったのだ。
今回、沢田も大事故にあり危篤状態となり不幸にあっているが命はまだ繋いでいる。
だが病院長は殺されてしまっている。
一緒に手術室に入った看護婦さんが無事だったのが幸いだ。
ドクモンドが医院長のしゃれこうべを置いた前に白い花があるのが哀愁漂う…
宝のバミューダトライアングル推理
医院長に変装したドクモンドに沢田を誘拐されてしまい途方に暮れるレーシングクラブメンバー。
さあどこに誘拐された…と地図をなぞる。
藤兵衛は「沢田の家」、「医院長の家」、「病院」の3点を繋いだ中心に…と完全に当てつけみたいな推理になっている。
それ「宝の地図の隠し場所の解き方」か「バミューダトライアングル」だろ…
バミューダトライアングルとは
「フロリダ半島」、「プエルトリコ」、「バミューダ諸島」の3つを結ぶ三角形の海域で謎の消失現象が多発することからついた現象名のこと。
遭難とは違い、乗り物が遭難の痕跡も残さず消失したり、乗り物が発見されても乗員のみ消えていたりと科学では解明できない現象のため度々オカルト分野で話題となる。
または遭難が多発する魔の海域のことをそう呼んだりする。
それだけショッカーアジトの場所の検討が付かないということを苦境を表しているシーンだった。
五郎の行動力がピンチをチャンスに変える
五郎はたびたび事件解決に繋がるヒントや発言をする場面がある。
今回も打倒ドクモンドのための研究といい野原で蜘蛛を捕獲してくる。
五郎が賢いところはそれが土蜘蛛でないことを認識していること。
私なんか記事を書くまでそういう蜘蛛がいると思い込んでいたぐらいです。
ここで猛は実際に蜘蛛を見たことでドクモンド追跡の方法を閃く。
頭では知識としてあるのだけれど、実際にきっかけがないと点と点が線にならないことってありますよね。
一時期流行った「アハ！体験」みたいな感覚です。
なぜ他の虫は蜘蛛の巣に引っ掛かって蜘蛛自身は引っ掛からないのか？
それは蜘蛛は足の裏から特殊な油を出しているため、巣に引っ掛からずに自由に動くことができる。
ドクモンドも蜘蛛の特性を持っているのであれば、ドクモンドが通った道にはその油の跡が残るはず。
それをたどれば沢田の居場所も突き止められるというわけだ。
だが五郎の疑問通り、常人にはその油を視認することができない。
そこで仮面ライダーの目である「Cアイ（キャットアイ）」が役に立つわけだ。
Cアイは旧1号の時は常人の3倍の視力だったが、新1号にパワーアップしたことで常人の20倍もの視力となっている。
この鋭い視力によりドクモンドの追跡に成功する。
手術は誰が？
手術は無事成功して快方に向かう沢田。
運ばれてすぐ手術、そして次の日にまた手術とかなりの重症であり大手術を行ったと考えられる。
しかし、2回目の手術前に病院長はドクモンドに殺されてしまっている。
病院長の死去により事件解決後、他病院の医師が手術を担当したと考えれば自然ではあるが、疑問点もある。
それは死んでしまった病院長が「名医」だったことだ。
沢田は車で転落、そして車は燃えて爆発。
かなりの裂傷と火傷など、ありとあらゆる箇所が損傷しただろう。
この大怪我は「普通の医師」で手術できるのだろうか？
名医だからこそこの大怪我を手術できるの可能性が高かったのではないだろうか。
医院長が死んで急遽代わりの名医を用意することができるのか？
沢田は急患なので優先して医師を派遣してもらえたのかもしれない。
急遽代理で手術を成功させた医者は相当な名医だったに違いない。
ストーリーの転換点と考察
ドクモンドが蜘蛛の特性だったかつ、仮面ライダーもパワーアップしていたこと
53話「怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦」から仮面ライダー旧1号は新1号となり、パワーアップしている。
今回はそのパワーアップが沢田を救うことになる。
ドクモンドは蜘蛛の特性を持っていたことで歩いた場所は無意識に特殊な油の跡（足跡）が残ってしまった。
その足跡をたどってショッカーアジトを突き止める方法を閃く猛。
だがこの油は常人には視認することができない。
そこで仮面ライダーの目「Cアイ（キャットアイ）」が活躍する。
新1号のCアイは常人の20倍の視力があり、その敏感な視力のおかげで油を視認することができた。
旧1号のCアイでも常人の3倍の視力があるものの新1号の5分の一程度だ。
結果が変わったかわからないが、もしかしたら旧1号の視力だとドクモンドの油を視認することができなかった可能性がある。
パワーアップというと恩恵を戦闘力という考えに偏りがちだが、こういった調査能力や検知能力の向上もショッカーを追い詰めるための武器として活躍する。
結果論だが蜘蛛の特性と仮面ライダーの強化がなければアジトの場所も特定されることはなかった。
もし足跡対策をしていれば結果は違っていたが、蜘蛛の油が足跡になるなど想定外だっただろう。
これらが今回のショッカーの敗因だ。
今回の特撮表現の面白さ
しゃれこうべ表現
しゃれこうべ＝頭蓋骨のことなので模型を使って表現していると思われる。
本物だったら怖い…昔のコンプライアンスだったらありそうだけど…
上の歯と下の歯が石膏？素材で繋がっているのでおそらく模型だろう。
車の落下表現
最初、車の落下表現が激しいので沢田は死んだと思っていた。
落下してまず爆発、そして車全体が燃えだし、さらに崖深くにゆっくりと落下していく。
実写とそこから模型に切り替わった時の事故の感じが予想よりギャップが激しかったのでそう見えただけなのかもしれない。
多分、実写みたいにまずエンジンから出火して全体に燃え広がるわけではなく、車体の下からいきなり全体に火が広がったから激しく感じたのだろう。
CGもない時代の特撮だと本当に模型を燃やしたり、爆発させているので基本一発撮り。
そのため実写のイメージと違っても、燃えて落下するとか爆発するという目的が達成されれば多少演出の強弱は妥協していると思う。
強中弱の中ぐらいで良かったシーンを強で表現しているものだから私は沢田の車の落下具合が即死レベルに見えたのだと思う。
一命をとりとめた沢田を見た時、包帯の感じや火傷がないことであまり重症に見えず、そこにも大きくギャップを感じた。
ドクモンドが地中に入り込む表現
土に穴を掘り、その穴にドクモンドが入り上から土に見立てた土の塊の模型を置く。
そして穴でしゃがんでいたドクモンドが土の模型を押しのけバア～と登場する。
このシーンを逆再生することで穴を土で埋めながら地中に潜り込むドクモンドを表現している。
蜘蛛の油表現
蜘蛛の特性として特殊な油を足裏から出す性質があり、ドクモンドも常人には視認できない油を残す。
仮面ライダー視点での視認を表現するため、道路に見える足跡は白線の粉で、草むらなど凹凸が激しい場所は泡？石膏？など白くて立体なもので表現している。
特撮満足度（★で5段階評価）
特撮満足度
アクション：★★★☆☆
高所：★★★☆☆
火力：★★★★☆
水場：☆☆☆☆☆
仕掛け：★★★☆☆
ロケ地（執筆者の調べ）
・「不明」
次回予告より（第58話「怪人毒トカゲ おそれ谷の決斗!!」）
次回のショッカーからの刺客は怪人「毒トカゲ男」。
「毒トカゲ」の特性を持った怪人だ。
ドクトカゲ科は主に「メキシコドクトカゲ」や「アメリカドクトカゲ」などの神経毒を持った毒トカゲのことをいう。
人間を死に至らしめるほどの毒はなく、元々不健康な人の死亡例があるぐらいだ。
だが毒トカゲ男はショッカーが開発した怪人だ。
ただの怪人ではないようで赤い猛毒液を吐く。
次回予告では仮面ライダーの新技「ヘッドクラッシャー」を屈指して戦うことを強調されている。
53話「怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦」で既に「ライダーヘッドクラッシャー」という必殺技を披露している。
次回のヘッドクラッシャーは必殺技ではなく「新技を屈指して」と説明されているので決めに行く技ではないようだ。
毒トカゲとヘッドクラッシャーがどのように物語と絡み合うのか楽しみです。
まとめ
今回の話しを視聴して感じたのは大きな悪は2つ存在しているということだ。
まず1つ目が「ショッカー」という組織。
これは仮面ライダーが正義としたらその対極にいる悪がショッカーだ。
そして今回もう1つの悪が存在するのではないかと考えた。
それが「戦争」だ。
そう感じたのは沢田の液体火薬の開発に対して猛が「しかし沢田…そんなものができたらえらいことになるぞ！」と発言したからだ。
「えらいこと」とはショッカーに悪用されることも危惧しての発言だろうが、それと同時に戦争産業への転用が危ぶまれる研究だったからではないだろうか。
当然、沢田自身にその気はなく、経済発展や産業発展などみなの暮らしを豊かにするために開発をしている。
戦争の歴史を見ていれば戦争が強い国の裏には必ず優秀な科学者がいる。
そして優秀な科学者はその知識を色んな思惑で発揮してきた。
脅されて仕方なく協力するもの。自身の研究欲で協力するもの。戦争に使うものではないと開発させられ騙された者。研究費欲しさに協力したもの。開発者の思惑とは違い、戦争産業に転用されてしまったもの。
沢田もその1人になる可能性があった。
今回はショッカーに利用されることは防ぐことができたが、この研究を「戦争家」にも狙われる可能性もある。
2つの悪。
ショッカーを壊滅させても人間の悪意が残る限り平和なんて訪れないのだ。
今回判明したこと
・仮面ライダーの視覚は常人の20倍鋭い
