ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。
第89話「恐怖のペット作戦 ライダーを地獄へおとせ!」考察
あらすじ
男女4人組が多摩川の川辺で戯れているとカナリアのさえずりが聞こえる。
グループの1人「山中」がカナリアを捕まえみんなで盛り上がる。
だがこのカナリアの鳴き声がおかしい…まるで機械音のような異常音に仲間たちは次々と頭痛を訴える。
戸惑う山中。そして山中の手の中にいたカナリアが突如噛みつく。
驚いた山中はカナリアを草むらに投げ捨てるとカナリアはたちまち化物へと変わり、右腕に宿るコブラが山中の首筋を襲う。
奴の名は怪人「カナリコブラ」。
カナリコブラは山中の仲間たちを次々と襲う。
警察が駆け付けた時にはすでに4人は死亡しており、捜査に訪れた滝がこの奇妙な事件を知ることになる。
ペットお持ち帰り作戦
野生動物と飼育動物。
同じ種類の動物でも野生で育ったか、飼育など人間に育てられたかの環境で飼育のしやすさも全然違う。
今回、ゲルショッカーはみんなが見つけた時「おっ!うちで飼おうかな!」と思わせるような愛されるような動物に変装することで各家庭に侵入。そして毒や音波で人々を狂わせ東京を大混乱に陥れる「ペット作戦」を企んでいる。
その動物に選ばれたのが「カナリア」だ。
非常に美しい鳴き声で昔から愛玩動物として飼育されてきた鳥だ。
そして生まれたのが怪人「カナリコブラ」だ。
「カナリア」と「コブラ」の特性を持つ怪人で、その姿は本来忘れっぽい人の比喩で使う言葉を実体化したようなリアル鳥頭だ。
各家庭に侵入してからどうするか…実体化して右腕のコブラ頭で毒殺、または噛み殺すのも良いだろうがそのためには正体を現さなければならない。
な・の・で…まずは機械音攻撃!
カナリコブラはカナリアの姿に擬態し、美しい声で誘いわざと人間に捕まえさせる。
その後、人間の脳に響く不快な異常音を垂れ流し頭を狂わせる。
人間は140dB(デシベル)以上の音圧を受ける続けと気が狂ってしまうほど我慢できなくなる。
これは落雷音を至近距離で聴いた時の音圧レベルなのだが一瞬なのでまだ耐えることができる可能性がある。
だがこのレベルを継続的に聴かされ続けると気が狂い死んでしまう。
おそらくカナリコブラの異常音はこのレベルの音圧を発していると考えられる。
その根拠に本部の隊員がカナリコブラの異常音で苦しんでいたことを後に藤兵衛はあと30秒あのままだったら頭が割れてキチガイになっていたか死んでいたと例えている。
隊員たちは必死に電話をかけて救急車を呼ぼうとするがダイヤル式電話時代はキツイ…ボタンで119を押したいところを11までは短いがダイヤル式の9は遠い…
ちなみにロックバンドのライブでも130dB以上あるそうだ。最近ロックバンドのライブで耳栓を売っていることが多いがそれだけハードロックの音圧は耳に負担がかかるのだ。
そして異常音攻撃が効果を表す前に逃走されそうになった時はカナリコブラのコブラ特性として右腕に宿る「コブラハンド」で噛みつき、毒を注入して相手を殺す。
この2枚構えで東京中を混乱に巻き込み、東京を支配した暁には首都圏にアジトを構える算段だ。
ライダー少年隊に対抗して構成員を日常に潜ませる
ライダー少年隊は今や全国規模の大所帯。
東京本部のみで支部などは存在しないが、隊員は全国に点在し各々がライダー少年隊員として活動を頑張っている。
それに対抗するかのように最近はゲルショッカーも日常のありとあらゆる場所に潜むようになった。
前は作戦に応じて店主に変装するなどその時々で使い分けていた。
だが最近は特に警察官、そして今回はペットショップの店主など常に日常生活のどこかに潜んでいる。
そのため87話「ゲルショッカー 死の配達人!」や今回も警察官に助けを求めてもだいたいゲルショッカー戦闘員の変装である。
日常的にライダー少年隊がゲルショッカーを監視しているようにゲルショッカーも日常生活のどこかに潜んでいる。
特に警察官など国家権力に成り代わられるのは厄介だ。
下手に外でゲルショッカーの悪口なんて言おうものなら報復されるな…
謎の足の怪我
カナリコブラとの初戦、左足を負傷した猛(おそらく骨折?)。
だが怪我をしたり、させられる描写はなかった。むしろ仮面ライダーがカナリコブラの右腕(コブラの腕)を破壊してカナリコブラが苦しむ描写のほうが際立ったほどだ。
強いて言うなら本部でカナリコブラが正体を表して戦闘になり、外へ退避した時に戦闘員が投げた手榴弾を滝とともに回避するために転がったりしたのでその時に負傷した可能性はある。
だがその後、すぐに両足で踏ん張ってジャンプしていたのでどこで負傷したのか分からない。
後の出動時にユリたちに負傷を問われた際に「敵を欺くにはまず味方からっていうからな」と発言しているが、これはユリたちへの方便である可能性が高い。
猛は確かに骨折していた。だが改造人間なので治りが早い。しかし、それだと仮面ライダーの正体を知らないユリたちにとって不自然だ。だからそもそも怪我をしていなかったことにしたのだと思う。
滝が間違って猛の足を叩いてしまった時は条件反射的に痛がっていたので演技だとは思えない。本当に怪我はしていたのだろう。
ここで追記!仮面ライダーの左足が負傷した理由!
それはコブラハンドを左膝で踏んずけて破壊した時の爆発で負傷したんだ!それしか考えられない…だがあの爆発は仮面ライダーのキックの威力を表している爆発であってまさかコブラハンドが直に爆発しておりその爆発で負傷したと読み取るには無理があるよ…
記事を書いている今でもちょっとこじつけなんじゃないかと思うし、まさか相打ちだったなんて読み取れる描写じゃなかった…この場面はちょっと作り方に物申したい。
公共の電波を巻き込んで大規模報道
カナリコブラは可愛いカナリアの姿に変化して人間を誘うので東京近郊の人々が騙されて近づいてしまうかもしれない。
そこで藤兵衛は公共の電波を使用してみんなに知らせようと提案する。そんなことできるの?
すぐさまテレビ、ラジオでカナリアの情報が拡散される。できるんかい…
ライダー少年隊は世間でそんなにも信用を得ているのか…
確かに87話「ゲルショッカー 死の配達人!」でもミツルの姉が不振な死亡予告状の件で警察ではなく、ライダー少年隊に相談を持ち込んでいるのである程度、認知され信用を得ているようだ・
前は警察に相談しても旧ショッカーの存在は信じてもらえない中、どうやって「危険なカナリアがいる」なんて情報を信用して電波を使わせてくれるのか。
一番可能性があり、しっくりくる理由はと滝隊長がFBI特権を使いFBIの捜査協力要請として公共放送を使った呼びかけの許可がでたと思われる。
こういう表の特権はやはり滝隊長が頼りになるな!
突如現れる謎の新怪人
コブラハンドを破壊されたカナリコブラはコブラハンドを鋼鉄製に改造して仮面ライダーとの再戦に挑む。
鋼鉄製になったことで伸縮性は無くなったもののコブラハンドの握力?咬合力?そしてパンチ力が大幅に向上している。
その力で自身が破壊された右腕と同じ目にあわせるために仮面ライダーの右腕を執拗に握りつぶそうとする。
もはや腕1本破壊してからじゃないと倒したくないと言わんばかりの恨み節。
そんな2人だけの世界に突如現れる謎の新怪人「ネズコンドル」。
滝も戦闘に加わり2人で分担して怪人を相手にする。
その甲斐あってカナリコブラは倒したが、ネズコンドルを相手にしていた滝が空中高く投げられたところで終了!次回へ続く!
この終わり方の既視感…サボテグロンに仮面ライダー2号が投げられたところで終了した14話「魔人サボテグロンの襲来」を思い出す。
前回も2人の怪人で役割分担すれば仮面ライダーを本命の西熱海ホテルに近づけないようにできたのに…
やはり詰めが甘い!
ストーリーの転換点と考察
季節外れの毒蛇
季節外れの毒蛇…本来、蛇の活動期は4月から10月。その後、冬眠する。
今回の話しは12月の出来事。そのため多摩川で発生した蛇による毒死事件は不自然なのだ。
蛇の活動期の不自然さとカナリアの異常音…
この違和感を残したことで猛にゲルショッカーが何か企んでいると感づかれてしまう。
カナリアの異常音は置いといて、蛇の活動期を把握し、春から夏ごろにカナリコブラに出動させていれば、多摩川の変死体事件もゲルショッカーの仕業ではなく、季節がら毒蛇に噛まれたんだろうと事故で処理されたはず。
ゲルショッカーも詰めが甘いけど、自分が作戦を立てても季節外れの違和感には気づかず出動させてたかも…これは猛があっぱれ!
あと30秒…
猛の到着があと30秒遅ければカナリコブラの異常音でどうにかなっていたと話す藤兵衛。
ではそのヤバい30秒前に猛が駆け付けたのかというとそうでもないのだ。
カナリコブラがあと30秒異常音を出し続ければ良いところを鳴くのを止めて実体化してしまったため藤兵衛たちは難を逃れたのだ。
その後、カナリコブラはもう1つの武器「コブラハンド」を自慢してなんやかんやで約37秒後に猛が駆け付けた。
カナリコブラがコブラハンドを自慢するために変化を解かなければ、今頃異常音で隊員は全滅していただろうに…
それにコブラハンドを「俺にはもっと恐ろしい超能力の武器があるんだ!」と評していたが正直、今回の話しを見ていると異常音の方がよっぽど恐ろしい武器でコブラハンドにはそれほど恐ろしさを感じなかった。
まるであと数メートルで金脈にたどり着くのに諦めてしまったトレジャーハンターのようにカナリコブラは勝てるチャンスを不意にしてしまったのだ。
幹部怪人のプライドを尊重したため本来の目的を成就できず
カナリコブラの最終戦に駆け付けたネズコンドルは2人がかりで仮面ライダーに襲い掛かる。
カナリコブラはネズコンドルの「2人で協力してこやつをなぶり殺しにしてやろう!」という提案に1度は乗るもやはり自分のプライドと右腕の恨みを晴らしたいのか「ライダー如き、俺1人で片付けてやるわ!まかしておけ!」と1人で仮面ライダーを相手にする。
確かに仮面ライダーは鋼鉄製のコブラハンドで腕を折られそうになり段々と追い込まれる。
だが、2人で一気に仕留めなかったことで滝の救援が間に合ってしまいコブラハンドを解除されてしまう。
2人がかりがいつの間にか1対1となり、その結果カナリコブラは仮面ライダーに敗北する。
この後、ネズコンドルと戦っていた滝がピンチとなるが、カナリコブラとネズコンドルが油断しなければ少なくとも仮面ライダーの右腕を粉砕。あわよくば仮面ライダーを倒すことできたかもしれない。
結果を重視するゲルショッカーにとって怪人のプライドなど邪魔で無価値なことだろう。
カナリコブラのプライドが敗北の原因なのだからゲルショッカーにとってこれほど腹立たしい敗北はないだろう。
ネズコンドルも「ライダーの死にざまをとっくりと眺めてやるわ!」とカナリコブラを尊重する発言していたのだから同罪だ。
果たしてブラック将軍の耳には届いているのだろうか?
今回の特撮表現の面白さ
子供のシーンならではのコミカルな逃走劇
ナオキ、ミツルがゲルショッカー戦闘員に追われるシーン。
大人を襲う場合は容赦ない残虐さで表現するが、子供隊員とのシーンはまるで鬼ごっこ。
お寺の境内を舞台に小さな身体を活かして戦闘員をすり抜けたり、寺の床下を通っての逃走。
そしてその様子を早送りで再生することでコミカルに演出している。
また子供たちがゲルショッカーにかみついたり、戦闘員がナオキとミツルを抱えている時にライダー少年隊のヘルメットを被るなどギャグ漫画演出で普段の残虐性を緩和している。
そりゃ子供をボコボコにするシーンなんてあろうものなら即PTA行ですからね(笑)
新必殺技「ライダー月面キック」表現
ジャンプして前方宙返りからの後転という物理法則を無視した超人的な動きの後ライダーキックを放つ必殺技。
宙返りや後転など月のように円を描いて回転する様、もしくは月面クレーターのようにしたろか!と言わんばかりの威力ということだろうか?
特撮満足度(★で5段階評価)
特撮満足度
アクション:★★★☆☆
高所:★★☆☆☆
火力:★★★★☆
水場:☆☆☆☆☆
仕掛け:★★★☆☆
第89話の名言・迷言・珍言・失言
滝和也「いや~違うね!俺にはね…小鳥にも好かれる魅力(みりき)っていうのがあるんだよな!」
捕まえたカナリア(カナリコブラ)が滝になついているので誰かが飼っていたため人間に慣れているのではないかと推理する隊員に対して滝が発言したセリフだ。
さすがは滝兄ちゃん!自身の魅力に自画自賛でかっこつけ!
今回はカナリアのなつき具合に自画自賛する男性続出。カナリコブラの被害者である山中もカナリアが強面な自身になつく理由を「俺はこう見えても心優しい男性だからな!」と評している。
確かに動物に好かれる男性=雰囲気が柔らかく優しそうなイメージはありますね。
ちなみに滝が魅力をみりきと言っているが「みりき(魅力)」は1970年代の流行ったみりょくの言い方みたいです。流行語という感じですね。
本郷猛「ペットを愛し…可愛いものに惹かれる心だけは失いたくないな…」
ゲルショッカーのペット作戦のせいでかわいらしい動物が全て警戒対象になることを懸念しての発言。
これによりかわいいもの=危険なものと疑心暗鬼する社会は純粋な心を失わせることになる。
確かに美しい薔薇には棘があるなんて思いたくないし、かわいいものは自分たちを油断させるための行為じゃないかと警戒する世の中は嫌ですよね…
確かにかわいい顔して腹黒いなんて生物ごまんといるでしょうが、なんというかゲルショッカーのせいで今まで純粋に惹かれていたものを警戒しなければならないというのは不健康ですよね。
ロケ地(執筆者の調べ)
・「不明」
次回予告より(第90話「恐怖のペット作戦 ライダーS・O・S!」)
次回のゲルショッカーからの刺客は怪人「ネズコンドル」。
「ハツカネズミ」と「コンドル」の特性を持った怪人だ。
ネズコンドルはネズミの特性というよりかはネズミを取り巻く環境で問題となったペスト菌を持つ。
そしてコンドルの特性として翼が大きいことから、それを活かしてカミソリのように鋭い翼に改造されて武器として使用する。
1話完結が多い仮面ライダーとしてはめずらしく伏線を残したまま「恐怖のペット作戦第2弾」と題して事件が持ちこされる形となった。
ネズコンドルに投げ飛ばされた滝は無事なのか!?
そしてライダーのSOSとは一体何なのか?
感想・まとめ
需要に付け込んで悪事を行う輩はどの世代にもいる。
みんながそれに飛びつくからこそ巧妙に罠を仕掛ける。
現代だと転売ヤーなどで、例えば人気のゲーム機が出品され購入。
しかし、届いたのは箱のみ。だが確かに商品タイトルの最後には「箱」と書いてあるのだ。
確かに購入者のチェック不足もあるだろうが、箱のみにしてはゲーム機本体が買えるほど値段が高いため、まさか箱のみだとは思わないだろう。
嘘は書いていないが明らかに購入者のケアレスミスを狙った出品の仕方をしているため悪意を持って出品していることは明白だ。
このようにゲルショッカーもペットという愛玩動物としての需要を利用してかわいいものに化けて相手をだまして近づく。
だが中身は恐ろしい怪人というまさに上記の例のように需要を悪事に利用している。
両者とも共通しているのがその被害者から魅力的なものを素直に魅力的と思う気持ちを失われせてしまうことだ。
物語でも猛はその純粋な心を失うことを危惧している。このシーン非常に良いですよね。
暴力が無くなることだけが平和ではない。精神が健康であることも平和には重要なことだ。片方だけが平穏に見えてもそれは平和とは言わないのかもしれない。
物理的な暴力が無くなっても、特にSNS時代に危惧される言葉の暴力。そして精神的な健康が不足するとぶつけようもないうっぷんを物理的暴力で発散するようになる。
仮面ライダーはいわゆる武力でゲルショッカーと戦っているように見えるが精神攻撃も多いゲルショッカーの戦略にもわかる通り、猛も精神的な平穏も重要であることは分かっているからこその発言だと感じた。
猛自身、改造人間として身体を傷つけられたことよりも、それにより色々(家族を持つこととか)諦めなければならないことへの精神的な苦痛と虚無感の方が大きかったように全編通して感じる。
私も心の中のゲルショッカーと戦っていこうと思う。
今回判明したこと
・ライダー少年隊の子供隊員は冬服でジャケットを着ているが短パンはそのまま
・ライダー少年隊の呼びかけ(滝のFBI特権?)で公共電波を使い、お知らせを発信することができる
・東京都西東京市富士町1-7-18に「大村太郎」というライダー少年隊員がいる
・本部には前回猛の家に飾ってあったコンコルドと同じ写真が飾られている(コンコルドは協調という意味なのでライダー少年隊にはピッタリ!)
・新必殺技「ライダー月面キック」