ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。
第60話「怪奇フクロウ男の殺人レントゲン」感想・考察
あらすじ
ショッカーはレントゲンをさらに強化した「殺人レントゲン」を目に取りつけた怪人「フクロウ男」を生み出していた。
その威力を試す為、フクロウ男はアジトを飛び出した。
テニス帰りの男女、テニスコーチ「田代」とその生徒である「野沢桃子」、「松山トリ子」がフクロウの鳴き声を聴く。昼間なのに奇妙だ…
その後、田代と女子2人はそれぞれ別れたあと、田代がフクロウ男に襲われ殺人レントゲンを受けてしまう。
田代の叫び声に気づき2人が駆け付けた頃には田代は白骨化してしまっていた。
2人はフクロウ男の目撃者として追いかけられ、トリ子は捕まってしまう。
桃子はそのまま逃げ、警察に通報するも信じてもらえない。
フクロウ男の追跡を何とか電話ボックスに隠れてやり過ごす。
そこへたまたまバイクで通りがかった本郷猛に助けを求めたことで事件が発覚する。
複雑怪奇な時計塔作戦
今回のショッカーの「大時計爆発計画」は少し整理しないと分かりにくい作戦だった。
そもそも時計塔を爆発してどうしようっていうんだって感じしません?
時計塔を壊したって時間は見れるし、確かに時計塔が爆発したら驚くけどショッカーが企む日本の混乱や滅亡とは程遠いように思える。
この作戦は時計塔をある条件で破壊することで全国の小さな時計(家庭にあるような時計)全てを爆破できるという作戦のようだ。
その条件とは「地球が最も太陽に近づく日」、そして「最も近づいた瞬間に日本全国の時計塔を破壊すること」だ。
この条件を満たすためにまずフクロウ男の殺人レントゲンを起爆エネルギーを受信すると爆発する受信機兼爆弾を全国の時計塔に仕掛ける。
そして明日の午後12時に殺人レントゲンを送信レーダーに照射。
送信レーダーが全国に殺人レントゲンのエネルギーを発信してそれを受信した時計塔の爆弾を起爆させる。
ちなみに送信レーダーは誘拐されたトリ子含む囚人たちに作らせている。
上記の条件を満たすと連鎖的に全国の小さい時計が爆発すると…う~ん最後だけわからん!
時計塔を破壊、つまり時計のボス(大きな時計)を破壊することで全国の子分たち(小さな時計)がボスがやられたことで自身も爆発して消滅する…
確かに大元を叩くことで雑魚が倒せるって設定は色んな作品であるけど…
おそらく時計が連鎖反応する理由は「地球が最も太陽に近づく日」ということがポイントなのだろう。
太陽が近づくとか日食で太陽と月が重なった瞬間に○○をすると不思議なことが起こるというオカルト・魔術的な伝承がありますもんね。
その怪奇現象を利用したのが今回の作戦ということなのでしょう。
今回はフクロウ男ということなので、昼間や太陽がではなく、夜の月がどうのという仕掛けのほうが夜行性であるフクロウの演出として良かったのではないかと思った。
それに枕元に目覚まし時計を置いている人が多いだろうから、深夜12時頃に爆発させれば多くの人間を巻き込むことができるし、夜なので全国は大混乱になるだろう。
時計って腕時計とか、会社・学校・店・公共施設のものも含まれるのでしょうか?
地獄大使が「小さい時計」と明言していた上、ショッカーが想定している爆発では家庭用の時計ばかりだった。
腕時計も対象なら会社員の手首は吹っ飛ぶし、会社・学校も大混乱。
時計屋さんなんてもう目も当てられないだろう。
必然?たまたま?桃子が猛に助けを求めた理由
桃子はフクロウ男に追われて警官に助けを求めるも、いたずらだと思われて相手にされなかった。
だがフクロウ男の追跡が続いている以上、どこかに身を隠さなければならない。
そこで電話ボックスに隠れてフクロウ男をやり過ごす。
頃合いを見て電話ボックスを飛び出し、たまたまバイクで通りかかった猛に助けを求めることになる。
たまたま通りがかった人物がたまたまショッカーに詳しく、不可解な事象を信じてくれ、柔軟に対応できる青年だったという凄く都合の良い展開だ。
これはたまたまなのだろうか?
何か必然を求めて考察したが、物語を最後まで見た結果…
たまたまでした!
とにかく桃子は電話ボックスの外に出てしまったら、またいつフクロウ男に見つかるかという恐怖があったため、とにかく誰かと一緒に行動したかったのかもしれない。
通行人ではなく、わざわざバイクに乗っている人を停車させたことに違和感を感じましたが…う~ん…最悪バイクに乗せてもらって逃げられるから?
現代だとあまり知らない男性に助けを求めている場面ってないですよね。
むしろその知らない男性すら警戒の対象になるのではないだろうか。
地域の他人に頼れる、なんて言うんだろう…地域性というのもいいものですね。
変な噂ばかりすぐ広がるみたいな地域性は嫌ですけど…
強くなっているのは仮面ライダーだけじゃない!
強くなっているのは仮面ライダーだけじゃない!
怪人のことではない…滝兄ちゃんのことだ!
滝兄ちゃんはどんどん強くなってる!
滝は元々、下級戦闘員(改造人間)に対抗できるほどの実力を持った優秀なFBIのエージェントだ。
だがここ最近、下級戦闘員も強化され、戦闘途中まで実力は拮抗しているのだが後半戦になってくると数と体力で負けてしまうことが多い。
それが今回はやられながらも粘り強く戦闘を続け、仮面ライダーのピンチを救っている。
一文字、そして猛など普段から上位の改造人間と修行しているだけあって、その成果が実り始めている。
珍しく現場出動!夢のタッグ!
滝が先の戦闘で頭を打ったことによる体調不良で珍しく藤兵衛が現場調査に駆り出される。
久しぶりの猛と藤兵衛のタッグ。
2人はガイガーカウンター(放射能探知機)で放射能をたどり、アジトを発見する。
アジト入口の警備戦闘員を何とかこちらに誘いだしたい。
この作戦を実行している時の2人が凄い無邪気で、あぁやっぱりこの2人は長い付き合いで修行も一緒にしてきたからこういったサバイバルや冒険チックなことが好きなのかもしれないと感じましたね。
発煙弾を投げ、指笛で戦闘員を引き付け、「きたきた!」と2人してノリノリだ。
藤兵衛は優秀なエンジニアでもあるので、もっと作戦に参加してガジェットを使うシーンが見たいですね。
戦闘員への尋問方法、そして戦闘員の反応が今までと違う…
猛と藤兵衛は警備戦闘員をさらってきて早速尋問するのですが…尋問にしてはなんだろう…悪ガキに更生を促すような…そんな教育的尋問でしたね。
「言ってくれ…今度は何を企んでいるんだ…頼む!言ってくれ!なあ?」
言え!とか吐け!とか高圧的ではなくお願いに近い。警官の尋問と違って優しい…尋問受けたことないけど…
そこへショッカーが窓ガラスの外から仲間の戦闘員の首筋を攻撃。
瞬間的に裏切られた!と思ったのであろう戦闘員は最後の力を振り絞り、紙に数字を書き出す。
自分を見捨てて殺しにきたショッカーに対してせめてもの復讐なのか、戦闘員は猛たちに今回の作戦のヒントを書き記す。
戦闘員にも「裏切られた!」という気持ちがあるのか…確かに8話「怪異!蜂女」でも幹部に雑に扱われた戦闘員が反抗するシーンがありました。
1~12の数字。つまり時計。
12に二重丸は12時のこと。
そしてバツ印は大爆発のことだと猛は推理する。
1~12の時計と12時のくだりまではわからないでもないが、バツ印が大爆発だとは思えない。
このあたりショッカーのやりそうなことをバツ印に当てはめた時、大爆発という推理に至ったのだろう。
その辺りはIQ300の猛の推理力というところでしょうか。
ただ12時が午前、午後かはどうやってわかったのだろう?
戦闘の多様化
ショッカーの作戦は多種多様なものがある。
戦闘では武器で近接、長物での遠距離攻撃、光線などの飛び道具と一見多種多様に見えるが戦闘は意外と単調であまり工夫はなかったように思う。
今回は単調な攻撃一辺倒ではなく、そういった道具をサポート、妨害に使用し、幹部怪人の攻撃力を最大化できるように工夫されている。
例えば今回でいうとまず戦闘員2名で仮面ライダーの両腕を投げ縄で拘束。
そして仮面ライダーに力負けしないように縄を屋根に引っ掛けて、てこの原理を使い、全体重を乗せて引っ張り宙吊りにする。
これは前回のミミズ男の殺人リングを引きちぎられたことの反省を活かしており、両腕を使えないようにしながら宙吊りにすることでパワースイッチの起動はおろか縄を引きちぎることもできないようにしている。
せめて地面に足が接地していれば踏ん張りと両腕の力で縄を解くことが出来ただろうがそれもさせない。
そして両腕を挙げた状態で宙吊りとなり、無防備な仮面ライダーに殺人レントゲンを照射し、らくらく命中し大ダメージ。
滝がフクロウ男を押しのけ、縄を引っ張る戦闘員を倒してくれなければ仮面ライダーはやられていただろう。
これは中々良い作戦だっただけにショッカーは惜しかったですね。
大ダメージを受けた仮面ライダーだが、たまたま拾った鋭利な木の棒をフクロウ男に突き刺し撤退させている。
改造人間の肉体には鋭利な木の棒が通用するんですね…
そして最終決戦でのバイクの攻防。
戦闘員が何か背負っていると思ったらガソリンを入れたタンクと火炎放射器だった。
サイクロン号に乗った仮面ライダーをガソリンの円で囲み、火炎放射器で火をつけて退路を断っている。
そしてその炎は仮面ライダーに燃え移る。
これも攻撃が目的というよりかは妨害に近いだろう。
仮面ライダーとサイクロン号は数千度の熱に耐えられるが、耐久性は有限ではない。
そのため仮面ライダーはサイクロン号を降り川にジャンプして身体の炎を消火している。
ダメージは与えられなかったもののサイクロン号から降車させることに成功している。
ショッカーも幹部だけではなく現場の戦闘員も考えて行動するようになった。
これからはさらに強敵となるだろう。
ストーリーの転換点と考察
時計塔前に白骨死体を放置したこと
桃子の話しを信用しなかった警官は深夜「向ヶ丘遊園」の警備中に時計塔に侵入したフクロウ男を目撃して殺されてしまった。
ここでショッカーは白骨化した警官の死体を回収しなかったため報道され、猛が戦闘員を尋問した際のヒントで推理した「時計」というキーワードと白骨化死体があった近くが「向ヶ丘遊園 花時計」だったことでショッカーが時計塔付近で何かを行っていることに勘づかれてしまう。
その結果花時計の中を調査され、爆弾の存在やその起爆方法を猛に知られてしまうことになる。
いつもはちゃんと死体を回収するのにサボったな…
殺人レントゲンをフクロウ男に組み込んでしまったこと
殺人レントゲンは人間を白骨化してしまい、仮面ライダーにも大ダメージを与えられる非常に強力な武器だ。
そういう意味では動く砲台としてフクロウ男に殺人レントゲンを組み込んだことは成功と言えるだろう。
しかし、肝心要な「大時計爆発計画」ではフクロウ男に殺人レントゲンを組み込んだことで作戦は失敗してしまう。
作戦の遂行には送信レーダーに殺人レントゲンを照射し全国の時計塔に仕掛けられた受信機兼爆弾を一斉に爆発させる必要がある。
だが作戦は実行8秒前に阻止されてしまう。
なぜなら仮面ライダーがアジトに突入したことでフクロウ男は戦闘を行わなければならず、送信レーダーに殺人レントゲンが照射できない状態になってしまったからだ。
仮に殺人レントゲンをフクロウ男に組み込まない、もしくはスペア、送信レーダー自身にレントゲンを取り付けていれば仮面ライダーが突入してこようとタイマーやスイッチ1つで作戦だけは実行できたはずだ。
もうぶっちゃけちゃうと結論、送信レーダーで全国の受信機に合図を出すまでもなく12時の時間指定で爆発する時限爆弾でよくない?っていうのが結論ですね。
今回の特撮表現の面白さ
フクロウ男の目玉
フクロウ男の目には電球が埋め込まれており、それを光らせることで殺人レントゲンの光線を表現している。
熱に強い仮面ライダー表現
サイクロン号に乗った仮面ライダーの周りに円形にガソリンを撒いて燃やす。
その中心で平然としている仮面ライダーを撮影することで仮面ライダーとサイクロン号の耐熱性の高さを表現している。
そして仮面ライダーをジャンプさせた後に模型を燃やして飛ばすことで身体が燃えていることを表現。
その後、仮面ライダースーツ(スーツを燃やすわけにはいかないのでスーツを模したもの?)を燃やして川に投げ込むことで着水して炎を消火したということを表現している。
ライダークラッシュでアジトに突入する表現
新技「ライダークラッシュ」は高いところから両足で踏みつける技。
この技を利用してアジトの天井をぶち破り突入している。
アジトの天井を踏みつけて破壊する表現は発泡スチロール?板?を踏みつけて壊すことで表現。
そして円形にくりぬかれた穴に紙を貼り付け破ることで天井の破壊を表現し、破れた部分から仮面ライダーの模型を通して下から撮影することで天井から降下してくる様を表現。
そして実写のシーンに切り替わり上から煙を焚くことで天井破壊による埃や塵の舞いを表現している。
ライダーハンマーの投げられ方
新技「ライダーハンマー」とは相手の足を持ってグルグル回転して投げ飛ばす技だ。
そんなことより投げられた側(フクロウ男)のアクションが凄い。
回転投げということでフクロウ男も空中で体操選手のように身体をひねりながら回転ジャンプを行っている。
投げられた方のアクションが凄くて、やられ方がカッコイイと思ってしまったシーンでした。
特撮満足度(★で5段階評価)
特撮満足度
アクション:★★★★☆
高所:★★★★☆
火力:★★★★★
水場:★★★☆☆
仕掛け:★★★★☆
ロケ地(執筆者の調べ)
・「向ヶ丘遊園」
・「旧多摩聖蹟記念館」
次回予告より(第61話「怪人ナマズギラーの電気地獄」)
次回のショッカーからの刺客は怪人「ナマズギラー」。
「電気ナマズ」の特性を持った怪人だ。
電気ナマズや電気ウナギは何度も水族館で見ましたが不思議な生物ですよね~
人間よりも早くに電気の有用性と水中での電導の仕組みを知っていたかのような体の仕組みなんですよね。
しかも古来では大地震は大ナマズのせいなんて伝承もあるぐらいだから何かと不思議な力を持っているというイメージを持っていました。
それにあの髭が余計に浮世離れした賢人を思わせるビジュアルをしていますよね。
デンキナマズの電気は約400ボルトに対してナマズギラーの出力は10万ボルトと非常に強力だ。
仮面ライダー旧1号は5万ボルトまでしか耐えることができないが新1号となり耐電性は上がっているのだろうか?
38話「稲妻怪人エイキングの世界暗黒作戦」のエイキングなんかは100万ボルトも出力する。
だがそのエイキングに打ち勝ってきた(エイキングは2号が倒したが)仮面ライダーなら突破口があるだろう。
ナマズギラーは腕のムチに帯電させ、電気ムチとして使用している。
仮面ライダーは遠距離攻撃が苦手で触手やツル、舌などの攻撃で攻めあぐねるシーンも多い。
そこに電気属性も付与されたとなるとかなりの苦戦が予想される。
そしてなんとナマズギラーの開発者は死神博士!あの死神博士がナマズギラーを連れて日本に帰ってくる!
地獄大使と死神博士の両面作戦。
最高幹部2人が同時に作戦を実行すれば1号だけでは対処しきれないように思うが…
今度は逆に海外から2号が助けに来る展開があるのだろうか!?
まとめ
今回のショッカー作戦はSF科学力というよりかはオカルトチックな作戦でしたね。
地球が太陽に最も近づく日ということは1月初旬頃なので正月明けでしょうか?
ただ仮面ライダーの正月回は41話「マグマ怪人ゴースター 桜島大決戦」で終わっているのでちょっと時期がずれていますね。
結局時計塔の爆発により小さい時計たちが一斉に爆発する仕掛けの謎は解けぬまま。
仮に電波時計が電波を受信するという仕組みまでならわからないでもないのですが、1970年代はまだ電波時計は流通しておらず、1973年の大阪万博で未来の技術として発表されたようにまだ身近な技術ではなかったようです。
日本では平成5年ごろからやっと電波時計の流通が始まったぐらいなので、その電波時計の仕組みを見越して今回の脚本を書いたのであれば近未来科学に詳しい方だったのかなと思います。
ただ電波を受信後に爆弾も仕掛けていない時計が爆発はわからん(笑)。
乾電池の爆発程度ではショッカーの思い描く大騒動には発展しないように思います。
乾電池の小爆発が家財に燃え移り大火事になるというのはないこともない話しですが、小規模で偶然の出来事でとどまるでしょう。
この辺りが今回私がオカルトチックだなと思った理由です。
あくまで空想科学、SFなわけですから、とんでも科学というのは出てきます。それでも「現実でも起こせそう、起こりそう」と感じさせることが大事だと思います。
今回は「現実で起きなさそう」と思ってしまった点が気になってしまったのかもしれません。
今回判明したこと
・怪人の表皮は鋭利な木の棒で貫ける
・ショッカーのアジトの近くでは放射能探知の妨害工作をしている
・猛は指笛が上手い
・ショッカー戦闘員も組織に裏切られると組織に復讐心が芽生える心がある
・仮面ライダー新1号、サイクロン号は数千度の熱に耐えるように作られている
・地獄大使は瞬間移動ができる
・新必殺技「ライダークラッシュ」、「ライダーハンマー」