【仮面ライダー】59話「底なし沼の怪人ミミズ男!」感想・考察(ネタバレ有) 過ちの放射能

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年
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あらすじ

柿沼で2人の男性が釣りを楽しんでいると竿が大物を捉えたように大きく揺れる。

期待を大にして獲物を引き上げるもそれは巨大なミミズの化物、怪人「ミミズ男」だった。

ミミズ男は2人を「殺人リング」なるもので絞死させる。

どうやら柿沼の下はショッカーアジトだったようだ。

ショッカーアジトでは「放射能作戦」なるものの計画が進行していた。

従来の「コバルト60」の10倍の放射線威力を誇る「コバルト120」が日本に持ち込まれる。

またしても日本を放射能の恐怖に陥れようと企むショッカー。

何としても阻止せねば日本に明日はない!

もうほんっっっっとうに危険な爆弾

放射能作戦」と聞くだけでも危険しか感じない。

日本人であれば「放射能」と聞くだけで経験者も未経験者も「危険」と感じるワードだ。

今回の作戦で使用される放射能物質は「コバルト120」。

コバルト120」は現実で運用されていないが「コバルト60」は実際に運用されている。

コバルト60はガンなど放射線治療に使われており、正しく使えば沢山の命を救うことに繋がる。

だがそのコバルト60を含む医療機器を盗んで鉄材として再利用したことで住宅など製品として一般家庭に流出し、その結果被爆したなんていう事故も発生しているため、身近なところで扱うものではない。

今回ショッカーがコバルト60で作ろうとしている「コバルト爆弾」の何が危険かというとその「残留性」だ。

一見爆弾と聞くと殺傷力が高いものと考えがちだ。

しかし、コバルト爆弾は核爆弾の殺傷力に加えて、水素爆弾や中性子爆弾にコバルトを混ぜて核爆発の際に生じる誘導放射能を利用してコバルト60を放出させ、長期間その着弾周辺に放射能を残存させることができる。

コバルト60の放射能半減期が5年ぐらいなのでその10倍の威力のコバルト120は放射能が半減するのに50年以上かかる計算になる。半世紀以上もだ…

破壊だけではなく、その周囲は長期間生物の誕生も繁栄も望めない土地となるということだ。

そして実はショッカーより恐ろしいことを考えるのが人間。

今度は「炭素14」を放出する窒素爆弾なんて案が出たこともあるとか。

この窒素爆弾に至っては半減期が5600年以上…もうね…桁が…いや次元が違う…人間が思いついて良いものじゃない…

これを上手く扱えると思っている奴らは頭は切れるが馬鹿だ…神経が切れている…

ちなみにコバルト爆弾と炭素14による窒素爆弾は案だけで実際に製造されることはなかった。

良かったと思うかもしれないが、他に原爆はたくさん存在する。

原爆が~抑止力が~がある限り「何も良くはない」。

ビキニ諸島の生き残り

怪人「ミミズ男」はビキニ諸島に生息する「シマミミズ」を元に生み出された。

シマミミズはビキニ諸島で行われた水爆実験で唯一生き残った生物で、その生命力に目を付けたショッカーは今回の「放射能作戦」の指揮官としてミミズ男を生み出した。

ビキニ諸島では実際の歴史上、数々の原爆実験が行われてきた。

その中で日本に最も影響があった実験は1954年3月1日の「キャッスル作戦(水爆実験)」だろう。

この実験が日本の義務教育では習うであろう「第五福竜丸事件」の発端となる。

第五福竜丸事件

1954年3月1日にビキニ環礁で行われた「キャッスル作戦(水爆実験)」の第1回「ブラボー実験」の影響で発生した多量の放射性降下物(死の灰)を浴びた、「第五福竜丸」の乗組員23名が被爆した事件。

第五福竜丸はアメリカが設定した危険水域の外で操業していたにもかかわらず死の灰の影響を受けてしまうという大変痛ましい事件だ。

実際のシマミミズ自身は水爆に強いというわけではないだろうが、シマミミズの特徴として「自然の環境」ではなく、「人為的な環境」に生息しているということが挙げられる。

つまり人間が生み出したゴミや汚泥、産業廃棄物処理場などで生きているということだ。

そのため現代では生ゴミの放置などが減少したことから生息域も狭まっているという。

なんと珍しい生き物だ。

自然があってなおかつ人為的なものを好むのではなく、最初から自然には生息しにくいなんて変わってますね。

考えてみれば犬種や蚕、メダカや植物など人為的に生み出されたり改良された生物って結構いますもんね。

おそらくミミズ男の設定もシマミミズの「人為的なものにこそ生息できる」という特性が活かされており、人為的な水爆実験により放射能汚染された土地ということがシマミミズの「水爆の放射能下でも生き残ることができた」という設定付けになっているのだと思う。

仮面ライダー完全敗北

生命力の高さを見せるシマミミズだが、戦闘においても仮面ライダーを圧倒している。

その証拠にあの本郷猛が「負けた…完全に負けた…」と敗北宣言をしている。

新1号にパワーアップしてなおこれほど仮面ライダーを苦しめた敵は初めてだ。

それだけミミズ男の「殺人リング」は強力なのだ。

殺人リングは暴れれば暴れるほど喉元が締まっていく。

その握力は仮面ライダー新1号のパワーでも引きちぎれないほどだ。

ではなぜ最初の戦闘で敗北した時にリングが解除されていたのか。そしてその後どのように対策したのか。

結局、殺人リングの攻略方法は単純で「リングをパワーで引きちぎる」というものだった。

だが新1号のパワーでも引きちぎれなかったものが新1号のまま引きちぎれるのか?

新1号のままパワーを増強する方法。

それはベルト右側の「エナージ・コンバーター(パワースイッチ)」の出力を上げることだ。

エナージ・コンバーター(パワースイッチ)とは

エナージ・コンバーターとは風力を「コンバーターラング」でエネルギーに変換したものを蓄積するいわゆるバッテリーのような装置。

最初の敗北の際、ベルト左側の「サイクロン誘導装置」を無意識に回してエナージ・コンバーターの出力を増強したことで殺人リングを引きちぎることができたのだ。

しかし、エナージ・コンバーターの出力を出しすぎるとエネルギーが枯渇して変身が解除されてしまう。その際には再変身がしばらくできないので一瞬だけ出力を高めることが重要だ。

崖から落下後に変身が解除されていたのはエネルギーを出し過ぎたためだろう。

次戦ではコンバーターを上手く利用してリングを解除、勝利している。

すれ違いバタバタコント劇

「瞳工芸」という宝石店で宝石商?を装い真珠のネックレスなどを盗み出す泥棒2人組の「野上辰三のがみたつぞう」と「三郎さぶろう」。

そして時は同じくして第51埠頭でコバルト120の受け渡しを行う白いスーツと黒いスーツの3人組。

白いスーツの男と黒いスーツの男がそれぞれ半分になったショッカーのエンブレムを持っておりそれがピッタリ形が合うことで本人確認を行っているようだ。

この両者は早くその場からずらかりたい一心で車を飛ばしていたため交差点で接触事故を起こしそうになる。

両者は取っ組み合いの喧嘩が勃発。

その際に同じトランクを使用していたために両者の荷物が入れ替わってしまう。

急いでショッカー側の車を負う泥棒2人。

追いついた先には仮装集団かと思いミミズ男の顔を触るとまさかの生身。

お助け~ってコントか!

特に兄貴分の辰三が黒いスーツの男たちと取っ組み合いでチョップを受け「あら…効いちゃった…」とか気絶から三郎に起こされて「あ~おはよう」と呑気に返事。

荷物がすり替わったことに気づきトランクを開ければコバルト120のことを「羊かんじぇねえか」とボケ、ショッカー怪人、戦闘員を見れば「仮装舞踏会っすかな!」、「ミミズのバケモンみたいなお面被りやがって…カーニバルと勘違いしてんじゃねえか」と勘違いして、ミミズ男に触るやいなや「お面じゃないはこれ!」と我に返える。

もう流れがコントなんですよ兄貴は!面白れぇ男…

泥棒に向いてない2人そうは言っても良い幼馴染

辰三と三郎は泥棒に向いていない。

兄貴分の辰三は何だか生き様がコントだし、三郎はショッカーにコバルト120を奪うように脅され、もし障害となるなら猛と滝に毒薬を飲ませるよう指示されても良心が働き、本人たちを目の前に泣き出してしまうほどお人好しが犯罪に向いているはずがない。

2人で漫才師になったほうがよっぽどか稼げるだろう。

それにエミいわく、2人は長い付き合いで本当に仲良し。

これに懲りて真面目になるだろう。

罪を憎んで人を憎まず、だがネックレスを盗まれた瞳工芸にとっては立花レーシングクラブは「犯人蔵匿等罪」なのは内緒だ…まあ滝(FBI)が上手くやってくれるでしょう…

そんな2人を見て猛は嬉しそうにするが、その後何やら「また」複雑な表情をする。

今でこそ周囲の師匠、ライバル、友人、仲間に恵まれているが3話「怪人さそり男」で親友だと思っていた「早瀬五郎」に裏切られた過去がある。

ずっ友である2人が羨ましいのかもしれない。

たまに表に出てくる猛の改造人間としての苦悩、そして普通の人間に対する嫉妬心が何だか人間臭くて良いんですよね。

それにしても茶色いスーツの時は明るく、前向きなのに、ブレザーを着ると途端に登場初期のような苦悩が顔を出すのはなぜだろう?

ストーリーの転換点と考察

運が悪いショッカーと泥棒と…

そもそもショッカーと泥棒が接触事故未遂で争いになってしまったことが不運の始まりだ。

ショッカーはコバルト120が猛の元に渡り、辰三と三郎は1000万円ほどのアクセサリーを台無しにしてしまった。

この2組が出会わなければコバルト爆弾を作るという目的までは猛たちにバレなかったかもしれない(柿沼の調査でアジトの場所はバレただろう)。

お互い災難だった。

だが事件が解決してしまえば1番不運なのは何も知らずに1000万円(現在の4000万円相当)ものアクセサリーを盗まれ、人知れず台無しになった「瞳工芸」の皆さんだ…

仮面ライダーが自分の才能に気づいてしまったこと

仮面ライダーは殺人リングの首絞めをエナージ・コンバーターの出力を上げることでパワーを増強させ、引きちぎることで回避している。

だがそのきっかけを掴むためには時間を要した。ミミズ男に敗北した直後、なぜリングだけは解除されたのか?

パワー増強が理由だったのであれば、そもそも新1号ってショッカーではなく自身や仲間が手を加えた新形態ですよね?

それであればマニュアルとして出力の上げ方などはわかっていたはずだ。

おそらくは出力の上げ方を知らなかったのではなく、崖から落下して死の淵に立たされた時に無我夢中で本能的にエナージ・コンバーターを全開にしていたので「どのようにリングを解除したか」を覚えていなかったということだろう。

これが旧1号であっても出力を上げていれば引きちぎることができたかもしれない。

しかし、新1号になったことでエナージ・コンバーターに蓄積できるエネルギーの量も増えており、その容量が増えたことでリングを引きちぎることができたのであれば、旧1号のままであれば本当の意味で敗北(死)していたかもしれない。

スーツを改良したことが仮面ライダーの命を救ったことになる。

旧1号、2号はショッカー自身が生み出したのでのスペックを把握していただろうが新1号のパワーは予想外であっただろう。

今回の特撮表現の面白さ

殺人リング表現

ミミズ男の必殺技「殺人リング」はミミズの模型をリング状にして投げたり、対象の首に巻きつけることで武器、首絞めの表現をしている。

十字に張り付けられる辰三にその威力を思い知らせるためにリングを十字上部に巻き付け、その後圧迫して切断、火薬による小爆発を行うことでリングの威力の高さを表現している。

どこからともなく睨んでいる表現

黒い紙にミミズ男の目を模した緑の紙を置いて陰から睨みつけているぞ!ということを表現している。

ライダーパワーの表現

たびたび使用されているカミナリの表現を仮面ライダーの背景として合成することでライダーパワーの発生やエネルギーが増強される様を表現している。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★★☆

高所:★★★★☆

火力:★★★☆☆

水場:★★★★☆

仕掛け:★★★☆☆

ロケ地(執筆者の調べ)

・「不明」

次回予告より(第60話「怪奇フクロウ男の殺人レントゲン」)

次回のショッカーからの刺客は怪人「フクロウ男」。

フクロウ」の特性を持った怪人だ。

フクロウは夜行性で音もなく素早く獲物を捕まえることから「森の忍者」とも言われているようです。

フクロウはその見た目や所作から置物など可愛らしいイメージですが、肉食で獰猛な一面もあります。

次回はその獰猛さが怪人となって表れるのでしょうか?

フクロウ男は「殺人レントゲン」という武器を使い次々と時計塔を破壊するようだ。

殺人レントゲンなのに殺人せずに時計塔破壊?

いやいやしっかりと攻撃もできます。

レントゲン発生装置を起爆エネルギーに遠距離攻撃も可能。

身体の検査などで行われるレントゲンはX線を用いて撮影されている。

もちろん検査に使う線量は小さく身体に害をなす可能性は低いものです。

しかし、ショッカーの開発した兵器に関してそんなことは有り得ない。

当然放射線量が増えればレントゲンといえども強力な兵器になる可能性があり、殺人レントゲンはかなり危険な武器で直接当たれば被爆してしまうことになる。

時計塔の破壊目的が気になりますね…

次回の記事

まとめ

今までショッカーは数々の放射能を使った作戦を計画してきた。

日本人の心に深い傷を残した放射能を使った作戦は日本人の特に戦後間もない人々にとっては傷が癒えない内でも恐怖の再来となるだろう。

同時になぜそんな心の傷をえぐるようなテーマを扱うのか疑問に思う。

ゴジラ作品などSF作品でも放射能の恐ろしさをあえて作品に取り入れている。

それは戦争を経験した人々が放射能の恐怖を過去のものにはせず、脈々と受け継ぐことで未来の人々に警鐘を鳴らしてくれているのだと思う。

はだしのゲン」でも作者自身が実際に体験した広島原爆と戦後の日本を描いている。

はだしのゲンほど広島原爆の悲惨さを訴えられる漫画は今後出てこないでしょう。

いくら絵が上手かろうとはだしのゲンからにじみ出る経験者の筆は未経験者であれば描くことはできない。

ゴジラや仮面ライダーも第二次世界大戦を経験した人々が当事者、経験者でしか描くことのできないテーマを未来の担い手である子供たちに訴えているのだろう。

ショッカーは人間の悪意が乗り移った化身だと私は思う。

ショッカーが悪になったのではなく、人類の過ちがショッカーとなって人類に襲いかかっているように思う。

なぜならショッカーの考えた悪より人類の考えた悪のほうがよっぽど恐ろしく、無意識で無邪気だからだ。

今回判明したこと

・ショッカーは仲間の間で荷物の受け渡しをする際にショッカーのエンブレムを半分にしたものを受け渡し側と受け取る側それぞれに持たせて2つを合わせて形がエンブレムとして成立すれば受け渡しが成立するように手配している

・海に近い湖や沼はショッカーがよくアジトとして使う地形

・ライダーベルトの左側のサイクロン誘導装置(パワースイッチ)を回すとエナジーコンバーターのパワー出力(ライダーパワー)の調整を行うことができる

・猛、男同士の友情に嫉妬(親友に裏切られた過去あり)

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