【仮面ライダー(初代)】82話「怪人クラゲウルフ 恐怖のラッシュアワー」感想・レビュー・考察(ネタバレ有) 悪意と憧れの憑依

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年

あらすじ

秋の夜長、ゲルショッカー首領にその力を誇示するため怪人「クラゲウルフ」は「早坂発電所」に侵入する。

クラゲウルフが発電所の高圧電流を吸い上げたため瞬く間に発電所は停電する。

そのため係員2名が点検に訪れるがクラゲウルフのカミナリ攻撃で跡形もなく燃えてしまった。

だがその現場を1人の少年に目撃されてしまう。

ゲルショッカーはこのカミナリを早朝ラッシュ時の新宿駅に落とす作戦を企んでいた。

この作戦で通勤ラッシュ時およそ200万人集まる新宿駅の人々を皆殺しにし、大混乱を巻き起こそうとしているのだ。

恐怖のラッシュアワーの始まりだ…

ミツルの漢気にゲルショッカーはターゲット集中

早坂発電所事件の目撃者である「山崎トオル」はゲルショッカー戦闘員に追われていた…

警察官に助けを求めても信じてもらえない。

彼は誰も信じられず、助けを求められない中逃げる、逃げる、逃げる。

そして彼は幸運にもパトロール中のライダー少年隊子供リーダーのナオキとミツルに出会う。

すぐに事情を察したミツルは自身の危険もかえりみず身代わりとなるべくトオルと服装を交換する。

ナオキにトオルの避難と本部への連絡を託し自身は事件の渦中に身を投じる。

ミツルの判断力となにより決断力が凄い!

即、隊員と役割分担を決め、自身が進んで危険に身を投じる。

自分に息子がいたらやってほしくないけど生きて帰ってきてくれるなら誇らしいだろうな…

見ず知らずの人のために力を貸すことは現代だと結構ハードルが高い。

困っている人に「どうしたの?」って声をかけられるぐらいの社会が良いですよね。

今はみんな疑心暗鬼になっちゃって声をかける方もかけられる方も警戒心が強く、変に関わると警察沙汰になり、それだけであれば良いのですが容疑者扱いされるのは心外ですものね…

あ~あ~嫌だ嫌だ!人の善意を素直に受け入れられない社会!

また電気力不足の予告改変これは一体?クラゲウルフ

今回登場する怪人「クラゲウルフ」は「電気クラゲ」と「ウルフ」の特性を持つ怪人だ。

電気クラゲの特性は29話「電気怪人クラゲダール」の「クラゲダール」のように電気ムチを操り、39話「怪人狼男の殺人大パーティー」の「狼男(ゾル大佐)」のような怪力を持つ。

ちなみにクラゲウルフは10万ボルトの高電圧を帯びているという設定なのだが、予告では3万ボルトと説明されている。

この変更は76話「三匹の発電怪人シードラゴン!!」の予告でも同様の変更があり「シードラゴン」の帯びている高電圧は予告の8300ボルトから本編では12000ボルトに変更されている。

予告はあくまで予告であるので良いのだが結構コロコロ変わりますね~

正直、仮面ライダー本郷猛は5万ボルトまで高電圧には耐性があるので5万ボルトまでの攻撃はどれも同じ。

なのでシードラゴンに関してはなぜ変更したのか分かりませんが、クラゲウルフは3万ボルトだと仮面ライダーの耐性で打ち消されるので10万ボルトに設定変更したのではと考えられる。

その甲斐あってトオルの身代わりとなったミツルの救出時に猛は電気ムチをくらいもだえ苦しんでいた。

だが滝とミツルを逃がすための演技として苦しんでいるフリをしていて、実は改造人間なので平気なんだと宣言して相手を油断させ、実はめっちゃ効いていた。

やせ我慢をした猛の名演技で危機を回避したが、それなりにダメージも受けたため撤退する。

これだけで猛を追い込むのも凄いが、さらにクラゲウルフには凄いところは2つある。

まずはみなさんカミナリが発生する仕組みをご存知だろうか?

カミナリは「大気中のプラス電荷とマイナス電荷がぶつかり合うと発生するもので雲の中で発生しているのが「雷雲」で雲と地面の間で発生するものを「落雷」と呼ぶ」

1つ目は上記のカミナリの仕組みをクラゲウルフは両腕で右腕プラス・左腕マイナスを担い、両腕をぶつけることでカミナリと同じ現象を発生させることができる。

今回はこの能力を使い通勤ラッシュ時に人々が大集合する新宿駅にカミナリを落として駅を爆発させ皆殺しにする「新宿駅爆破作戦」を企んでいる。

そして2つ目は「人間に憑依する」能力だ。

この能力で藤兵衛の親友「中村」に憑依して藤兵衛たちを騙そうとする。

この能力の凄いところは変装ではないということだ。

変装ではないため憑依したままのクラゲウルフを倒してしまうと憑依された本人(今回なら中村)も死んでしまう。

本人を生身で拘束せずとも憑依することで人質にできるのがこの能力の凄いところだ。

人質の確保と戦闘を両立できるため、隙が生まれず戦闘に集中することができるのが利点だ。

しかしなぜか最後に憑依を解き分離し中村を人質にしている。

これはについては考察を後述します。

一見、隙の無いように思えるクラゲウルフだが弱点はある。

それは憑依後でも自身の自動能力は放出したままだということだ。

クラゲウルフの身体からは常に高電圧が放出されているため周りの電気機器に影響を与える。

そうすると憑依した人間(中村)の周りでは奇妙な機器トラブルが発生することになる。

そのため中村(クラゲウルフ)が本部に訪れた瞬間その現象が発生したので猛に怪しまれ、超聴覚により不審な電気音を放出しているのが中村と確信したことでゲルショッカーの怪人であることを見抜かれてしまっている。

しかし、それを除けばかなり強力な怪人であることは間違いない。

怪人デザインを見た時、狼男にチーズフォンデュぶっかけたみたいなデザインだと思ってしまいましたが(笑)

仮死、猛

中村に憑依して本部に侵入したクラゲウルフは猛を電気ムチで呼吸停止にして藤兵衛たちを誘拐していった。

だが呼吸停止したと思われた猛は生きていた。

なぜなら猛はあの場で呼吸停止と見せかけた「仮死状態」となっていたからだ。

猛いわく、自身の能力なら「仮死状態にすることは簡単」であるようだ。

仮死状態は簡単ではない。

だが昆虫などには獲物から狙われた際に動きを止める「擬死状態」というものがある。

仮面ライダーは「バッタ」の特性を備えているためこのような芸当ができるのだろう。

もう一度いう仮死状態になるのは簡単ではない!

ミツルには勲章あげてください!

事件解決後、滝隊長から嬉しいお知らせが!

今回の戦いを見たトオルがライダー少年隊に志願しているのだ。

絶対僕は少年仮面ライダー隊員になるんだ」と宣言していたようだ。

もちろん仮面ライダーの勇ましさによるものも大きいが、今回はミツルの漢気を見てライダー少年隊に志願したように思う。

滝隊長が嬉しそうに仮面ライダーに報告している姿がとても印象的だった。

部下の活躍を見て志願されるのは隊長冥利に尽きるだろう。

隊長の育て方が良かったからと言われているようなものだからミツルの行動は鼻が高いでしょう。

ストーリーの転換点と考察

ミツルの勇気

ミツルが身代わりにならなくてもナオキ、トオルと一緒に逃げながら本部に向かうもしくは連絡するという判断もあったでしょう。

しかし、ミツルは本部への連絡とトオルの人命救助を優先するために自己を犠牲にしてナオキとトオルを本部に急がせた。

もし3人で逃げていたら本部には連絡できても3人とも人質となる可能性が高く、なにより目撃者のトオルがすぐに始末されてしまう可能性が高い。

どうしても我が身可愛さに全員で助かろうとして全員被害にあうというパターンもあるが、ミツルは「損して得取れ」のリスク分散の精神でトオルの命を救ったのだ。

現代だとSNSで「子供たちにそんな危険なことをさせることを肯定するのか!」とか言われそうだけど素直に凄い!立派!と称えたい!

強すぎるがゆえ電気オーラを隠せない

仮面ライダーを倒す為に10万ボルトの高電圧怪人クラゲウルフを生み出したのだが、今回はそれが仇となってしまう。

それだけ高電圧を体内に蓄えていると放電の影響が強く、クラゲウルフが近くにいると電気機器が不自然な動きをしたり、猛の超聴覚に感づかれてしまうなど憑依、変装の意味がなくなってしまう。

これではせっかくの憑依能力を活かしきれていないので今後は放電しない別の怪人に実装したい能力だ。

体臭放出とかは…しょうがない…

演技そして本気の仮死状態

今回は本郷猛のやられたフリ、死んだフリに磨きがかかっており、その演技力の高さからピンチを回避している。

本当はクラゲウルフの高電圧が効きまくっているのに平気なフリをして相手を油断させたり、本気で仮死状態となることで敵を欺く。

演技ではなく本当に仮死状態であれば1分程度は身動きが取れないので電気ムチで黒焦げにしてしまえば倒せたのに、ゲルショッカーはメンバーを誘拐することに労力を割き、猛をそのまま放置したので逆転を許してしまう。

や~い!旧ショッカーの残党狩りして血を入れ替えたくせに旧ショッカーの伝統芸「油断・慢心」は受け継いでやんの~!

憑依の解除

中村に憑依したクラゲウルフは憑依状態を維持すれば労せず人質を取ることができたのに、なぜか最後憑依を解き分離を選択した。

そのまま中村に憑依していれば中村を盾に逃げることもできたのに分離したのはなぜか?

それともクラゲウルフを倒したら憑依した人間が死ぬので人質として利用できるというのは私の思い込みで、実はクラゲウルフ状態で倒されると憑依が解除、分離されクラゲウルフは死亡、憑依対象は生還ということなるということなのだろうか?

そうでなければ憑依を解除するメリットがない。

もしくは「まだ俺にはこいつ1人殺すぐらいの力はあるからな!」とクラゲウルフが発言した通り、憑依するとその分エネルギーの消耗も激しいので、分離して中村1人を殺すだけの力は確保したということか。

それとも船の影で分離したように見えたが実は本部で猛を呼吸停止にしてメンバーを人質にした時点で憑依は解除して分離してエネルギー消費を抑え、純粋に中村を人質として船に隠していたのかもしれない。

それにしても68話「死神博士 恐怖の正体?」で殺された「熊木」同様またしても藤兵衛は親友を失うところだった…危ない…

今回の特撮表現の面白さ

クラゲウルフの憑依表現

クラゲウルフは人間に憑依することができる能力を持つ。

作中で気絶した中村に憑依するのだが、憑依の仕方はまずうつ伏せになった中村の背後にうつ伏せで覆いかぶさる。

その後、クラゲウルフを透過することでクラゲウルフが中村の中に憑依したことを表現している。

空気中に電気機器に悪影響を与えるほどの高電圧が流れているという表現

電気機器のランプを不自然に点滅させ、雑音を合成することで周囲の電気機器の乱れを表現している。

新技「ライダースイング」表現

相手の両足を持って振り回して投げる技。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★☆☆

高所:★★☆☆☆

火力:★★★☆☆

水場:★★☆☆☆

仕掛け:★★★★☆

第82話の名言・迷言・珍言・失言

チョコ「食欲の秋!なんてったって食欲は健康のバロメーターですからね!つまり今の私は健康ってわけ」

ユリ「チョコ…そんなに食べたら身体に悪いわよ?」、ヨッコ「それに美容にも悪いんだから」に対してのチョコなりの回答がこれだ。

確かに一理あるがものには限度ってものがある。

ほどほどという意味ではユリとヨッコが正しい。

でもチョコは今だとモテそうだな…いっぱい食べるから元気だし、その割にスタイル抜群。

やっぱりよく食べる人は元気ですよね!私は少食なんで本当に食べ歩きとかできる人羨ましい!

本郷猛「忘れたか!俺が並みの人間ではない改造人間であることを!」クラゲウルフ「なに!?」

クラゲウルフの電撃に耐えた猛が言い放ったセリフとそれに対するクラゲウルフの反応だ。

え…もしかしてゲルショッカー忘れてたの?それともクラゲウルフの教育不足?

それか改造人間であることは忘れていないけど電撃に耐えるほどだとは思わずビックリしてのことか?まあ結果猛のやせ我慢で耐えていたわけだし後者かな?

ロケ地(執筆者の調べ)

・「新宿駅周辺」

次回予告より(第83話「怪人イノカブトン 発狂ガスでライダーを倒せ」)

次回のゲルショッカーからの刺客は怪人「イノカブトン」。

イノシシ」と「カブトムシ」の特性を持った怪人だ。

イノシシの突進力とカブトムシの強固な角とのパワーが合わさり相性が良さそうな怪人だ。

だがイノシシは青色が苦手で鼻が弱点だ。

青色といえばゲルショッカー戦闘員は青のスーツ、そしてイノシシはその青色が揺れる動きも嫌う。

つまり特性上、部下を連れ歩くのを嫌いそうだがそういった特性は取り除かれているだろう…たぶん…

問題は鼻だ。顔面にダメージを加えれば大ダメージを与えられそうだが、イノカブトンはイノシシの鼻の上にカブトムシの角があるので非常に狙いにくい。

また身体を丸め全身のトゲ逆立て突進する攻撃は受け止めようもなく非常に危険を帯びているので接近するのも難しそうだ。

次回の事件のキーワードは「発狂ガス」。

発狂とは気が狂ったということだが、これまで本郷猛はピンチの時こそショッカーやゲルショッカーに対して不敵な笑みを浮かべては「気が狂ったのか!?」と言われ続けてきた。

次回はそんな仮面ライダー本郷猛を本当に狂わせて倒すつもりでいるらしい。

感想・まとめ

憧れるのをやめましょう」は対戦相手に対して尊敬・敬意、そして清いスポーツマンシップの元で成り立つ。

これは相手に憧れ過ぎると勝負の場で気の緩みが生じることへの引き締めの言葉だ

そもそも対戦相手がゲルショッカーなどでは尊敬・敬意もないので憧れによる慢心は起こりません。

だが相手を尊敬できなかったり敬意がなさすぎるのも考えものだ。

逆に言えば味方に尊敬できる人がいるならドンドン憧れましょう!

憧れを見て、憧れに触れ、憧れに学び、やがて憧れられ、憧れを越える。

これが人が繋いできた成長でしょう。

今回だとミツルの勇敢さに憧れライダー少年隊員になり、ナオキが憧れる滝隊長や本郷猛に学び強く健やかに成長していく。

その循環を生み出せたならライダー少年隊はもっと強くたくましくなれる。

ゲルショッカーには憧れはなく、どこから沸いたかわからないような憎悪で力を増幅している。

力は増幅しているが相変わらず慢心するクセがあるのは成長がない証拠。

憧れでなければ旧ショッカーやゲルショッカー構成員にとって首領はどんな存在なのだろうか?

尊敬・敬意を超越した存在なんだとか耳障りの良いことで崇めているのだろうが、そこに慈悲はなく憧れも生まれないように思う。

憧れられる人物が近くにいるのは恵まれた環境ですね。

私も憧れたい…

今回判明したこと

・チョコにとって食欲は健康バロメーターで食欲旺盛なチョコは健康だと思っている

・ナオキは見ず知らずの人の代わりに身代わりになる漢気がある

・ゲルショッカー戦闘員のマントは赤青黄色であったが緑色もある

・藤兵衛には昔のレース仲間で親友の「中村」という人物がいる

・改造人間の猛は自分の意思で簡単に仮死状態になることができる

・新技「ライダースイング」

・山崎トオルは絶対少年仮面ライダー隊員になるんだと宣言する

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