【仮面ライダー(初代)】83話「怪人イノカブトン 発狂ガスでライダーを倒せ」感想・レビュー・考察(ネタバレ有) 狂人を狂わせ、人を狂わせ、予定を狂わせ、最後はクルクル

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年
前話の記事

あらすじ

深夜、京葉刑務所で事件は起こる。

その日はある死刑囚が刑務官と神父が立会いの元、死刑が執行される日だった。

死刑囚の最後の言葉は人間への憎悪。

この憎悪の才能をゲルショッカーは見逃さず死刑執行前に侵入し誘拐。

ゲルショッカーにより改造人間に生まれ変わる…

時を同じくして「村山動物園」では園丁(飼育員)が脱走したイノシシに黄色い粉を吹きかけられ発狂する謎の事件が発生する。

イノシシが脱走!だがイノシシの足跡なしの神隠し事件

村山動物園ではまだ日が昇っていない早朝ごろ、エサの仕込みに向かう園丁(飼育員)2人がイノシシの脱走に気がつく。

そして2人はそのイノシシに襲われ謎の粉を吹きかけられたと思ったら発狂し2人でもみ合い、やがて謎の粉を吹いて気絶する。

イノシシはそのまま逃亡したがなぜか足跡の痕跡がない。

この出来事はゲルショッカーの新怪人「イノカブトン」の仕業だ。

イノカブトンは「イノシシ」と「カブトムシ」の特性を持つ怪人だ。

早朝、空も暗いのでカブトムシ部分は黒く見えずらく、園丁(飼育員)にはイノシシのブタ鼻部分しか見えなかったためイノシシと勘違いしたのだろう。

そして足跡の謎だが、確かにイノシシの足跡はないが、おそらくイノカブトンの足跡はあったはず。

怪人は足跡が人間と同じなのでイノシシと勘違いした上でイノシシの足跡がなければ神隠しと感じても不思議ではないだろう。

これが事件の真相なのだが、さらに問題なのがイノカブトンの被害にあった人物は黄色い粉のせいで発狂しているということだ。

しかも黄色い粉が原因かは不明だが、発狂した人々は耐えがたい悪臭を放つようになるという。

色んな意味で発狂しそうなイノカブトン攻撃の正体は「発狂ガス」。

これが今回、東京中の人々を発狂させ大混乱に巻き込む「猛毒ガス東京壊滅作戦」の要となる。

臭い、鋭い、硬いと発狂もの!ついにアレ搭載の新怪人登場

イノカブトンは京葉刑務所から誘拐してきた死刑囚を元に誕生した。

その死刑囚は死刑執行前に懺悔の言葉もなく「必ず地獄から這い出して、てめえら人間どもをばらしてやるからな!」と吐き捨てるほどの悪党だ。

この凶悪性を高く評価したゲルショッカーはイノカブトンの素体とするべく死刑囚を誘拐する。

ここで76話「三匹の発電怪人シードラゴン!!」で本郷猛を洗脳するために用意し移植予定だった「悪の電子頭脳」が再登場する。

いや…待てよ?そもそも怪人にピッタリの凶悪性を買って誘拐したのに、凶悪性を備えている脳みそと悪に染めて洗脳できる電子頭脳に入れ替える意味があるのだろうか?

それであれば最初から凶悪な人物ではなく、本郷猛とまではいかないまでも運動神経抜群の健康体を連れてきたほうが良いのでは?

まあ首領が気に入ったのならいいけど…

そして完成したイノカブトンは「イノシシ」と「カブトムシ」の特性を持つ怪人だ。

鼻はイノシシのようなブタ鼻で頭部、上半身はカブトムシのように頑丈な外殻にトゲが生えており、左腕はイノシシのヒズメのようになっている。

そして下半身はイノシシな茶色い毛並みをしている。

イノカブトンはゲルショッカー戦闘員のレースチームを率いて猛を襲う。

藤兵衛が発狂ガスで入院、滝もなぜか不在のため戦闘員全員を相手にしなければならず体力消耗が激しい

その隙をついたイノカブトンは仮面ライダーの左太ももに角を突き刺してグリグリする。

イノカブトンは出血多量で身動きが取れない仮面ライダーに止めを刺さずに「今のうちに地球の景色を眺めておくがよい!」ともう勝った気で去っていく。

猛毒ガス東京壊滅作戦」の実行に急いだのかもしれないが仮面ライダーの死を確認せずに去るのは愚の骨頂。死神博士が生きていたら激怒していただろう。

藤兵衛は発狂中で助けにこれない、そして滝が現れないことを知っていたから放置したのだろうか?

どちらにせよ滝の不在理由も気になるところだ。

精神力の強さが仮面ライダーを救う

イノカブトンの角に刺されて負傷した猛はナオキとミツルに救出され病院に運ばる。

猛は出血多量のため輸血を受け、安静にしていないと生死に関わる状態だ。

だがゲルショッカーは猛の回復を待ってはくれない。

さっそくイノカブトンが遊園地で暴れ出し大パニックに。

そしてそれに呼応するかのように隔離病室で拘束されていた藤兵衛も脱走してオートバイで遊園地に向かってしまう。

これは何としてでも止めないと考えた猛は医者の制止を振り切って遊園地に向かう。

少し休んだため改造人間の再生力で若干動けるようになったが万全ではなくやはり苦戦を強いられる。

それでもジャンプ、左足でキック、または左足を軸足として使うことも一応できている。

そんな中発狂した藤兵衛も仮面ライダーに襲い掛かる。

発狂して襲い掛かる藤兵衛を傷つけずに攻撃を回避しながらイノカブトンの相手をするのは至難の業であり、体力の消耗も激しい。

そのためやはり左足に無理がかかったようで上手く立ち回れなくなってくる。

絶体絶命のピンチの中、仮面ライダーの左足を負傷させ苦しめた技「イノカブトン角えぐり」が再び襲い掛かる。

一度受けた技は二度と受けないとばかりに何とか受け止める仮面ライダー。

しかし、足が負傷しているため踏ん張りが効かなず、このまま再度この技をくらえば死は免れないだろう。

そんな2人の間に割って入るように藤兵衛は戦闘員の剣で切りつける。

仮面ライダーがやられた!と思った刹那、苦しんでいるのはイノカブトンの方だった。

イノカブトン角えぐりの要の角が藤兵衛により切断されてしまったのだ。

なんと藤兵衛は発狂しながらもイノカブトンに操られたフリをしつつ機会を伺っており、2人がもみ合いをしている瞬間を狙ってイノカブトンの武器を使用不可に追い込む。

イノカブトンはもう1つの必殺技「イノカブトンとげ車」を放つが藤兵衛が作ったチャンスを活かすため最後の力を振り絞ってジャンプ回避しサイクロンアタックでイノカブトンを跳ね飛ばし撃破する。

人知を超えた藤兵衛の強い精神力が奇跡の逆転劇を生み出した!

滝の救援不可!?

滝はいないし」とか「こんな時に滝さんがいれば…」と隊員が漏らす中、仲間のピンチに隊長が駆けつけないのは何かがおかしい…

隊長はゲルショッカーに捕まったのでは?と思って観ていたが人質になっているわけでもなく、粛々と事件は解決に向かった。

猛が行方不明なんていうのは66話「ショッカー墓場 よみがえる怪人たち」でもあったが滝が不在なのは珍しい。

ただ滝はそもそもFBIなので本来ライダー少年隊は副業?もしくは利害の一致した団体なのでFBIと兼任みたいなところがあるので、あくまで本国のミッションが優先だろう。

だが今回はこの不在が痛かった。

ストーリーの転換点と考察

冥土の土産に地球の景色をプレゼントするつもりが逆転チャンスをプレゼント!

イノカブトンはイノカブトン角えぐりで仮面ライダーを出血多量にして生死の境に追い込んだ。

境に追い込んだのなら止めを刺せば良いのになぜか「貴様は出血が止まらなくなり、間もなく死ぬ!今のうちに地球の景色を眺めておくがよい!」と慈悲なのか猶予をくれる。

再生力が常人より高い改造人間に猶予なんて与えたら回復されてしまう上にブラック将軍、首領になぜ止めを刺さなかったのかとがめられる可能性もある。

だがそこは案外おとがめなし。

それよりも仮面ライダーを邪魔をされない程度に痛めつけて、発狂ガス作戦を優先させたのかもしれないがそれが慢心だった。

ショッカーもといゲルショッカーは作戦のたびに人類に「今日で地球の平和最後だからなんか楽しんだら?」と慈悲や情けにも似た油断をするつもりだろうか?

人類は平和を諦めちゃいないんだ!

ちなみに私は人類最後の日は特上のハヤシライスとラングドシャクッキーが食べたいです。

発狂をはねのける精神力

発狂した藤兵衛が正気を保っていた。これはゲルショッカーにとって予想外だったはずだ。

まさかゲルショッカーの科学力で作り上げた猛毒発狂ガスを受けて正気を取り戻す人類がいるとは露とも思わなかっただろう。

それだけに藤兵衛の発狂と正気を行き来する演技に気がつくわけもなく、隙を見せたイノカブトンは角を切断される。

それにしてもイノカブトンは頑丈そうなのに常人、しかも初老の藤兵衛に剣で切断されてしまう程度の強度だったとは…

それとも藤兵衛が持っていたゲルショッカー戦闘員の剣が凄いのかな?

戦闘要員の不在

今回、滝隊長不在により藤兵衛が出動要因となる。

しかし、滝のような身体能力はないため早々にイノカブトンの発狂ガスの餌食となってしまう。

それでも発狂ガスに耐えて正気を保ったままイノカブトンに一矢報いのは凄い成果だ。

だが滝がいないことでゲルショッカー戦闘員といえども対抗できる隊員がおらず、全て猛1人で相手をする必要があった。

その結果、体力消耗の隙を突かれてイノカブトン角えぐりを受けてしまい左足を負傷。

発狂ガスにより病室で拘束された藤兵衛が出動できない中、滝のように戦闘員に対抗できるメンバーはおらず猛を休ませることもできずピンチに陥る。

今回は本当に紙一重の勝利。

やっぱり滝兄ちゃん!あんたが必要だ!

今回の特撮表現の面白さ

イノカブトン以外の発狂ガス噴射表現

イノカブトンの発狂ガスに侵された人間はなぜか発狂ガスを出せるようになる。

イノカブトンであればイノシシの鼻から噴射するのだが、人間で行う場合、口に粉を含み噴射する方法を採用している。

イノカブトンと同じように鼻から噴出することは厳しいのだが、口から噴出するのも口内にココアパウダーを含むようなものなので変な気管に入ったらむせたり、肺に入ったりして危険な行為なのは間違いないので真似しないように!

イノカブトン「イノカブトンとげ車」表現

イノカブトンの必殺技「イノカブトンとげ車」はイノカブトンが丸まり前転しながら突進する技。

その強固な外殻とそこに生えた鋭いトゲが襲い掛かる。

この攻撃は斜面にイノカブトンがしゃがんでいる映像を撮影したあと、イノカブトンの丸まりを模した厚い円柱にトゲを付けた模型を斜面から転がすことでイノカブトンとげ車を表現している。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★★☆

高所:★★☆☆☆

火力:★★★☆☆

水場:☆☆☆☆☆

仕掛け:★★★★☆

第83話の名言・迷言・珍言・失言

イノカブトン「今のうちに地球の景色を眺めておくがよい!」

左足を負傷させた程度で完全に勝った気になり、その場を去るイノカブトンが残した慈悲(慢心)の言葉だ。

イノカブトン…君こそ仮面ライダーの死にざまを眺めないと撃ち漏らしとしてブラック将軍に怒られるよ?

立花藤兵衛「見損なうな!悪魔に魂を売る俺と思うか!?」

イノカブトンの発狂ガスを受けているにも関わらず正気を保ち、イノカブトンの角を切った藤兵衛が絞りだした渾身のしてやったりなセリフだ。

段々と洗脳されていくことは現実世界でもありますが、瞬間的にパンッと洗脳されることってあるのでしょうか?

それを催眠術と呼ぶのでしょうがあれにもかかりやすい人、かかりにくい人があるようなので藤兵衛は後者だったのかもしれない。

しかし、こういうシーンで思いつくのは想いの強さと精神力で正気を保ち精神を支配されないようにもがく的な語られかたをする場面が多い(私もそうですが)。

実際、正気を保つというのはどういった感覚なのでしょう?

近いものだとお酒に酔って失礼なことをしてしまい、その瞬間サーッと血の気が引いて酔いが醒め我に返る。これが私の中で現実的に起こりうるであろう正気に戻るというのに1番近いイメージですね。

気絶している状態で別人格が付与され正気(元の自分)じゃなくなるっていうのとも違うような…

ロケ地(執筆者の調べ)

・「浜田山病院(旧樺島病院)」

次回予告より(第84話「危うしライダー! イソギンジャガーの地獄罠」)

次回のゲルショッカーからの刺客は怪人「イソギンジャガー」。

イソギンチャク」と「ジャガー」の特性を持った怪人だ。

イソギンチャクといえば49話「人喰い怪人イソギンチャック」に登場した強力な吸引能力を持つ怪人「イソギンチャック」、ジャガーといえば53話「怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦」に登場したバイクが得意な「ジャガーマン」を思い出す。

この2つを組み合わせることでバイクを乗り回しながら吸引する高速で移動する台風の完成だ。

…となるかはわからないがゲルショッカー怪人の楽しみは今までの怪人をハイブリッドさせた結果どんな能力を発揮するかということ。

仮面ライダーには悪いが毎回楽しみだ。

次回は今回なぜか行方をくらましていた滝隊長も無事?登場。

頭に包帯を巻いて通信しているところを見ると、今回はどこかで事件に巻き込まれていた可能性がある。

そして次回の監督はなんと!仮面ライダーの産みの親「石ノ森章太郎」氏が担当。

スピーディーなアクションとカッコイイつよ~い仮面ライダーの活躍!これにはブラック将軍も悔しい…だけど面白い!と絶賛。

ブラック将軍が仕掛けた「地獄罠」を張り巡らせたフィールドで展開するカッコイイアクションに注目だ。

予告で映ったメイキング映像で石ノ森章太郎先生とブラック将軍が打ち合わせしている風景がなんかシュールだ。

次回の記事

感想・まとめ

今回は仲間のありがたみが非常にわかる回だった。

最初期の本郷猛にはむしろ親しい人だからこそ頼れない巻き込みたくないという孤独感、悲壮感が漂っていた。

だが仲間たちと協力せざる負えない状況を多く経験し絆を深めることで、段々と仲間との共闘を受け入れつつある。

そしていざ仲間が不在となるとここまで苦戦を強いられるのか!と視聴者目線でも感じる回でした。

特に戦闘要員である滝の不在による戦力ダウンは大きい。

猛はゲルショッカー戦闘員を雑魚呼ばわりしているが、それでも旧ショッカー戦闘員の3倍の戦闘力を誇る雑魚を相手にしていたら体力の消耗が激しい。

そこを滝が相手してくれることで幹部怪人との戦闘に注力できた場面が多い。

また仮面ライダーが羽交い締めになった際のアシストなど助けられた場面は数知れず。

戦力というのは戦闘力高い個々をまとめた集団、塊ではないことがよくわかりますね。

まさに戦闘員の性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてくれていますね。

本当滝兄ちゃんどうしたんやろ…

今回判明したこと

・旧ショッカーの遺産である「悪の電子頭脳」を人間に移植してイノカブトンを生み出す

・ゲルショッカーは止めを刺さずに冥途の土産に地球を眺めさせてくれる

・本郷猛の血液型はO型、ナオキ、ミツルもO型

・藤兵衛は発狂ガスを受けても自我を保つほどの精神力を持つ

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