【仮面ライダー】64話「怪人セミミンガ みな殺しのうた!」感想・考察(ネタバレ有) 音波拡大解釈拡大

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年

あらすじ

森でセミ取りをしているナオキたちの前に不審な男が現れる。

その男は土地の所有者を名乗り、ナオキたちからセミを取り上げ追っ払う。

だが男は土地の所有者などではなくセミを売買しようとしており、労せずナオキたちからセミを頂いたというわけだ。

男がほくそ笑んでいると頭をつんざくような不快な音に見舞われる。

苦しむ男の前に怪人「セミミンガ」が姿を現す。

セミミンガは男の血液を吸い尽くしてしまう。

その様子を虫取り網を忘れてたことに気づき戻ってきたナオキが目撃する。

ナオキはセミミンガが現場を飛び去る際に発した音波にやられ気絶してしまい一緒にいた子供たちに救出される。

目撃者されていることに気づきナオキを始末しようと動き出すショッカーだが、たまたま通りがかった猛がナオキを連れ帰ったため事なきを得た。

ナオキがうわ言で「セミのお化けだよ~」というのでショッカーを警戒しつつ猛の自宅へ運ぶ。

猛の予想通りセミミンガの襲撃があり戦いは始まる。

セミは高く売れる!?

セミ取り名人ナオキさんら子供たちからセミを取り上げる謎の男。

地主を名乗り権利としてセミを取り上げるのだがこの男、実は転売ヤー。

セミは最近(1970年代)高値で売れるそうだ。

セミが高く売れる!?聞いたことがないが私なりに調べてみた。

調べるとセミはセミでも「セミの抜け殻」が売れるそうだ。

セミの抜け殻は栄養があり、漢方薬に使用されるそうなので値がつくようです。

ただ1つ10円程度なので割に合いません。

あくまで抜け殻なので成虫になる瞬間にしか回収できません。

そのため1ヶ月しか寿命がない成虫を売ろうとするこの男の言う高値とはいくらぐらいなんでしょうか…

セミを高く売るのは良いが子供たちを騙して取り上げた結果、天罰としてセミミンガに吸血されるとか割に合わないでしょう…

強力な殺人音波

セミ」の特性を持つ怪人「セミミンガ」。

セミの特性と同じく強烈な鳴き声に見立てた音波を出し、常人では耐え難いほどの音波であることから「殺人音波」と呼ばれている。

ナオキは遠目でセミミンガを目撃したため助かったが、それでも強烈な音波で気絶してしまうほどだ。

音波の直撃を受けたショッカー戦闘員なんかは身体が弾け飛んでいたほどだ。

また猛宅に襲撃の際も強がっていたが、改造人間である猛にも効果抜群。

考えてみれば仮面ライダーは超聴覚を持っており、常人の数十倍の聴力を有するため考え方によっては常人より耳が良い分よりダメージは大きいように思う。

そしてセミミンガは吸血攻撃もあり、セミ売人の男も全ての血を抜き取られている。

仮面ライダーも吸血でエネルギーを吸われ、滝の助けがなければ脳がやられ半身不随になる危険性もあったほど追い込まれる。

最後は妨害電波作戦により動揺して撃破されたが一騎打ちであれば勝負はわからなかった。

住処を失う可能性が常にあるヒーロー

猛の部屋は当然ショッカーにとって宿敵の部屋なので襲われる可能性が高い。

そのため部屋が破損することが多いように思う。

62話「怪人ハリネズラス 殺人どくろ作戦」でも壁に針で穴をあけられていたり、今回も窓ガラスや壁が崩れ落ちたりとかなりの被害を受けている。

しかも猛が住んでいるのはマンションだ。

修繕費や騒音、度重なる得体の知れないものたちの襲撃。

そのうち追い出されるんじゃないか…

立花レーシングクラブはそれ以上に被害にあっているがあれは賃貸なのか藤兵衛の持ち物かで話しは違ってくるだろう。

電波塔は意外な場所に

セミミンガの殺人音波を効果的に使用する場合、電波の妨害が少ない高い場所、つまり「電波塔」を使い日本中に殺人音波拡散する方法が一番効果的と睨んだ猛は藤兵衛たちに怪音波を発信していそうな電波塔の捜索を頼む。

滝が電波探知機を用意し、セミミンガの音波の聞き分けはスイスでも無線傍受が得意だったエミが担当することに。

そうだ!エミは元々こういうことのプロフェッショナルだった!

だが電波塔はそもそも常に電波を出しているのでセミミンガの音波をどのように聞き分けるのか。

最初は日本一高い建物(1970年代)といえば「東京タワー」なので、そこかと思いました。

実際にエミたちもそこを訪れていますが違ったようです。あっそこじゃないんや…と正直思いましたね。

何はともあれ怪電波が「NTT上菅田無線中継所」付近であることを突き止めた藤兵衛たちは本当にショッカータワーなのか確かめるためにピクニック中を装い、塔の下でお弁当を食べ始める。

職員に変装した戦闘員が注意にきた際、後ろの陰で覗き見していた戦闘員を藤兵衛は見逃さなかった。

ショッカータワーであると確信を得た藤兵衛は直ちに猛と滝に連絡を取ろうとするがセミミンガに捕まってしまう。

妨害電波作戦

藤兵衛たちに作戦実行に使用するショッカータワーを特定されたためショッカーは直ちに「殺人音波作戦」を実行に移す。

特定された代わりに藤兵衛たちを人質に取れたので猛を呼び寄せるために5秒以内に姿を現さないと人質を殺すと脅すが猛は現れない。

猛は藤兵衛たちを見捨てた!?と思いきや仮面ライダーが電波塔上から現れる。

なんとショッカーが猛と滝の捜索に目を光らせている間に滝が電波塔の周りに妨害電流を流す装置を設置していたのだ。

これにより装置を排除しなければ殺人音波を日本中に発信することが出来なくなってしまった。

滝はおそらく強力な電波を発信する通信機器を電波塔の周りに設置することで電波同士が喧嘩をして混線状態とさせることで電波の発信を妨害していると思われる。

これにより電波塔は使い物にならなくなってしまったのでセミミンガは仮面ライダーとの戦闘に集中せざる負えない状況となる。

ストーリーの転換点と考察

拡大解釈報連相

セミミンガにやられて敗走した猛は「石山総合病院」に運ばれる。

ショッカーはこれまでの反省を活かして報連相を徹底しているようで戦闘員に猛の容態を確認させる。

戦闘員の報告は「重症」。

だが猛はそう思わせるブラフは張っていた。

猛は危機的状況であったことには間違いないが、滝がセミミンガの吸血を阻止したことで脳に重大なダメージは及ばず少し休めば回復する程度で済んだ。

この時点で報告班の情報不足もあるが重症と聞いて地獄大使は勝手に「半身不随」と拡大解釈する。

そんなこと部下はひと言も言っていないにもかかわらず上司として報告を拡大解釈してしまっている。

猛に騙されただけではなく自身で思い込みをして「仮面ライダーは動けない」と判断して作戦実行を進める。

だがこれすら私は間違いだと考える。

なぜなら死神博士なら猛に止めを刺すことを優先するだろうからである。

このあたりが猛に対する認識が幹部間で統一されていないことが今回の敗因だろう。

要は地獄大使は死神博士とは違い猛を甘く見ていたということだ。

今回の特撮表現の面白さ

殺人音波表現

セミミンガの目に電球を埋め込んで、それを光らせると殺人音波の発動合図。

そして画面に螺旋状の模様を回したものを合成することで音波を表現している。

音波で窓ガラス破壊表現

高周波の殺人音波で窓ガラスが割れるシーンがある。

実際に割れたシーンはなく強化ガラスが割れたような細かい傷を段階的に大きくすることで段々と窓ガラスが傷ついていく様を表現している。

透明のノリのようなものを点描して傷を表現している?

トラックアクション

猛がトラックを追って荷台に飛び移るシーンがあり、その後荷台上で戦闘を行う。

スピードを落としているとはいえトラックの荷台上は結構高所なので危険なアクションだ。

またバイクで追いついた滝が運転席の戦闘員を狙うシーンがあるのだが、サドルに両足立ちで乗りながら運転席に飛び移るシーンはハラハラドキドキだ。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★★☆

高所:★★★★☆

火力:★★★☆☆

水場:☆☆☆☆☆

仕掛け:★★★☆☆

ロケ地(執筆者の調べ)

・「東京タワー」

・「NTT上菅田無線中継所」

次回予告より(第65話「怪人昆虫博士とショッカースクール」)

次回のショッカーからの刺客は怪人「カブトロング」。

カブトムシ」の特性を持った怪人だ。

カブトムシといえばその見た目、その力強さで子供たちに大人気の昆虫だ。

まさに昆虫の王者たるカブトムシが怪人となればかなりの強敵となること間違いなし。

仮面ライダーともバスの押し相撲をしており、パワーは明らかに分が悪いことがわかる。

カブトロングは世界の子供たちをショッカー員にする任務を受けており、子供たちを次々と誘拐、洗脳する。

27話「ムカデラス怪人教室」の「ジュニアショッカー」のように、再び将来のショッカー員を育てる作戦を企てる。

以前行った作戦では「優秀な子供」のみを選出しており、幹部候補育成を行っていた。

だが今回は人間の未来を担う子供たちは全員ショッカー員にしてしまえとばかりに世界中から子供を集め「ショッカースクール」で育成するようだ。

まさにショッカー界の義務教育というわけだ。

まとめ

情報は正確に伝え、正確に受け取ること。

そしてなるべく伝える人数を絞ること。

これが情報の扱い方で大事なことのように思う。

情報の発信者が正確な情報を伝えないと誤情報が伝わってしまう。

受信者が正確に情報を受け取らないといくら正確な発信をしても受信者の拡大解釈、そして受信者が別の受信者に発信する時に間違った情報を伝えてしまうことになる。

この結果一次発信者が誤解を受ける事態となる。

人数を絞るのもなるべく一次情報通り伝えようと思うと二次、三次…と多くなるほど一次情報から遠ざかり情報が錯そうしてしまうためだ。伝言ゲームが良い例だ。

今回は戦闘員による「猛は重症」という一次情報がもう間違っていたのだが、地獄大使も重症報告を正しく受け取っておらずに情報を自分で勝手に捻じ曲げ「重症=半身不随」と思い込んで次の作戦に移行する。

これにより猛が実は重症でもなく、半身不随でもなかったため、逆に作戦を阻止するための時間を与えてしまう結果となる。

このように情報は強力なものだが、正確性があっての情報であることがわかる。

現代のSNS社会の情報は嘘ではないが、正確な情報が乏しく、受けてが大量にいる中で誤解が生まれやすい仕組みとなっているように思う。

今回判明したこと

・ナオキはセミ取り名人

・猛の部屋には大きいモトクロスレースの写真が飾られている

・エミは音波探知機で怪音波の出どころを聴き分けられる

・ショッカーは報連相が苦手

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