ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。
あらすじ
神戸にショッカーの手がかりがあるというFBIの使命を受けて関西に調査に出る猛と滝。
2人は港で海外客船を見守りながら誰かを待っている。
乗客の中にひと際目立つ坊主にサングラス、白いスーツで杖をついた男が降りてくる。
そしてその後ろには黒いの帽子に髭を生やし、ブラウンジャケットでスーツケースを持った男が降りてくる。
滝とさりげなくコンタクトを取るブラウンの男はFBIの捜査官「ジョージ」。
彼はメキシコから白スーツの男をショッカー連絡係だと睨み尾行して来日した。
男はFBIの尾行に気づいており、ジョージを人気のない場所に誘導し、そして冥途の土産と言わんばかりにショッカーの目的を話しだした。
やつは日本が誇る電子工学博士「木原通俊」をショッカーの科学者グループの一員に引き入れるための作戦指揮官である怪人「アブゴメス」。
目的と正体を知ったジョージはなんとか喰いとめようとするも、抵抗虚しくアブゴメスの毒に侵され死亡してしまう。
その騒動を観光客の1人「キャシー」が目撃してしまう…
おぉジョージ…
滝のFBIの同僚がまたも日本で死す。
航空路でも殺され、航路でも殺されショッカーを追い日本に訪れた捜査官はほとんどが殺害されている。
こうなると滝だけが死なないのが不思議であり、このジンクスは日本に訪れたことではなく、滝と連絡、接触しようとしたことが原因では?と考えてしまう。
こういった職業は覚悟の上で任務にあたっているのでしょうが感傷に浸る暇もないなんて…
そうそう誰でもなれる職業ではないですね…
おぉキャスゥイー…
アブゴメスとジョージのやり取りを目撃した外人の少女「キャシー」。
怖い思いをしてかわいそうなキャシー…
そしてお母さんが英語なのに日本語がわかるキャシー…
いや…考え方によっては猛と滝は英語がわかるのでこのシーンは本当は英語だが、視聴者に分かりやすいように日本語で演技しているのかもしれない。
その証拠に猛は「キャシー」の名前をネイティブっぽく「キャスゥイー」と呼んでいる。
キャシーはとても怖い思いをしたのに今度はスナイパーライフルで狙われる。
間一髪、猛の超聴覚で察知したのか銃弾は回避した。
それにしてもお母さんが肝が据わりすぎて安心感がやばい!
子供に不安が伝染しないようにという配慮ならとんでも母さんだ!
ちなみにアブゴメスとジョージが乗ってきた船の名前が「P&O Ocean Liner Cathay(キャシー)」であり、キャシーの名前はここからきているのではと考えられる。
気まぐれ脅かし弾丸女子旅
猛と滝を驚かせるために関西旅行に出かける藤兵衛、ユリ、ヨッコ、チョコ。
おいおい!この時点で漏れてるぞ作戦情報!本当に女性はどこから噂を聞きつけてくるのか…
とまあ旅行という急遽決まった予定なのにもかかわらず、ショッカーはその動向を熟知していた。
なぜ?
猛、滝の動向であればジョージの尾行に気付いた時点で関西に2人がきている可能性を想像できる。
百歩譲って猛たちのサポートとして藤兵衛たちを呼び寄せていたならマークされていた可能性はあるが、サプライズで関西に向かう藤兵衛たちの動向をなぜ把握しているのか。
それは地獄大使が「ライダーを倒すにはそれなりの準備が必要だ」という発言の「それなりの準備」に「仲間を人質に取ること」が含まれていたため動向を探っていたのだろう。
何はともあれ4人は観光バスの休憩エリアでショッカーに捕まってしまう。
余計な行動が仮面ライダーをよりピンチに追い込んでしまった…クラブで大人しくしていないと…
最後には仮面ライダーが「ここは有馬温泉だ!ゆっくり骨休めでもなさい!」と言って4人を岩の突端に放置。
藤兵衛が「こっからどう降りるんだ!」に対しても爆笑するのみ。
これに懲りたらサプライズで任務を尾行しようなんて思わないようそこで反省しなさいというライダージョークだ!
ジョークきつすぎて博士ドン引きしてるけど(笑)
しかし猛と滝を驚かす為だけに旅行を決行、そして保護者として同行してくれる藤兵衛は器がでかい。
しかも女性陣には冗談混じりで「乗り心地は良いし!景色は良いし!ゆうことなし!と…言いたいところだけど…それが会長じゃね…」と言われる始末。
だが女性陣!年寄りだが藤兵衛以上の男性を探すのは中々難しいぞ!
よく整理するとわかるが、藤兵衛は多少昭和気質の頑固じじいで根性論者ではあるが「ちゃんと注意してくれる」し「いざという時、女子供を先に逃がそうとして盾になったりと勇敢に立ち向かう漢気がある」し「経営者としても成功している」し「よく旅行に連れていってくれる」し「夢に向かって頑張っている万年少年」だし「意外とノリも良い」と高スペック。
こんな男性周りにいるか!?藤兵衛のせいでクラブ女性陣の男性へのハードルが爆上がりして周りの男性が物足りなく見えるかも!?
全国の電波ジャック
今回のショッカーの目的は木原博士誘拐とともに、その電子工学の知識で「電波撹乱装置」を完成させること。
この装置は「あらゆる通信の妨害」を行える装置である。
これを使い通信の妨害、嘘の情報を拡散して人々を大混乱に陥れようと企んでいる。
この企み、現在(2024年)多少なりとも叶っていると思いませんか?
ショッカーが支配せずとも多種多様な情報が政府だけではなく、一個人から多数拡散され、情報真偽の取捨選択が迫られる時代。
情報の真偽、理解、伝達に一貫性がなく、常に言葉の上げ足取り合戦。
もう混乱してるんですよ。
しかし、社会は回っています。それは直ぐに情報を鵜吞みにせず、いわゆるソース(情報元)がはっきりしないと信じないという構えが浸透してきたためでしょう。
いやっ1999年前後なんて凄かったんですから!!
「ノストラダムスの大予言」で地球が滅びるっている情報というか予言をマジで信じていた時代ですからね~
私も小さかったんで割と信じてましたよ。
でも何というか達観していたというか、金持ちだけ生き残れるとかだったら「ズルい!」とかんしゃく起こしてたかもしれませんが「自分だけは嫌だけど、みんな一緒に滅びるならしゃーない」と思っていました。
苦しまずに一瞬ならしゃーない。
余談ですが、ジョージとアブゴメスが対峙した駅の階段に銀行の「オンラインキャッシュサービス」の広告がありました。
通信妨害と関係があるかはわかりませんが、この時代にオンラインキャッシュサービスなんてあったんですね!
これは今でいうクレジットとかペイサービスではなく、ATMなど銀行窓口に行かなくても預金や送金ができるサービスのことを指していると思われます。
未だにATMに慣れないご老人が窓口利用されていますが、この辺りから始まったんですね。
未然に振り込め詐欺を防げるので窓口取引も悪いことばかりじゃないですが、全員それだと…ねぇ?
ショッカーが一枚上手…だと!?
キャシーのおかげでショッカーの標的がノーベル賞候補にもなっている電子工学の権威「木原通俊」博士であることがわかった。
そのため猛と滝は木原博士が滞在している有馬温泉に先回り。
ホテル受付の変装をした滝は博士の行き先「瑞宝寺公園」を教え、公園には博士の変装をした猛が待機。
わざと猛を誘拐させ、本物の博士を保護。誘拐ついでにアジトに案内してもらおうというわけだ。
この作戦がみごとにはまり博士を保護、猛は誘拐され六甲有馬ロープウェーへ。
作戦は順調。安全な場所へ博士を送迎しようとするがなぜか目の前には戦闘員の集団が!?
なぜこちらの動きがばれたんだ!?
2人はショッカーを騙したつもりが騙されていたのだ!
アブゴメスとは別のロープウェーで運ばれる滝と博士の姿を目にした猛はその事実に驚愕!
猛の渾身の演技も虚しく滝と博士は捕まってしまう。
さらにショッカーが上手だと思ったのが猛を狭いロープウェー内に入れてしまうことで変身を封じたのだ。
上手い!と思いつつ、そういえば65話「怪人昆虫博士とショッカースクール」ではさらに天井が低く狭いバス内で変身できていたなと思い出す。
それでもあれは車内に敵がいなかったからできたことであり、今回は変身する暇も与えられずにロープウェーから突き落とされてしまう。
作戦が良すぎたため少し影が薄い怪人
今回はロケーションやアクション、作戦へのこだわりが強いため、放送時間内に怪人「アブゴメス」を深掘りするまでには至らなかったように思う。
アブゴメスはメキシコ奥地に生息し、牛を一刺しで殺すと恐れられる「毒アブ」の怪人だ。
その毒でジョージは死亡してしまう。
そしてもう1つの武器として指から放たれる弾丸がある。
この2つは遠近と使い分けができて一見相性が良いようで悪い。
本来は毒がこれほど強力なら懐に呼び込み毒攻撃を積極的にしたいところだが、弾丸による攻撃を警戒して相手が中々距離を詰めてくれない可能性がある。
その証拠にジョージの毒攻撃を最後に披露されることはなく撃破されてしまい、特性を活かしきれなかったため、普通の怪人で終わってしまった。
尺がないからしょうがない!
余談だが今回仮面ライダーはアブゴメスに「お前の仲間はショッカーが預かっている…奴らの命が惜しかったらそこを動くな!」と言われているのにめっちゃ動く!
見かねて再度「動くな!」と警告・威嚇するがめっちゃ動く!
なんで動くんだ!仲間の命が危ないじゃないか!いつもならぐぬぬって感じで大人しくするのに…
そんな思いを秘めながらも、なぜ動くのかと状況を観察した結果、1つの答えを導き出した。
それは「その場に実際に人質の姿がなかったため」だ。
そのためその脅しは自身を無力化するための嘘である可能性があることを考えると安易に行動を止めずに動き回ったほうが得策と考えたのではないだろうか?
だがショッカーは意外とこの手の嘘(ブラフ)でかく乱することはないので、視聴者目線だとやはり危ない行動である。
それか仮面ライダーの心に「ダチョウ倶楽部」を飼っていたとか(笑)
動くなよ!絶対に動くなよ!!
ストーリーの転換点と考察
仮面ライダーが不死身がゆえの敗北
今回のショッカーは頑張った!
ユリたちがサプライズ旅行しなければとか、変装作戦を見抜かれなければとか色々言いましたが、「ショッカーの抜かりのない準備」の前で結果は同じ。
キャシーから猛たちに情報漏洩したのは痛手だが、猛をおびき出すエサとして失敗を上手く利用していた。
サプライズ旅行せずとも人質として襲われていたでしょうし、変装は元々見抜かれている。
さらには変身前の状態で猛をロープウェーから突き落とすことに成功する。
これ以上ない成果だ!
それでも今回もショッカーが破れたのは仮面ライダーが「不死身」であるためだ。
高所30メートルはいくら改造人間の猛でも生身で地面に叩きつけられればひとたまりもない。
おそらくは落下の勢いで変身し、難を逃れたのではないかと考えられる。
仮面ライダー新1号のジャンプ力も25メートルなのでまあ耐久範囲といったところ。
しかし、危なかった…だがショッカーからしてみれば「これでも倒しきれないか…」という動揺も大きいでしょう。
藤兵衛たちに有馬温泉を進めていたが、高所から地面に叩きつけられ打ち身の多い猛こそ入るべきだと感じた。
これは変身を解いて骨休みだ!
今回の特撮表現の面白さ
歳の差変装
滝はFBIということもあり、戦闘員や幹部、タクシー運転手、今回のホテルのフロントなど潜入調査に必須の変装は心得ている。
猛も戦闘員の変装経験はあるが、あまり変装するイメージがない。
今回はかなり年上の木原博士の変装だが、意外にも本物と比べてもかなり完成度が高い。
フォッフォッフォみたいな髭のおじいちゃん喋りも板についている。
大迫力の六甲有馬ロープウェーアクション
変装がばれた猛はアブゴメス、戦闘員とロープウェー内で戦闘アクションを開始する。
ただでさえ高所で宙吊りにされた乗り物での大きな揺れ、それだけでも危険なアクションだ。
だが今回はロープウェーのドアまで全開にしてのアクションを繰り広げる。
ドアから落ちないように戦闘員とアクション。その後アブゴメスとの戦いで全開にされたドアから「落とされそうになるアクション」つまり、ぶら下がりアクションが行われる。
このアクションを観て危なすぎて目を覆い、涙が出そうでした。
ノンワイヤーなわけないよな…
新必殺技「ライダーニーブロック」表現
相手を空中に投げ、自らもジャンプして相手の腹部に膝蹴りをくらわす技。
投げからの位置エネルギーとジャンプの勢いが合わさった膝蹴りが腹部を襲うのは悶絶もの。
怪人の腹部には鉄製のショッカーベルトが巻かれているので、うまくいけば防御、逆にくいこめば威力アップ!
なんか下腹部がギュンってなる…痛そう…
特撮満足度(★で5段階評価)
特撮満足度
アクション:★★★★★
高所:★★★★★
火力:★★★☆☆
水場:★★☆☆☆
仕掛け:★★★★☆
ロケ地(執筆者の調べ)
・「六甲有馬ロープウェー」
・「蓬莱峡」
次回予告より(第72話「吸血モスキラス対二人ライダー」)
次回のショッカーからの刺客は怪人「モスキラス」。
「蚊」の特性を持った怪人…だそうだ。
「モス」なので「蛾」の特性かと思いました。というか今でも名前的にはそう思ってます。
「キラス」は何かな?と調べたら「軍艦巻きのように巻かれたオカラ」だったので語呂が良かったからでしょう。
蚊は夏の風物詩であるとともに毎年飽きもせずに戦いにくる「やつ」のことだ。
でも南米の蚊なので悪い菌を持っていそうで怖い。
南米から送られてきた怪人ということは…
そうです!あの男!一文字隼人が帰ってきます!
南米にショッカー殲滅のために飛び立った一文字。
おそらくモスキラスを追跡していたら日本に到着したのでしょう。
久しぶりにダブルライダーが観れます!
そして次回予告ナレーションはモスキラス自身が担当。なぜだ?番組改変期?それともナレーションの都合?それとも超ロケシリーズの企画?それとも不穏な空気を出すため?
最後の捨て台詞?は「面白いぞ~」
まとめ
情報の嘘は混乱を生む。
情報の創作は楽しい。
同じく不透明な情報なのに印象や周りに与える影響が違う。
だが楽しいはずの創作も混乱を生むこともある。
それは創作と現実をリンクさせてあたかもその危険性を真実として説くものがいること。
もちろん作品内では実際に起きた事件の危険性・悲惨さを訴える演出が組まれることもある。
そのため現実と非現実がごちゃ混ぜになった作品をまだ正常な判断が出来ない子供たちに分別しろというのは確かに無理があるし夢がない。
その証拠にライダーキックを真似する子供たちが多発したためその危険性を訴えるべく啓発している68話「死神博士 恐怖の正体?」という回もある。
だからといってそういったモラル教育を全て創作側に押し付けるのは良くない。
仮面ライダーが怪人を殴ったり、蹴ったりする様を観て「子供が真似をする」という理由で創作側にクレームを出すだけなのは子供に分別を教える機会を無くすと同義だ。
モラルを育てるには例が必要なので、上記の理由で全て自粛するようなら道徳の教科書は全部破棄しなければならない。
そういうモラルはそれぞれの家庭で教えること!
現代のモンスターペアレンツはこういった「モラルの教育も学校で教えるもので親に責任はない」というスタンスが教育現場を苦しめている。
創作でもこのように情報の混乱が起きているのにショッカーは実際の情報に真偽を混ぜ合わせるなど情報を操作することで社会を混乱の渦に巻き込もうとしている。
そういう意味だと今回のテーマは「情報」でしたね。
情報を制したショッカーが仮面ライダーを追い込み、そして情報の大切さを知るショッカーはさらに情報を操ろうとしている。
こういうのも不謹慎だが仮にショッカーが「電波撹乱装置」を完成させた場合に1970年代で考えうる情報の混乱がどのようなものか、それをどのように演出するかを見てみたかったですね。
個人的な考えですが、私は嘘の情報も割と好きだったりします。
正確にいうと「実害がない嘘」もしくは「仮説」が好きです。
例えば今までミステリーだったこと、未解決の分野、そして都市伝説、UFO、UMAなど真偽が不明、未解明なものです。
ただ最近は科学が進歩することで完全に解明されたりしてしまう謎も多くあります。
それが残念でならない!謎のままの時が一番楽しいのに真実にたどり着いてしまうと途端につまらなくなる。
解明するための仮説が議論してほしいけど、答えがほしかったわけじゃない。
ここだけ女性的な話しを聞いてほしいだけで、答えがほしいわけじゃないという非合理な考えを覗かせてしまうんですね。
自分で気付くのは良いけど人から「サンタはいないと言われたくない」みたいな心境ですね。
仮面ライダーはいるんだ!
今回判明したこと
・本郷猛は(変身込みかもしれないが)30メートルの高さから落ちても死なない
・新必殺「ライダーニーブロック」