【仮面ライダー(初代)】1話「怪奇蜘蛛男」感想・考察〈悪が生みしヒーロー〉

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年

今回から特撮ブログ「特撮ユートピア」として特撮の面白さを

特撮作品の各話感想や解説・考察を中心に執筆していきます。

各話解説なんてネタバレ!と思うかもしれない。

ですが当サイトの趣旨は特撮作品に触れたことがない方、未視聴の方には後半のストーリーを隠すという形で対応しつつ、作品の全体像を伝え興味を持ってもらうこと。

そしてすでに視聴した方にはより深く楽しめるように解説・考察をしていけたらと考えています。

私自身もそうですが、特撮作品に限らず作品を見た後に自分以外、他人の視点で作品を見た時にどのように感じているのだろうということに興味が湧きます。

思想・文化などは国によっても感じ方は大きく異なります。

それは日本国内ですら地域、環境によっても感じ方は違うと思います。

自分以外の視点、感じ方って気になりませんか?

名作であっても視聴した方々が全員名作と感じるわけではありません。

一つの作品で様々な視点が展開されます。

つたない文章ですが、このブログはそんな見どころや楽しみ方などを提供できるサイトでありたいと考えています。

みなさんよろしくお願いします。

あらすじ

トップレーサーを目指す青年「本郷猛ほんごうたけし」はトレーナーの「立花藤兵衛たちばなとうべえ」と共に大会に向けて練習に励んでいた。

彼は頭脳明晰、スポーツ万能、だが決して嫌味がない好青年だ。

しかし彼は優秀過ぎるゆえ、その能力を悪用しようとする悪の組織が現れ誘拐されてしまう。

その名も秘密結社「ショッカー」。

ショッカーは優秀な人間に改造人間手術を施し洗脳し、その戦力で世界征服を企んでいる。

青年はショッカーによる改造手術で強大な力を得るが、普通の人間ではなくなってしまう。

そんな絶望の中、ショッカーのアジトに囚われており、世間では行方不明中の恩師「緑川弘みどりかわひろし」の助けで脳の改造手術を受ける前に脱出。

普通の人間ではなくなったことに動揺する猛。

だがこれ以上犠牲を増やさないため悪の組織と戦う決意をする…

第1話「怪奇蜘蛛男」ストーリー

前半ストーリー

藤岡弘さん若っ!顔がはっきりしてるから当時からオーラが凄い

本作の主人公「本郷猛」がオートレースの師匠である「立花藤兵衛」と人気のない道路にいた。

2人はオートレースの訓練を行っており、ラップタイムを計測していた。

立花藤兵衛は「まだまだこんなものじゃ大会で通用しない」とげきをとばす。

厳しい評価だが猛のオートレーサーとしての才能を高く買っているようだ。

「次のラップは10秒はタイムを縮める」と意気込んだ猛の表情は子供のように無邪気だ。

バイクの腕は既にプロ並み!?驚愕のラップタイム

猛が目標としている大会とは恐らく現実世界の「日本選手権オートレース」のような大会ではないだろうか。

大会に向けてラップタイムの計測を行っているようだ。

実世界でもすごい記録かも!?

ストップウォッチが3.50を経過した直後に猛が藤兵衛の前を駆け抜けているのでラップタイムは恐らく3.50~3.55の間であろう。

藤兵衛はまずまずと評しているがこのタイムはどのくらいの実力なのだろうか。

日本選手権オートレースは仮面ライダーの初放送である1971年4月まで5回行われいる。

第1回~3回までは泥や土(ダート)のコース。

第4回大会より現在(2021年)の舗装されたコースを使用している。

1周あたり500mで10周する。

第4回大会のみ10周で4800mで行われたが、第5回(1970年3月24日)から現在(2021年)は共通で10周で5100mの競争タイムで行われる。

舗装されたコースになってから現在(2021年)までの優勝者の平均試走タイムが3.43。

猛が走っていたのが舗装された道路と考え、舗装されたコースである5100mルールと仮定する。

そして第5回の優勝者のタイムが3.51。

前述したラップタイムが3.50を経過した直後に猛の乗ったバイクが駆け抜けたことを考えると3.51で第5回優勝者とおおよそ同じタイムということになる。

この時点ですでに本郷猛はトップレーサー並の実力の持ち主であることがわかる。

藤兵衛がそれでもまずまずと言ったのは、猛はあくまで他のレーサーがいない状況のタイムなので実際のレースではこうはいかないであろうという意味だろう。

猛はこのタイムをさらに「10秒は縮める」と宣言する。

これを実現すると現在(2021年)までの優勝者の平均タイムが約3.43なので3.41とこれも優勝タイムに匹敵する数字となる。

こうして考察してみると藤兵衛が猛に期待するのも無理はないだろう。

しかも22歳だ。大変将来有望な若者であろう。

優秀がゆえの不運

本郷猛の行く先を阻む謎のライダー集団

もう一度ラップタイムを計測行うため走り出す猛の後方から突如謎のライダー集団が現れる。

最初は猛も自身にレースを挑もうとしてきたのだと思い闘志を燃やす。

だがしかし猛を挟み撃ちにするかのように前方に新たなライダー集団が現れた。

どうやらライダー集団の目的は猛の足止めのようだ。

バイクに乗った人間を飛び越えるほどのウィリージャンプ!既に超人

前方のライダーは迷いなく猛に突っ込んでくる!

しかし猛はバイクを止めずになんとウィリージャンプで回避!

ここでも猛の並外れたバイクの腕が垣間見えるシーンです。

この当時にレディースのバイク乗りって珍しかったのでしょうか?

猛の着地後ライダー集団は何がしたかったのか背を向け森へ走り去っていきます。

不思議に思った猛は謎のライダー集団の目的が気になり、好奇心から追跡します。

茂みの中を進むとだんだんと霧が濃くなり不気味な雰囲気が漂います。

結構ホラー要素が強く子供には怖いかも

そして次の瞬間!猛は網のようなトラップに捕まってしまい意識を失ってしまう。

この霧は不気味な雰囲気を出す演出と思ったが催眠ガスとしても表現されていたのかもしれない。

意識が薄れる中で最後に見たものは不気味に笑う3人の女性たち。

女性たちは赤いスカーフに黒いハイレグ、タイツ。

視認しずらいが顔の上半分が緑、下半分が赤くペイントされている…

謎のライダーとハイレグ女性たち。

いったい何者なのだろうか?

・・・

目が覚めると猛は暗い部屋の中に仰向けで拘束されていた。

ショッカーの雰囲気や基地が子供の時怖くて初期のライダーは大人になるまで見れませんでした

目の前には先ほどの怪しいレーディス同様、顔に緑と赤がペイントされ、エンブレムのようなものが付いた帽子を被った男たちが猛の目覚めを確認するように覗き込んでいる。

この暗い場所で顔面ペイントされた人間がドアップになる映像は子供たちにとって刺激が強そうだ。

正直私は幼少期、昭和の仮面ライダーの雰囲気が苦手でした。

なぜかというと暗く、生々しいというか生っぽいキャラクターデザイン、そして元々昆虫があまり得意ではなかったからです(昆虫は今でも苦手)。

平成の仮面ライダーはわりと画面も明るく、キャラクターデザインも生っぽさ感じさせないため幼少期はとっつきやすかったです。

目覚めた猛に語りかける声。

声は遠隔で発せられており、猛が仰向けになっている台が声に合わせて紫色に点滅する。

声の主は自分たちを「ショッカー」という組織であることを明かす。

「ショッカー」は仮面ライダーの最初の敵として立ちはだかり、仮面ライダーの敵といえばまずショッカーが思い浮かぶほど有名。

ショッカーは世界中に悪の根を張り巡らせ、世界中の人間を改造人間にし、意のままに操り世界征服を目論む悪の組織だ。

猛はショッカーに改造人間にされてしまったのだ!

なぜ猛は改造の標的になってしまったのか。

改造人間になるにも条件がある。

改造人間手術の選抜基準

・IQ600

・スポーツ万能

IQが600…

600!?

600ってノイマンや金田一少年のIQ300がだとか言われている中でその倍!!

そしてスポーツ万能であること。

この二つが改造人間の募集要項だという。

いや…脳もいじって、身体も強化人間にするのに条件がいるのだろうか?

ここでいうスポーツ万能は筋肉が優れていることではなく、身体の動かし方が上手い。

つまり運動神経のことを指しているのかもしれない。

IQ600ってショッカーじゃなくても世界がほっとかないでしょっていう人材ですね。

しかも世界中で改造人間を作り出そうとしているため被検体は複数人必要だと考えられるが、IQ600の人間がそうゴロゴロいるかよ…

IQ600もあったらエスパー的超能力も発現しそう…

才能も突出しすぎると悪いことにも利用される危険性がある。

不運にも本郷猛は悪に利用されようとしている。

本人の意識が戻ってからの耐久性テストは鬼畜…

改造人間になった事実を受け入れられない猛だったが、痛みをもって思い知らされる。

猛の身体はベルト部分に風を当て風力エネルギーの原理でパワーを発揮するように改造されており、5万ボルトの電流を流して耐久力テストを行うというのです。

一見、5万ボルトって大したことがないように思いますよね。

スタンガンでも100万ボルトあるので。

しかしそれは電圧の話し。

改造人間でなければ耐えられないほどの電気とは電流の値のほうが関係してきます。

静電気、スタンガンのように一瞬バチッなら、イタッですみます。

恐らく科学者は5万ボルトある「カミナリレベル」の電気を改造した猛の体に流し込んでいるのでしょう。

普通の人間なら黒焦げなところを改造された猛は苦しみながらも身体は無傷。

これだけでも改造人間の戦闘力の高さがわかります。

耐久テストもそこそこにショッカーは猛に更なる改造手術を施そうとします。

このままではショッカーに脳改造までされてしまい猛の自我がなくなりショッカー軍団の意のままに操られてしまう。

絶体絶命の大ピンチ!!

そこへショッカー基地の発電システムが何者かによって破壊されたと報告が入る。

犯人を捕らえるため実験場はもぬけのからとなる。

猛は無理とわかっていながら、鎖で繋がれた拘束具を解こうとする。

すると猛の思惑に反してあっさりと鎖をちぎることができた。

自身の身体に起きていることがにわかに信じられないでいると、犯人を探しに出払ったはずの実験場の入り口に何者かが立っている。

その人物は何と行方不明になっていた猛が通う城北大学の「緑川博士」だった。

なぜこんな所に緑川博士がいるのだろうか。

猛の改造人間としての性能も詳しく、おそらくは改造人間研究に関わっていたのだろう。

博士に脅威的な身体能力でショッカー基地からの脱出を促され、その言葉通りジャンプで天井を突き破り脱出に成功する。

仮面ライダー1号のジャンプ力は公式設定によると「15.3m」。

15.3mというと神戸にある鉄人28号像の全高と同じだそうです。

そのジャンプ力と鎖を引きちぎるほどのパワーがあれば、天井を突き破るなど造作もないこと。

ちなみに走力は「時速30km」で100m走だと12秒ぐらい。

ジャンプ力の割には意外と鈍足に感じますね。

正義の心を持った改造人間「仮面ライダー」の誕生

脱出に成功した猛と緑川博士は本郷猛の専用マシンであろう「サイクロン号」に乗って山道を走り抜ける。

山道はまだショッカーの敷地内であるようで茂みの中には軍団員が先回りして待ち構えている。

その中には冒頭で出てきた、普通の人間ではない異質な化物の顔をした「怪人」も潜んでいた。

その怪人は猛が最初に捕縛された蜘蛛の糸を操る「蜘蛛男」。

またしてもバイクの行く手を糸ではばまれ緑川博士を残して猛は崖下に転落してしまう。

博士は裏切りの罪で殺されそうになってしまう絶体絶命のピンチ!

っと思いきやシュピーンと何とも現実の離れした音が上の方から鳴り響く。

飛びすぎた?

そこにはマスク姿の本郷猛の姿があった。

ここで疑問なのだが崖下に落ちた猛は直接博士の元に行かず頂上まで遠回りして登場したのだ。

ヒーローの登場としては最高にかっこいいが、殺されそうな博士を前に遠回りをする余裕。

それとも頂上から助走をつけたかったのかな?

次の瞬間、頂上から回転して着地からの容赦ない殴り、チョップ、投げのコンボ。

仮面ライダーという正義の心を持った改造人間が誕生した瞬間である。

戦闘アクションが猛の元々の潜在的な運動神経の賜物かは謎だが、少なくともあの高所から着地して平気なのは間違いなく本郷猛が普通の人間ではなくなってしまった悲しき事実でもあった。

後半ストーリー(※ネタバレ有り

後半ネタバレがありますのでご注意ください

東大レベルの学校なのかな?

場面は変わり緑川博士と本郷猛が在籍している「城北大学」の正門前?から出てくる一人の女性にスポットが当てられる。

彼女の名は「緑川ルリ子」。

彼女は何かを警戒している様子で辺りを確認しながら歩を進める。

とそこに!

警戒時にこれはビビる!

突然謎の女性が・・・と思いきやそれは友人の「野原ひろみ」だった。

ひろみは元気がない友人を励ましにきたのだろう。

それもそのはず、ルリ子は失踪した緑川博士の娘なのだ。

そりゃお父さんが失踪したら娘として元気もないだろう。

しかも父親は大学の教授。

大学内に失踪の話しは出回っているはず。

なのに「元気ないのね」と声をかける友人。

愚問だろと思うのは私が性格が悪いからだろうか?

ひろみはきっとそれを知った上で最近自分の周辺を警戒しているルリ子を心配で声をかけたとなぜ思えない。

ここ数日ルリ子は何者かの視線を感じるという。

麗しの女子大生、それも1970年代という時代背景的に女性が大学に通うのはまだ珍しい時代だったのではないか。

IQ600の猛が通う学校である。

ルリ子もひろみも相当優秀であるのだろう。

それほどのお嬢様であればストーカーの心配もあるだろう。

しかし、それは単なるストーカーではない様子だ。

なんだかおかしなトランシーバーで連絡をとる男。

そしてその通信相手はなんと猛と緑川博士を襲った蜘蛛男。

ショッカーだ・・・

緑川博士の裏切りにより、ついに家族にもショッカーの魔の手が迫っていた。

これは女性ならこぇ~な

そしてショッカーの手先と思わしき男たちに取り囲まれる二人。

マスター交友広いな

そこに一台の車が!

さらわれる!と思いきや、運転手は猛の師匠である立花藤兵衛であった。

ルリ子たちは藤兵衛を知っているようだ。

藤兵衛は本郷猛の師匠であると同時にルリ子たちのバイト先のBARのマスターだったのだ。

藤兵衛が車で通りかかると何故か怪しい男たちは消えていた。

「大人をからかうもんじゃないよ」と藤兵衛はいいますが、結構人数いたのに1人も見ていないというのは、前方不注意か、もの凄く男たちの隠れるスピードが速いかです。

二人は藤兵衛の車に乗り込む。

すかさず藤兵衛はルリ子に父親である緑川博士の居場所が判明したことを伝える。

その後、藤兵衛とルリ子だけBARの前で降り、ひろみが運転する車が発車していった。

なんでひろみ1人で藤兵衛の車で出発するの?

BARに入るとそこにはショッカー軍団が現れて藤兵衛とルリ子を襲う。

ショッカー軍団の狙いは恐らくルリ子だろう。

しかし、ルリ子と思われる女性はルリ子に変装したひろみだった。

藤兵衛は最初からショッカーに尾行されていることを知っていて囮作戦を行なっていたのだ。

一方本物のルリ子はひろみに変装して車を走らせていた。

向かう先は「戸浦埠頭(とうらふとう)50号倉庫」。

実は私、虫も苦手…蜘蛛は虫じゃないけど

だが、車には盗聴器が仕掛けられていたため、ルリ子の行き先が蜘蛛男にばれてしまう。

蜘蛛男の盗聴器が蜘蛛型ってベタだな(分かりやすい)・・・

それにしても窓ガラス越しにルリ子の呟きを聞き取れるなんて!

盗聴器高性能だな・・・それとも蜘蛛男は改造人間なので耳が常人より良いからなのかな?

ひろみがルリ子に変装したのはばれなかったのに行き先はばれてしまった。

変装はアイコンタクトでやり取りしたからばれなかったのかな?

なんにせよルリ子の行き先が蜘蛛男に筒抜けだ。

急げルリ子!

明かされる真実、捻じ曲がる真実

「戸浦埠頭(とうらふとう)50号倉庫」に潜伏する猛と緑川博士。

そこで博士はショッカー研究協力していたことを告白する。

ショッカーに協力しなければ家族に危害を加えると脅されており、研究のため行方不明となっていたのだ。

家族を人質にとられていたのだ。

ルリ子たちが襲われたのは緑川博士の脱走による裏切りの制裁を実行したからである。

自らの行いに懺悔する博士を励まし世界のために戦う決意をする猛。

自分が改造人間になってしまって、その原因となった博士が目の前にいるのに博士の立場に理解を示し逆に励ませるのは凄い。

まるで絵に描いたような主人公像。

弱きを助け、悪しきを挫く。

猛はなぜこんなことが言えるんだ…

その精神力も含めて不幸にも改造人間の手術対象に選ばれてしまったのだろう。

辛うじて洗脳手術を逃れた猛は心は悪に染まっておらず、正に心技体を兼ね備えた圧倒的なヒーローの素質を手に入れた。

しかし、博士を落ち着かせようと水を入れようとする猛は改造人間の力が上手く制御できずに蛇口を破壊してしまう。

力を上手く制御できない身体で洗脳までされていたらどれ程の人々を傷つけていたか。

見た目は人間でも中身はまるで遊星人(宇宙人)として人間に見られるであろうこと。

そんな複雑な思いが猛の表情から感じられる。

さすがの猛も改造されたという実感と不安が湧いてきたのか博士に「自分は二度と人間には戻れないのか」と問い詰める。

博士はただ「すまない」という他なかった。

その言葉は本郷猛が二度と普通の人間には戻れないことを表していた。

そして博士は協力者(手術対象)として猛を推薦したことも告白する。

この「協力者」という表現が博士の罪深いところだと感じた。

協力者というと「合意を得た」という感じだが、明らかに非合意で行われた改造手術であったためだ。

さすがの猛も声を荒げてショックを隠せないようだ。

それでも猛は自身を納得させようと緑川博士と立花藤兵衛という理解者の存在がいる、独りではないと自分に言い聞かせる。

ショックを受け、博士に背を向ける猛。

その様子を倉庫に到着したルリ子は父親が誰かと言い争いをしているところとして目撃する。

その隙を突かれ博士は蜘蛛男の糸で首を絞められてしまう。

それに気づいた猛は糸を引きちぎろうとするも複雑に絡み合った糸は改造人間となった猛のパワーでもなかなかちぎれないほどの強度だった。

この「糸を引きちぎる動作」がルリ子にはまるで「本郷猛が父親(緑川博士)の首を締め上げている」という風に見えてしまう。

そしてとどめに蜘蛛男はダーツ(注射?針?)のようなもので博士を溶解させて跡形もなく消し去ってしまう。

博士に命中したため、とどめに見えるが、既に首絞めで瀕死状態の者にその必要性は薄く、博士に駆け寄る猛を狙った可能性が高い。

咄嗟にルリ子を庇うために回避したため博士に命中してしまったのだろう。

見えない敵の攻撃を瞬時に回避する。

これも改造人間の能力がなせる技なのだろうか。

ルリ子は突然の父の死に混乱状態となる。

父を殺そうとしていた者が娘である自分を庇おうとする。

父の死と猛の行動の矛盾。

この2つがさらにルリ子を混乱させる。

落ち着いて考えれば、庇おうとしたということは「本郷猛以外の何者から攻撃を受けた」つまり「父親を殺そうとした人物は本郷猛ではない」となるだろう。

しかし、あいにく倉庫は暗く、攻撃者が猛の味方か敵かも不明。

そして父の死による悲しみと怒りを誰かにぶつけたい。

その矛先が現時点で一番怪しい人物である猛にぶつけるしかなかったのであろう。

必死に弁解する猛の言葉も感情的になっているルリ子には届かず人殺し扱いとなってしまう。

それでも猛が味方であることは藤兵衛に証言してもらえば疑いも晴れる。

そうなっては不都合、そして父親の殺害現場も見られてしまったため生かしておけないと思ったのだろう。

蜘蛛男はルリ子を連れ去ってしまう。

ここで蜘蛛男の姿を見れば猛の疑いも晴れると思いきや。

ルリ子はしっかり気絶している。

連れ去られる際に口元も見えなかったので睡眠薬をかがされた描写もなく、若干ご都合主義に見えたが蜘蛛男がなんかの針で眠らせたことにしよう…そうしよう!

そしてトラックに飛び移り蜘蛛男は逃走する。

悲しき孤高のダークヒーロー

ここからが今回最大の見どころ。

仮面ライダーの初登場は先ほどの博士との逃走中だったが、変身の過程がわかる「変身シーン」はここからが初めて。

逃走する蜘蛛男をバイクで追う猛。

走行中に猛はバイクをウィリーさせながらハンドルのスイッチを入れるとバイクが仮面ライダー仕様に変形。

走行中の風を受けてベルトの風車が回転して仮面ライダーへ変身。

そして仮面のCアイ(キャットアイ)が光る。バッタなのにキャットアイなんだ…夜目がきくってことかな?

やっぱ変身中「最後に目が光る」演出はカッコイイ!

目が光り変身終了のピリオドをうつように光る演出は本当にたまらん。

蜘蛛男に追いついた仮面ライダー。

このシーンは静止画でも凄く映えるシーン。

ショッカー戦闘員が奥に大勢いるなかで手前に仮面ライダーが1人。

これからショッカーという巨大な組織にたった1人で立ち向かう。

決意と絶望そして希望の背中。

そう感じたシーンです。

円の陣形で囲まれた仮面ライダー。

次々と襲い来る戦闘員をバッタバッタと倒していく。

このシーンでは改造人間の力が戦闘員が束になっても歯が立たない力であることがわかります。

戦闘員を蹴散らしついに蜘蛛男と崖で一騎打ち。

よく刑事もので犯人を追い詰めた時の演出で使用される海の崖ではありませんが、工場地帯?の崖での決戦。

奥に見える煙突から黒い煙が出てるのが高度経済成長期っぽいですね。

公害とか凄そう。

1971年はイタイイタイ病裁判など公害が社会問題として大きく認知された年でもあります。

そういう意味では人類のやりすぎた環境汚染が様々な生き物として怪人化し、社会に牙を剥けたのかもしれません。

蜘蛛男との戦いは崖ギリギリのアクションで命懸けの撮影だったでしょう。

地面もゴツゴツした整地されていない岩場なので凄く痛そう。

整地されていない場所は不利と感じたのか蜘蛛男は整備された道路へ向かって触手を伸ばし壁を登っていく(そこ蜘蛛の糸じゃないんだ…)。

ここで仮面ライダーは蜘蛛男が触手で登る壁をジャンプで跳び越えてしまいます。

さすがジャンプ力が神戸の鉄人28号の全高なだけありますね。

そしてそれに動揺したのか蜘蛛男は怯み一方的に仮面ライダーのプロレス技が炸裂。

そして明言はしてませんがここで初の回転からの「ライダーキック」!!

蜘蛛男は泡となり消滅。

この泡の演出は蜘蛛男の針で刺された生き物が溶解される表現かと思いましたが、蜘蛛男が消滅するシーンでも使用されていましたね。

ライダーキックでドーンと爆発ではないなどまだ演出が固まっていなさそうなのが初期っぽいですね。

ルリ子の気絶の仕方が凄い!

こんな棒みたいにピンっと気絶するかい!

もっと腰がだらんと下に…

そうそうこんな感じ。

戦闘員、蜘蛛男を倒したが、ショッカーという世界征服を企む謎の組織は壊滅できていない。

ショッカーの内部を知っているであろう緑川博士を失い、その娘ルリ子には父親殺しの疑いをかけられてしまう。

現段階でショッカーに対抗できる手段は改造人間である仮面ライダー本郷猛のみ。

孤高の存在であるがゆえにショッカーと戦う使命を背負うことになってしまった本郷猛。

ショッカーは人類にとって、仮面ライダーにとってどれほどの脅威なのか。

ショッカーの兵器として改造された青年がショッカーの脅威として立ちはだかり人類の希望となる。

正にダークヒーローの誕生である。

ストーリーの転換点と考察

仮面ライダーの誕生

シリーズ通しても、これが一番の転換点でしょう。

レーサーを目指した青年の未来、地球の未来、そして仮面ライダーシリーズの原点。

優秀がゆえに地球の未来を背負わされ戦う。

ルリ子との誤解。敵の改造によりパワーアップした改造人間。

ヒーローとは言い難いダークヒーローな出だし。

仮面ライダーの存在は人類の正義となりうるのか。

己が貫く正義は周囲に理解されないこともある。

他人の正義は他人の悪になりえることもあるからだ。

果たして人類にとって仮面ライダーはどんな「存在」となるのか。

博士の死

博士の死は本郷猛、ショッカー軍団にとってかなり痛手となる。

本郷猛の改造された身体、立場を一番理解しているのは緑川博士。

今後のサポートや理解者として欠かせなかっただろう。

ショッカー軍団としても強力な改造人間を生み出す頭脳を失ったのは痛手だろう。

この出来事で猛はルリ子に父親殺しの犯人と誤解されてしまうことになる。

今回の特撮表現の面白さ

消失表現

蜘蛛男による生物を溶解?してしまう針の演出

今回登場の主力怪人「蜘蛛男」が繰り出す「針」の攻撃は緑川博士やショッカー戦闘員を葬った。

針が命中したものは骨まで溶解してしまい、その場から跡形もなく消滅してしまう。

消滅する演出が人間のレントゲンのようなものを使用して外皮が溶解した演出を行い。

その後おそらく板の穴から泡を出して物体の溶解した跡?を表現。

そして泡を逆再生することで穴に吸い込まれることで泡が消える=物体が消滅していることを表現しているシーンが面白い。

第1話の裏話

仮面ライダー放送開始当日「本郷猛」役の「藤岡弘」氏は病院のベットの上で第1話を視聴していたという。

理由は仮面ライダーの撮影中の大怪我のためである。

変身後のアクションを担当する「スーツアクター」は変身前と変身後で違う人が演じることが多いが仮面ライダー1号は藤岡弘氏(本郷猛)本人が演じていたこともあり、その過酷な撮影とアクションにより怪我をしたためだ。

アクションものに怪我はある程度付き物だが、俳優人生を左右するほどの怪我だったため、後のインタビューで「命をかけて作っていた」と語られた。

次回予告より(第2話「恐怖の蝙蝠男」)

次回のショッカーからの刺客はウィルスをまき散らす「怪人蝙蝠(コウモリ)男」。

2019年12月頃から流行り出した某ウィルスも発生源がコウモリじゃないかと噂されたりもしました。

コウモリは特殊な免疫力を持っているため、コウモリの特殊な免疫に適応したウイルスが人に感染し、致死性の高い病気を引き起こす可能性がある危険な動物です。

2話目にして力技ではなく野生動物が可能にする能力を発揮してじわじわと人類に襲い来るショッカー軍団。

見えない敵「ウィルス」とどのように戦うのか、そしてルリ子の猛に対する疑いは晴れるのか。

まとめ

今回判明したこと

・本郷猛のバイクレースの腕はトップレーサー級

・仮面ライダー(改造人間)に選ばれるにはIQ600でスポーツ万能でなければならない

・ショッカーは世界征服を企む組織

・仮面ライダーは風力エネルギーでパワーを発揮する

・仮面ライダーに5万ボルトのカミナリは効かないが痛い

・仮面ライダーのジャンプ力は鉄人28号の全高

・緑川博士の娘は本郷猛が通う城北大学の「緑川ルリ子」

・立花藤兵衛はバイクの師匠でもありながらBARのマスター

・本郷猛をショッカーに推薦したのは緑川博士

・緑川博士死す

・ルリ子、父殺しを本郷猛と勘違いする

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