【仮面ライダー】69話「怪人ギラーコオロギ せまる死のツメ」感想・考察(ネタバレ有) 環境の世代間ギャップ

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年

あらすじ

殺人音波」と「死の赤いツメ」を持つ怪人「ギラーコオロギ」。

殺人音波は仮面ライダーの模型を破壊するほど威力は充分。

赤いツメに刺されたものは相手も赤いツメを生やし、他者に襲い掛かる狂人となる。

これを繰り返すことでネズミ算式に赤いツメを生やした狂人が増えていくというわけだ。

ライダー対策、そして人間を手駒にする準備は万全。

その頃、猛は「小川自然科学研究所」にて大学の先輩で昆虫学者の「小川信二おがわしんじ」から「コオロギ」について談笑していた…

使い物にならなくなった戦闘員とは

ショッカーはギラーコオロギの「赤いツメ」の実験台として「使い物にならなくなった戦闘員」を使用する。

この「使い物にならなくなった戦闘員」とはどんな戦闘員のことだろうか?

能力の低い戦闘員」という意味ならわからないでもないが、使い物にならなくなった=戦闘員は消耗品という一面があることになる。

確かに幹部付の戦闘員ではなく、例えば肉体の過重労働などに従事している戦闘員であれば直ぐに疲弊し、ショッカーでいうところの使い物にならなくなったという状態に陥りやすいだろう。

ショッカーにも配属される部署によってホワイトやブラックもあるようだ。

コオロギを見たことがない子供たち

猛は大学の先輩で昆虫学者である「小川信二おがわしんじ」が所長を務める「小川自然科学研究所」で研究について談笑していた。

小川博士いわく最近(1970年代)はコオロギも見たことがない子供たちが多いという。

これ私にとって意外でしたね。

現代っ子(2024年現在)の傾向であればあまり外で遊ばない、それどころか自然に触れ合う機会すら持たない子供たちが増えているので納得ができる。

だが1970年代といったら今のような屋内の娯楽は少なく、娯楽を楽しむには外出や遠出しなければならず、子供の遊びと言えば外遊びが主流だっただろう。

高度経済成長期なので少しは玩具や漫画などの娯楽が増えてきている時代ですが、コオロギも見たことがないほどだったかなと現代っ子の私でも思います。

ではこの時代(1970年代)の人たちに「最近の子供は外で遊ばない!ゲームばかりで!外で遊びなさい!」と言っても、「おめーらコオロギも見たことない世代に外遊びの何たるかを語れんのかよ!」と言われてしまうじゃないですか!

いや…こんなこと言う子供かわいくないな…

まあ驚きですよね!常用漢字があるように昔の子供たちは常用昆虫とか常用食べられる植物のようにポピュラーなものは知っているものだと思ってました。

ちなみに私はコオロギを生で見たことはない…と思います。

鳴き声は夜になると聞こえることもあったので聞いたことはありますが、姿見は正直生で見かけたかはちょっと怪しいかも…

コオロギが地球から減少しているのであれば見たことない理由も明白なのですが、現代では食糧危機には「コオロギ食」をなんて言っているので、むしろ食糧危機の代替えとなるほど数が多い、もしくは養殖できるということになる。

この現状には猛も「今の子供たちはかわいそうだ」と嘆くほど。

なぜかわいそうなのか?見ようと思えば見れる状況ならかわいそとは言わないだろう。

この言葉をそのまま受け取るなら猛は見たくても見れない環境にかわいそうと言っているのだと思う。

このセリフには原作者である「石ノ森章太郎」氏が作品で問題提起している高度経済成長期の環境問題や都市化、工業化による公害、森林破壊よる緑の減少など自然を感じにくい環境、それにより生態系が崩れていることへの疑念の意味がこもっているように感じた。

1970年代の自然がまだ残った環境ですら問題提起されている環境問題。

現代っ子の私から言わせてもらうと「その時代で緑少ないなら現代は緑ないよ」と伝えざる負えない。

ただ作品内の所々で工業地帯が見え、煙でモクモクして空気がゴミゴミしている様子は現代より環境に悪そうという風には見える。

学生時代やりましたよ…公害問題…「水俣病」、「イタイイタイ病」とか…非常に痛ましい問題だったので心に残っています。

1971年は環境問題の深刻化により日本に「環境省」が発足された年でもあるので環境問題に国を挙げて疑問を持ち取り組もうという空気があったのでしょう。

その意味を感じ取れた子供たちにとってはこの上ない道徳的な作品であったことでしょう。

また子供の時には分かりにくい作品だからこそ大人になって視聴した時に深く考えさせられる作品となり長い間愛される作品なのかもしれない。

その時代の若年層が見たがことない、もしくは今までは生息していた生物がいなくなるということは、その生物が住めない程の環境汚染、水質汚染が行われているということ。

○○の生物がいるということは綺麗な土地なんだとわかるように、猛はその環境を今(1970年代)の子供たちに残せなかったことを憂いているのかもしれない。

死の爪は生き返りの爪?

ギラーコオロギの武器である「赤いツメ」。

このツメには毒があり、刺された人間は同じ効果を持った赤いツメが生えてくる。

ただここで疑問が湧いてくる。

このツメに刺されるとと書いたが正確に書くと「赤いツメに刺されたものは同じ赤いツメを生やして生き返る」らしい。

つまり一度死んでから赤いツメが生えて生き返るということのようだ。

このツメで滝を含めて小川博士の研究所に集まった子供たちは全員この毒に侵されている。

ということはみな一度死んでから生き返っているということになる。

これよくよく考えると怖い…このツメ死体に刺したら生き返るのか気になる…

ツメに刺された人の寿命は3日であるため、どちらにせよ死体を生き返らせられても寿命は3日しかない。

だがギラーコオロギを倒すと3日寿命の効果も消える。そうなると死体は生き返る?それとも蘇生の効果も消える?

そうなると一度死んでツメを生やすという効果が矛盾を起こしてしまう。

赤いツメに刺された人々が効果消失後生き返るのはおかしい…

なぜなら死ぬのはツメの殺傷力であってツメの効果じゃないからである。

いや死ぬというのも効果の範囲内?そう考えると刺される前の状態に戻ることが赤いツメの効果が切れるということか…

それであるならば死体は効果消滅後はやはり死体に戻るということか…

結論、ギラーコオロギを撃破すると赤いツメに刺される前の状態に戻る!

強力ゆえの誤算

2種の技を持った怪人「ギラーコオロギ」。

1つは64話「怪人セミミンガ みな殺しのうた!」で「セミミンガ」が使用していた「殺人音波」。

殺人音波は仮面ライダー新1号を撤退に追い込み、常人や戦闘員程度の改造人間であれば命中しただけで破裂するほど強力な技だ。

そしてもう1つはギラーコオロギ固有の技が「赤いツメ」だ。

この技は固有と書きつつ、赤いツメの毒に感染した生物であれば同じ効果を持った赤いツメが生えるので使用が可能になる。

ギラーコオロギと違うのは感染者は3日で死に至るということだ。

さて…こんなにも強いギラーコオロギだが1つ欠点がある。

それは能力が強力すぎるということだ。

特に殺人音波はセミミンガ同様、周りを巻き込むほど広範囲に効果がある。

そのため戦闘員を退散させ、仮面ライダーと一騎打ちを申し出たのも強力な殺人音波で戦闘員を巻き込み殺してしまうからだ。

なるほど!と思いつついざ殺人音波を発したところ戦闘員たちが苦しむ。

どうやら退散させる前に仮面ライダーと戦い倒れていた戦闘員が気絶していたのか次々と音波に苦しみ起き上がってきたのだ。

苦しむ戦闘員はギラーコオロギの周りをうろちょろするあまり戦闘に集中できなくなる。

しかし、仮面ライダーも苦しんでいる以上、仕留めるために途中で音波は止められない。

万事休す仮面ライダー!だがあとひと押しというところで苦しむ戦闘員がちょうど仮面ライダーと重なり盾となる。

そして戦闘員が音波で破裂した隙に仮面ライダーは逃走に成功。

このシーンのやり取りはポンコツすぎてギャグの連鎖反応のようなシーンでした。

コントのようなギラーコオロギとの戦闘

殺人音波で仮面ライダーを追い込む

→気絶していた戦闘員が音波で苦しむ

→どいてろ!押しのけるがその際に顔を戦闘員の集団に向けてしまい殺人音波をもろに喰らった戦闘員は破裂

→ギラーコオロギは「しまった」と発言

→再度仮面ライダーに音波を向けるも仮面ライダーの前に苦しむ戦闘員が偶然盾になるように横切る→破裂した煙幕で逃走を許す

→まぬけな戦闘員たちめ!と怒り狂うギラーコオロギ

吉本新喜劇のBGMに差し替えると面白そうだと思いました。

柔で剛を制す

洗脳された小川博士はギラーコオロギの赤いツメの解毒剤があると猛に嘘をつき、アジトの一室におびき寄せ監禁する。

その部屋はショッカーが開発した特殊な「吸収マット」で覆われており、衝撃を全て吸収してしまい力技では壁を破壊することができない脱出不能の部屋となっている。

パンチ、キックなどは当然ダメ、吸収マットで覆われていない天井を攻撃しようにも踏ん張る力も吸収されジャンプもできない。

これは今までの対抗策が目には目を歯には歯をパワーにはパワーをなショッカーにしては素材も含めて柔らかい発想が光る作戦だ。

無理にぶつかり合うことはない。じっくり…じっくり…追い込んでいく。

そして天井からはギラーコオロギによる殺人音波の雨。

その横で見下す地獄大使はさぞ楽しかったであろう。

アレさえなければ…

ストーリーの転換点と考察

ナオキの遅刻

ナオキの寝坊でミツルと共に小川博士の昆虫採取教室に遅刻する2人。

そのおかげで部屋に監禁されギラーコオロギに襲われた子供たちを外から目撃。

猛に通報することができた。

遅刻したおかげ、早く到着したおかげで運よく難を逃れることってありますよね。

部下(戦闘員)を連れて来たこと

ギラーコオロギは最初から自身の殺人音波が戦闘員を巻き込むことを理解しており、早々に仮面ライダーの前から退散させている。

だがそもそも最初から連れてこなければ音波の影響も気にする必要はなかった。

まあまさか気絶している戦闘員を起こしてしまうほど音波が強力だとは思わなかったのでしょう。

たまたま音波によるもがきで仮面ライダーの盾となる戦闘員もいたため運も悪かった…

鉄窓を作ってしまったこと

洗脳状態の小川博士に騙されて監禁される猛。

そこは部屋全体が特殊な吸収マットで覆われており、仮面ライダーのあらゆる技を吸収し、破壊、そして脱出不可能な絶対牢獄に…思えました。

ただ1つミスがありました。

それは牢屋の「鉄窓」をマットで塞いでいなかったことだ。

仮面ライダーはこの鉄窓の鉄格子にスカーフを巻き付けて固定し、その踏ん張りで新技「スクリューキック」を放ち天井の壁を破壊し脱出に成功。

鉄窓は陽の光や空気を入れるためのもので仮面ライダーを撃破するという目的ならむしろ塞いでおくべきだった。

そうなれば空気がないので変身ができず餓死、窒息死させることができ、ギラーコオロギが天窓から殺人音波で攻撃する必要もなかっただろう。

撃破を早めたいなら「アンドロガス」を使用するのも手だ。

やりようはいくらでもあったのに殺人音波で止めを刺すことにこだわってしまったことが敗因だ。

教訓として故人となった死神博士の残した言葉通り「本郷と戦うにはただ一度のミスも許されん」を地獄大使は身をもって体験しただろう。

死神博士は心得ていたが、地獄大使は追い詰めるとまだ油断する節がある。

また地道に復習して復讐するしましょう!

今回の特撮表現の面白さ

殺人音波の実験の際に使用された実験対象

殺人音波の実験対象として十字架に張り付けられた仮面ライダーの模型…

というにはかなり精巧な模型を用意したショッカー。

そのため本物の仮面ライダーで実験するの!?それって実験じゃなくて実践じゃない!?と思ってしまいました。

当然これだけ精巧な模型という設定上、本物のスーツを使っているようです。

スーツの中に詰め物をして内側に火薬を仕込んでいるようで、殺人音波の威力を表現するためにスーツごと爆破するということにこだわりというか狂気を感じます。

スーツ予備あんのかな…と

十字架の周りにも火薬が仕込んでおり派手に爆発した後に激しく燃えています。

このスーツの末路はどうなったのか気になります。

派手な演出の割に吹っ飛んだマスクが転がる効果音が「ゴロゴロ」とか「ガシャガシャ」ではなく「コロコロ」とかわいい音なのが弱い!そこはこだわらんのかい!

吸収マット部屋表現

ショッカーアジトのセットをスポンジで覆い、「吸収マットで覆われた部屋」を表現している。

パワーが吸収された時の「ブユ~ン」みたいな音が材質の浮き沈みと破壊できない不安感を表した良い効果音だった。

新技「スクリューキック」表現

高所にヒモを固定してそのヒモに掴まりながら回転しつつライダーキックに移行することで「スクリューキック」を表現している。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★★☆

高所:★★★☆☆

火力:★★★☆☆

水場:☆☆☆☆☆

仕掛け:★★★★☆

ロケ地(執筆者の調べ)

・「不明」

次回予告より(第70話「怪人エレキボタル 火の玉攻撃!!」)

次回のショッカーからの刺客は怪人「エレキボタル」。

ホタル」の特性を持った怪人だ。

「真っ赤に燃える火の玉の群れ」という予告ナレーション通り「ホタル」という名前は発光する時に「火(ホ)を垂(ル)」ように見える様からこのように呼ばれています。

発光のメカニズムは火ではないが、そう見える様を今回のエレキボタルの特性として取り入れているようです。

だが「エレキ」とあるように電気と炎を両方操ることのできる怪人ではないかと予想できます。

エレキボタルの火の玉の群れは発光すると瞬間に人間が燃え尽きてしまうほど強力な熱量だ。

立花レーシングクラブの面々も一様に洗脳されてしまい、反抗しようものなら人質してエレキボタルの発光で燃やされてしまうかもしれない。

どう戦う!?仮面ライダー!

まとめ

いくら作品を通して訴えても伝わらないことがある。

それはあくまでフィクションの話しであって現実に起きる事ではない。

観客は現実から離れる為に作品を観るのだからフィクションを求めているのであって現実的な話しは説教くさいだけだ。

そう思う人も多数いるでしょう。

仮に社会問題を訴えようにも作品として面白くなければ広まらない。

それであれば○○問題のPR動画として配信したほうがまだ視聴されるだろう。

ではなぜ作品で社会問題を訴えるのか。

それは○○問題に興味関心がない人々に訴えたいからだ。

上記のようにPR動画だとそもそも関心がある人にしか届かない。

それではあまり問題を社会全体で共有できない。

今回の話しはそれがセリフとしてハッキリ明言された回でした。

今までは察してよというような演出で訴える手法が多かったように思いますが、それではピンとこない人にはピンとこないでしょう。

そこへ今回は言葉でセリフでハッキリと伝えることで視聴者(私にも)ダイレクトに伝わったと思います。

社会問題もそうですが、今回の最後のナレーション「しかし、ショッカーは新しい怪人は次々に君たちの街を狙っている」というようにSFだけど現実の延長線上にある問題であることを視聴者に示唆している。

問題は解決するごとに新たな問題が浮上する。

だからといって問題を放置すると自らも被害にあう未来が待っている可能性がある。

仮面ライダーのように1つ1つ解決していこう。安寧の日まで!

今回判明したこと

・ショッカーには「使い物にならなくなった戦闘員」という存在がいる

・猛の大学の先輩には昆虫学者の「小川信二」がいる

・1970年代の仮面ライダーの世界ではコオロギを見たことない子供が多い

・ショッカーは全ての力を吸収してしまう「吸収マット」を開発

・仮面ライダーの新技「スクリューキック」

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