【仮面ライダー】63話「怪人サイギャング 死のオートレース」感想・考察(ネタバレ有) 二兎を諦めず負うものは二兎得る

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年

あらすじ

明日に控えた「東日本ロードレース選手権」に出場するため最終調整を行う猛と滝。

調整は上々で2人とも優勝を狙えるタイムを叩き出す。

だが彼らには今大会最大のライバル「勝丸功かつまるいさお」という存在がいる。

優秀なレーサーであり猛たちの友人である功は足に障害がある弟「勝丸タダシ」がいる。

優勝してアメリカ行のキップを手に入れ、弟の足を完治させたい功は死に物狂いで勝ちにくることだろう。

一方その頃ショッカーはアフリカ支部から派遣される新怪人「サイギャング」の到着を待っていた。

サイギャングは道路を警備員の制止を無視してバイクで200キロものスピードで走り抜ける。

アジトに到着したサイギャングは早速、死神博士から任務を与えられる。

功も大会に向けて最終調整を行っていた。

そこへモーター通信の記者が取材に訪れる。

取材に応じる功だがその正体はサイギャングだった。

サイギャングは功を誘拐、死神博士の催眠で洗脳し猛を抹殺する計画を企んでいたのだ。

この大会、ひと波乱ありそうだ…

大会前日、当日と2日連続の強襲

世界グランプリレース」に向けて活動再開した本郷猛と滝和也。

しかし、事件は大会前日から発生する。

ショッカーは猛たちの友人でありライバルの「勝丸功」を催眠術にかけ接触させることで猛たちを油断させ罠にハメようと企む。

大会前日は功は猛をバイクの併走に誘い、作戦位置に誘導。催涙爆弾で視力を奪ったところをサイギャングが襲い掛かる。

50話「怪人カメストーンの殺人オーロラ計画」で一文字は視力を奪われながらも超聴覚の耳を頼りに戦闘をこなすが猛はその訓練を行っていないため敵の位置が分からず苦戦を強いられる。

変身する間もなく崖から落とされてしまう猛だがサイギャングが死体確認を怠り追撃をまぬがれる。

そりゃ視力を失い崖近くで変身!とう!なんてやったら飛んだ先が崖下なんて可能性があるから安易に変身はできない。

ジャンプして風力エネルギーを受けなくてはならないということがここで弱点となろうとは…

だが生身で崖から落ちるよりかは安全だとは思うので変身しても良かったかも。

そして大会当日。今回猛たちが参加するレース「東日本ロードレース選手権」は東伊豆を一周ラリーとする長距離レース。

またショッカーの強襲があるかもしれない。警戒しながらもレースはスタートする。

レース早々に先頭集団を離れ猛と功の優勝候補が一騎打ちとなる。

だが功は前日に「正々堂々と戦おうぜ」と宣言した割には猛をガードレールに接触させようとしているような危険な走行をする。

レースのモラルに反している走行に猛は注意を訴えるが功は聞く耳を持たない。

そうこうしている内に功はコースを外れ横道にそれる。

そのままコースを走れば良いのに猛も功を追って横道にそれる。

停車した功はナイフで猛に襲い掛かる。

功の気が狂った行動に焦りを見せる猛の目の前にショッカーが現れる。

時間ロスが気になる猛は変身して速攻戦闘員を仕留める。

速攻立ち食いそば食って仕事に戻るというノリで戦闘員を蹴散らす仮面ライダーには歴戦の余裕を感じる。

やっとレーシングクラブらしい活動をする

レーシングクラブの真の目的というと大げさだが今まで脇道に逸れてきた感はある。

クラブの真の目的は「レーサーの育成」。

今まではダンスクラブ、若者のたまり場、たまにツーリングなどそもそもクラブ会員のほとんどが女性で男性は猛、滝、一文字、五郎だけである。

猛、滝、一文字に至っては別にクラブメンバーでなくても勝手に練習する生粋のレーサーだ。

五郎はまだバイクに乗れる年齢ではないので新規男性会員は実質0に等しい。

藤兵衛の狙いは上記レーサー以外も育成することが目的だったのだろが当てが外れていた。

猛もしばらく海外で活動していたためやっと本来の活動がスタートできそうだ。

今回は女性陣もピットで待機し給油などレースをサポートする役割を担っており、珍しくレーシングクラブっぽい活動をしている。

それに前回、あんな怖い目にあったにもかかわらず五郎の友人「ナオキ」と「ミツル」はクラブに入会したようで応援にかけつけていた。

やはり子供は単純で危険よりも仮面ライダーに会えることをとったか…

それよりも猛と滝の2大兄ちゃんの出場大会にもかかわらず肝心の五郎がいないのが奇妙な回だった。

出張幹部

死神博士は日本に残り再び打倒仮面ライダーに向けて動いているのかと思いきや…

アフリカ支部から送られるサイギャングより「一足先」に日本を訪れている。

つまり出張組だ。いちいちアンデスに帰っては出張で来日しているのか…

年寄りに長旅はちとキツイので赴任してくれば良いのに…

それとも日本も壊滅させられすぎて日本支部は設備が足りないのかもしれない。

確かにアジトを作っては壊されたら資金が潤沢でも建設時間が足りなくなってくる。

本国に戻り設備を使い改造人間を生み出してから死神博士は来日、改造人間は輸送機でも持ち込むという別ルートなのかもしれない。

今回は地獄大使との両面作戦ではなく単独作戦。

得意の催眠術で功を操り、レースに混乱をもたらす。

突進しないサイ

サイ」の特性を持った怪人「サイギャング」。

200キロのスピードでバイクを飛ばし、ゲートを走り抜ける姿はサイの突進そのものだ。

サイギャングはそれに加えて口から炎を出して攻撃する。

戦闘においては意外と突進攻撃を使わずに炎で牽制して距離をとっている。

なぜなら一見破壊力のありそうな突進だがその実、突進攻撃で一番重要な角が弱点だからだ。

そのためサイの特性が全然活かせていない。

これはおそらくだがサイはその貴重な角を人間に乱獲された歴史がある。

そのためそのトラウマをも特性として受け継いでいるのではということだ。

それでなければサイ自慢の突進攻撃を使用しないのは不自然であり、サイの特性である意味がない。

炎を出すだけならばコブラ男やエジプタスなど他にも怪人は存在する。

防御力が特別高い描写もなく、めちゃくちゃバイク攻撃は優れている様子もない。

ただ変装には長けており、3パターンの男性に変装して猛と功をかく乱している。

大会中に二刀流

私の予測ではショッカーの襲来により大会は中止、またはショッカーとの対決により猛、滝は実質レースを棄権すると考えていた。

だが功の洗脳を解かずにそのまま功が優勝するという絵が浮かぶだろうか?

洗脳された功の目的は優勝ではなく猛の抹殺になってしまっているので作戦遂行のために先にゴールすることはないように思う。

そのため猛、滝、功以外の人が優勝して「ショッカーと戦ってたからしょうがない…残念だったね、でも事件は解決したから」というエンディングになると思っていた。

だが今回は功の弟タダシの存在がある。

どういう結果であれタダシの足を完全に治すための道筋がたつことが今回一番良いエンディングとなるだろう。

そうなるとやはり功が優勝する必要がある。

猛や滝が優勝して権利を譲るのもありだがレース中に場外で乱闘してからレースに戻り優勝できるほど東日本選手権は甘いものなのか?と考えたが甘いものだったようだ。

レース中ショッカーに2回もの妨害を受けながらトップとの差5分を逆転。猛が優勝し滝も2位で走り抜けた。

藤兵衛がレース前に後2分縮めないとと冗談で高い目標を課したのに2人とも5分差を縮めやがった!

ショッカー退治と大会優勝でまさに二刀流!いや常人の滝がこれらの出来事にひと通り付き合って2位というのが一番凄いかもしれない。

最後まで諦めないにもほどがある。

そっちのキップ!?

大会の優勝者にはアメリカ行のキップが与えられる。

私はアメリカ行のキップ=アメリカで開催されるロードレースの世界大会への出場権だと思っていました。

なので猛が功にキップを譲りタダシの足を治せるようにという粋な計らいだとしても独断で他の人に出場権を譲渡するというのはおかしくないか?と思っていたらまさかのリアルチケット!単純にアメリカに行けるチケットだったという話しでした。

日本選手権なのに海外旅行が賞品かと思う人もいるかもしません。

ですが1970年代の海外旅行は高級も高級で超高級なそれはもう贅沢なことだったそうです。

1970年代に入ってから旅行券の代理店や割引などが続々登場しました。

ですが仮面ライダー1作目は1971年で年代の前期なのでまだそこまで価格が落ち着いていないと考えられます。

1971年は東京からアメリカまでの片道キップが13万円前後。

往復26万円は案外頑張れば行けそうな値段ですがあくまで当時の26万円です。

当時の物価の4.3倍が現在の価格なので今の112万円相当となります。

当時の大卒初任給が4万前後なので6.5ヶ月分。年収の半分、それも生活しながら年収の半分貯金するなんてなかなか難しいですからね。

そんなチケットをポンとあげるなんて太っ腹ですね。

その代わり足を直してみんなを安心させてねとあえて条件をつけることで相手に遠慮させないような配慮も素敵です。

しかし、そう考えると猛や一文字の海外遠征やFBIが日本に派遣される動きなどかなり費用がかかっていそうですね。

ショッカーも正規ルートではないでしょうが海外から幹部が送り込まれることが多いので燃料費も馬鹿にならないのではないかと思います。

でも悪の組織が資金繰りが厳しくて格安航空券でくるのなんか嫌かも…

ストーリーの転換点と考察

死神博士が正しい!

猛を催涙爆弾で一時的とはいえ視力を奪い崖から落とすことに成功したサイギャング。

だがルンルンでアジトに戻るサイギャングは速攻死神博士に「なぜ本郷に止めを刺さなかったのだ!」としばかれる。

なんと落下した猛は崖下の木に掴まっていたため生きていたのだ。

いつものパターンといえばいつものパターンなのだが死体を確認しないまま帰ってきた挙句、相手は生存していたというオチだ。

生意気にも悔しがるサイギャングに死神博士が確信をついた名言を授ける。

「本郷と戦うにはただ一度のミスも許されん」

これはショッカーがやっと危機感を持ったからというだけではない重みのある言葉だ。

死神博士は日本支部ではほとんど一文字に敗北していたのでイメージがないかもしれないが元々スイス支部の幹部であり、ショッカー殲滅のためヨーロッパに飛んでいた猛とは何度も死闘を繰り広げ敗れてきた。

そんな死神博士が一文字より猛の実力を認め、警戒しているのは当然と言えば当然の話しなのだ。

これからショッカーはアジトと幹部を繋ぐ無線を持たせるなど通信手段の確立が必要である。

今回でいうとサイギャング側からは落下後の様子は確認しにくい位置だったので、アジトのカメラで別角度から猛の様子を確認し生存が確認できたら無線で知らせる。

このようにすれば更なる追い打ちとしてサイギャングの炎で猛が掴まっている木を燃やしてしまえば、崖下に落下、本郷猛を倒すことができたかもしれない。

今回は崖下が海だったので改造人間であれば上手く着水すれば生存できるかもしれないがレースを棄権するほどの重症を負わせられた可能性がある。

そもそも死神博士はよく姿を見せずに仮面ライダーにテレパシーのようなもので語りかけていたのだから幹部怪人にもそれで通信しろよとは思いますね。

予想外のミス

功のサポートとしてピットに控えていた妹の「勝丸ミキ」と「瀬能せのうサナエ」が間違って猛のガソリンを功のバイクに給油してしまう。

藤兵衛も言っている通りガソリンで勝負が決まるわけではない。功のガソリンを使えば良いのだが今回に限っては不都合を招いてしまった。

猛用のガソリンにはサイギャングが異物を混入させており、本来は猛のバイクを爆発させる予定だったものを味方(催眠中の功)のバイクに給油されてしまうという誤算が発生した。

改造人間である猛はバイクの爆発ぐらいで死ぬようなことはないと思うが(むしろ爆風で変身する)、常人である功はただでは済まないだろう。

言葉を選ばずにいうと故意ではないがミキ、サナエのミスで功を殺しかけたのだ。

もしそれが原因で功が死んだら自らのミスを悔やんだことだろう。

だが猛と争う程のレーサーだ。身体は頑丈なようで大した怪我を負わなかったのが幸いした。

ちなみに猛は大した怪我ではないと言っていたが、江東病院に入院した功は包帯グルグルでガッツリ重症に見えた。

今回の特撮表現の面白さ

死神博士の新催眠術表現

死神博士はロウソクに火を灯し2本のキャンドルスタンドで左右交互に往復させることで催眠術をかけている。

こうした複数のロウソクを往復させることで火の揺らぎに振り子のような揺らめきも加わり、より催眠術っぽく表現することに成功している。

新必殺技「ライダーきりもみシュート」の表現

新必殺技「ライダーきりもみシュート」とは敵を「きりもみ」つまり「キリ(ドリル)」で穴を開ける際に両手で挟んだキリを回転させるように「シュート(投げる)」する技だ。

端的に言うと相手をスピン投げ(回転投げ)する技ということだ。

また飛行機が機首を下に垂直に回転しながら落下する様のことをきりもみとも言う。

つまりただの回転投げではなく、空中で回転させながら頭から地面に落下させるという危険な技だ。

おそらくサイギャングの弱点が角だったので頭部にダメージを与える意味での必殺技だと考えられる。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★★☆

高所:★★★☆☆

火力:★★★★☆

水場:★☆☆☆☆

仕掛け:★☆☆☆☆

ロケ地(執筆者の調べ)

・「不明」

次回予告より(第64話「怪人セミミンガ みな殺しのうた!」)

次回のショッカーからの刺客は怪人「セミミンガ」。

セミ」の特性を持った怪人だ。

セミは地中での生活が3~17年と長く、成虫で地上に出ると約1ヶ月で寿命を終える。

セミミンガ姿はいわゆる皆さんがよく見る成虫期の姿なので1ヶ月放っておけば寿命がくるかもしれない。

だが放っておいてはショッカーの作戦が粛々と進むだけだ。

やはり早めに撃破せねば!

そんなセミミンガは強烈な殺人音波で街中を大混乱に巻き込もうとする。

殺人音波とはセミの「ミ~ン!ミ~ン!」という鳴き声のことでしょう。

この音波がどのように人体に影響を与え、死に至らしめるのか。

ショッカータワー」という建物で繰り広げられる死闘。

このタワーはセミの止まり木を表現しているということでしょうか?

みな殺しのうた」というサブタイトルは残虐性と歌にこもる言霊的な力を感じさせるちょっとエモさを感じるタイトルですね。

高所やトラックの荷台で振り回されるなど死闘に相応しいアクションが観れそうだ。

まとめ

二兎負うものは一兎も得ず」ということわざがある通り、一つのことに集中せずあれもこれもと多くを望んで注意が分散した結果、何一つ手に入らないということがある。

だが二兎追っていても一気に二兎捕まえようとせず一つ一つ確実にこなしていけば二兎を得ることが可能かもしれないということを本郷猛は教えてくれた。

ショッカーの強襲はレースを中断してきっちり処理。

諦めずレースに戻り全力でレースに集中。

そして再度ショッカーに強襲されるも確実に撃破したあとにトップとの差を把握しレースに全力を傾けた結果、優勝とショッカー撃破を同時に達成する。

ちょっと主人公補正も入っているが猛がこれら同時に達成できたのは決して単純に諦めない心という抽象的なものだけが理由ではない。

普段からのレースの優勝タイムを把握し自分の実力を比較した時にトラブルが発生してもここまでは挽回できるという感覚を養っていたため冷静にレースを続けることができたのだろう。

そのためサイギャング撃破後もトップとの差が5分とわかると「まだ(自分の実力だと)優勝を狙える」とレースに全力を注げたのだろう。

目標に対して逆算できるということはトラブルが発生してもここまでは大丈夫という心構えが常にできているということだ。

確かにこういった心構えは見習うべき点であるとともに、この偉業は普段からレーサー、研究者、仮面ライダーの三刀流をこなす猛だからこそ達成できた偉業でもある。

今回判明したこと

・猛にはライバルレーサーで友人の「勝丸功」がいる

・立花レーシングクラブに五郎の友人「ナオキ」、「ミツル」が加入する

・あくまで現在日本支部担当幹部は地獄大使で死神博士は海外出張組

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