【仮面ライダー】58話「怪人毒トカゲ おそれ谷の決斗!!」感想・考察(ネタバレ有) 神の雫

ネタバレがあります。
本編を楽しんだ後に閲覧することをオススメします。

東映 1971年

あらすじ

深夜「大田黒研究所」では正に今、神に逆らうような発明が完成しようとしていた。

その発明品の名は「Xアルファー液」。

この液体は死体を生き返らせることのできるとんでもない液体だ。

科学の力で自然の摂理すら揺るがしかねない発明だ。

その最終実験が行われようとしていた。

被験体は「死後3週間経っている犬」。

助手の「山本」と「橋本良子はしもとよしこ」は犬にXアルファー液を注入し、「大田黒おおたぐろ博士」は光線を当てる。

すると犬が生き返ったのだ!実験は大成功!

早速この液体の臨床実験を行うため明日、城北大学に液体を持っていくよう山本に指示。

だがそんな神の領域に及ぶものをショッカーが見逃すはずがない。

山本は研究所から帰宅中に怪人「毒トカゲ男」に襲われ死んでしまう。

辛うじて山本の最後の抵抗で液体は爆発され、ショッカーの手に渡ることは免れた。

だがこれで諦めるショッカーではない。

今度は博士や良子にまで魔の手が伸びる…

仮面ライダーを追い込むのは怪人のスペックじゃない!

怪人「毒トカゲ男」。

口から毒液を吐く怪人はここまでかなり登場しているので今さら珍しくもない。

舌を伸ばして攻撃するも仮面ライダーに「この舌さえなければただの物にすぎん!」と言われる始末。

だが仮面ライダーを横に回避できない一方通行の吊り橋に誘い込んで毒液で痺れさせて吊り橋を落とし、重傷に追い込むという頭脳プレーを披露している。

スペックが似ていても使い方によって仮面ライダーを倒すチャンスは無数にある。

何なら数で圧倒できるショッカーの方が有利なくらいだ。

ショッカーが打倒仮面ライダーの為に工夫すればするほどアクション、ロケ地、仕掛けが面白くなる。

今回だと毒トカゲ男の特性を生かして、確実に毒液を当てるという場面を作るために吊り橋をロケ地に。

工場地帯でアクションを行うことでアスレチックのようなアクションを表現。

2重の罠を仕掛けることで緊迫感を演出している。

今回は怪人自身がどうというよりかはショッカー全体で仮面ライダーを追い込むために、かなり工夫を凝らしており、その工夫が物語を盛り上げている。

ちなみに前回の予告で新技「ヘッドクラッシャー」を駆使してと告知されていたのでヘッドクラッシャーを用いて毒トカゲ男に色々するのかと思いきや最後の決め技として「ライダーヘッドクラッシャー」が登場した程度でした。

ちなみに「ライダーヘッドクラッシャー」の53話「怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦」が本当の初登場だ。

死人に口なしを口ありに

ショッカーが狙う「Xアルファー液」は死んだ生物を生き返らせることができる。

その神のような液体を使いショッカーは「科学力増強作戦」を行おうとしている。

まずこのXアルファー液を2年前に死んだイギリスの今世紀最大の物理学者「エドワード博士」と数学者「ケインズ博士」に注入することで生き返らせる。

そしてこの2人に殺人兵器を作らせようと企んでいる。

ちなみにショッカーは2人の冷凍死体をロンドン博物館から奪い去って手に入れている。

ロンドンで死体が収蔵していそうな場所はやはり「大英博物館」か。

厳密には死体というよりミイラを収蔵しているのだが可能性としてはこの博物館がモデルとして近い。

そんな博物館に収蔵されるほどの死体を日本に持ち込んだとなったら国際問題になりそうだ。

なんと罰当たりな!

両親を生き返らせることができるのでは?

橋本良子」と「橋本キヨシ」は早くに両親を亡くしており、兄弟2人で生活している。

おそらく両親は良子が大学卒業前後に死んでしまったと思われる。

なぜならそのずっと前に両親が亡くなっていれば良子が博士課程を修了するための学費などを捻出するのは難しいと考えたからだ。

それではなければ良子も研究所で働ける身分ではなかったと思うのでこの考えに至った。

良子が大田黒研究所で働いているのも、Xアルファー液があれば両親、もしくは同じ境遇の人々を救うことができると考えたためではないだろうか。

そしてXアルファー液は完成。大田黒博士は「君のおかげだ」と絶賛するように良子は優秀な学者であると同時にその境遇からこの研究にどれだけ情熱を燃やしていたかがわかる。

視聴者的には「この薬品で両親を生き返らせることができるのでは?」と感じるだろうが残念…

ショッカーが用意周到なように、死人といってもある程度死体の鮮度が大事だということだ。

実験では死後3週間の犬、そして死後2年だが冷凍保存されていた2人の天才学者。

このことからもわかる通り、Xアルファー液の効果条件として死体が新鮮であり細胞がまだ生きていることが重要だと思われる。

私は科学者としての意見はできないがXアルファー液は「細胞に働きかけるもの」ではないかと考える。

そして死に方で復活できる個体とできない個体があるように思う。

もし老衰で死んだのであれば生き返っても若返るわけではないのであれば、またすぐに老衰してしまうだろう。

病気で死亡した場合も同様で根本的に病気が治らなければ生き返ってもすぐに死亡してしまうだろう。

もし死亡したことで病気も無くなり、その後にXアルファー液を注入することで病気がない状態で復活することができるのなら有用だ。

事故による死亡はどうだろう?裂傷や骨折、出血などから回復するには人間自体の免疫細胞や修復機能が生きている。つまり重症でも本人が生きている必要がある。

う~ん結局Xアルファーがどのくらいの状態の死人に効果があるのかは詳細がわからなかった。

そもそもショッカーがこの薬品を入手したところで2年前の死体に効く保証はない。

城北大学で臨床実験を行う前だったので人間に効果があるのかもわからない。

現在はっきりしているのは死体が死後3週間のもの、そして犬には有効性があることだけだ。

藤兵衛の心配度

吊り橋から落下した猛は重症をおしてもショッカーを止めに行こうとする。

だが藤兵衛は「猛!ダメじゃないか!寝てなきゃ!」、「その身体じゃ無理だ、滝に任しとけ」、「馬鹿野郎!自分の身体考えるんだ!」と止める。

だが猛の「行かしてくれよ!親父さん!」という決意に押され送り出してしまう。

ここは師弟関係だからこそ良いシーンなのだが…

一文字がアリガバリに苦戦して落ち込んでいる31話「死斗!ありくい魔人アリガバリ」では「たった一人の子供の願いも叶えてやれずに、やれ正義だの人類を守るなどでかい口叩くな!」、「世の中に絶対なんてありゃしない!1度や2度痛い目にあったからって尻込みするほど貴様ってやつは腰抜けなのか?」と突き放す。

38話「稲妻怪人エイキングの世界暗黒作戦」では「自分自身に甘えている奴に命をかけることなんてできるもんか!」と重傷の一文字には厳しい。

ちょっと!この違い!

猛の場合は昔からの付き合いと改造初期、海外遠征など苦労を嫌という程見てきたからこそ無茶しすぎと制止するのかもしれない。

それに比べて一文字は付き合いが浅いため、そんな奴のいうことは甘えに聞こえるのだろう。

まあ話しが進むにつれてスキーに連れて行ったり、入院した時に身体をいたわったりと関係が深まっているので、出会った初期は仮面ライダー研修期間として厳しくしていたのかもしれない。

今回もキヨシが泣いていると「男の子が涙なんか流したらみっともないぞ…仮面ライダーが泣いてるキヨシ君見たら笑っちゃうぞ!」と男子たるもの涙を見せるな時代らしい励まし方ですね。

今でこそ多様性で男性でも涙や弱みを見せても良いという空気になりつつあります。

まあ…個人的には出来る事なら涙は見せたくはないですよね…人には強要はしないけど自分は堪えたい性分です。

大田黒博士に花を持たせる

良子は大田黒博士の助手だがなんかこの2人臭い…

男性助手は山本と苗字呼びなのに良子は名前呼びだし(山本も良子と呼んでいたが)、研究の成果も君のおかげだと言って肩を抱いている。

良子が人質の時も迷わず研究データを滝に託す。

人の命には変えられないと言っているが良子だから即決したのではないだろうか。

何が言いたいかと言うと、大田黒博士は良子に好意があるのではないだろうかということ。

両親が早くに亡くなり、弟と2人で大変な良子のことを支えたいと思っているように見える。

今回の事件の解決を猛は「お礼は博士に何も言わずにこれを渡してくれた博士こそ良子さんの命を救ってくれたんです」と良子に言っている。

大田黒博士は生化学研究の権威で城北大学出身。つまり猛の先輩に当たるのだ。

そんな先輩に花を持たせることも忘れない。

できる後輩やで…

レディースも「そうよね~」と援護射撃。さすが女の子…こいつら勘づいていやがったな…

最後、猛と滝を見送る2人はお互いに目配せをしているしなんかいい雰囲気!

これで2人の距離が縮まれば良いですね!

ストーリーの転換点と考察

回転カッターと爆弾の罠の原理を良子の前で話す

ショッカーは良子を人質にXアルファー液の研究データを手に入れるとともに仮面ライダーや滝を始末するため、ある画期的な罠を仕掛けた。

良子は手術台に張り付けのまま回転カッターの刃が近づく。

そこへ現れた仮面ライダーは即座に回転カッターのスイッチを切ろうとするだろう。

するとスイッチがオフになることと連動して爆弾が爆発する。

時間制限の焦りを利用してスイッチを先に切るであろうことを予測した良い作戦だ。

これはショッカーうまいことやったなと感心した。

だが、唯一詰めが甘かったこと。

それはその罠の原理を良子がいる前で喋っていたことだ。

当然良子は救出にきた仮面ライダーに罠のことを助言し、滝と2人で先に爆弾を解体、その後カッターのスイッチを切ることで良子救出と同時に爆弾を不発とすることにも成功している。

今後、作戦概要は人質の前でペラペラ喋るのは禁止!

今回の特撮表現の面白さ

トランクの爆発

毒トカゲ男にXアルファー液を奪われそうになった山本助手が死に際にトランクを爆発させて薬の流出を防いだ。

爆発した後に燃え続けていたのでトランクに火薬を仕込んでいたプラス燃料を仕込んでいたのではないだろうか。

吊り橋を切り落とす表現

仮面ライダーと毒トカゲ男が吊り橋の上で戦闘を行うシーンがある。

仮面ライダーは毒液で痺れ、谷底に落とされそうになる。

なんとか吊り橋のへりにつかまって落下を免れようとするが、その隙に橋を切り落とされ谷底に落下してしまう。

もちろん本当に実物の橋を切り落とすわけにはいかないので模型の橋に仮面ライダーの模型をくっつけて橋の片方を切り落とし、吊り橋の崩落を表現している。

ただこのシーン、吊り橋とともに仮面ライダーが落ちる音が「ポチャ…」と覇気がない効果音が鳴ってすぐにCM前のアイキャッチが入る。

ここはちょっとだけ長めに「バッシャーン!」と水面に叩きつけるような効果音が良かったかな…

だが模型シーン前の吊り橋ロープを掴んで落下を免れようするシーンまでは実写なので凄い迫力だ。

下手したら本当に演者が落下する寸前だ。

しかもロケ地である「旧尾長島橋」は手すりは紐だけ、足場は竹で敷き詰められているので下がスケスケ。

高所恐怖症なら立っていられないだろう。

特撮満足度(★で5段階評価)

特撮満足度

アクション:★★★★★

高所:★★★★★

火力:★★★☆☆

水場:★★★☆☆

仕掛け:★★★★☆

ロケ地(執筆者の調べ)

・「旧尾長島橋」

次回予告より(第59話「底なし沼の怪人ミミズ男!」)

次回のショッカーからの刺客は怪人「ミミズ男」。

ミミズ」の特性を持った怪人だ。

ミミズは人間にとっては益虫で土壌改善や飼料、栄養豊富なため食材として使われる国もある。

また土の中に生息すると思われがちだが、予告でもミミズ男が湖から出現したように水の中で暮らすミミズもいる。

恐怖の殺人リング」を使うというミミズ男。

予告映像を見る限り、そのリングで仮面ライダーの首を絞めたり、谷底に落としたりしている。

だが仮面ライダーはライダーパワーで復活するようだ。

これは気合い的な比喩なのか、本当にボロボロとなった死の淵から復活するのか。

人類の益虫がどのように敵対するのか注目です。

まとめ

不老不死の研究は人類の本当のテーマではないかもしれませんが富を持つものにとっては永遠のテーマだ。

この財産を長生きして使いまくりたい、さらに富を増やしたい。

長く世界のトップに君臨したい、富と名声と若さが欲しい。

言い出したらキリがありません。

今回、大田黒博士が開発した死人を生き返らせる薬品「Xアルファー液」はショッカーの悪用は免れた。

だがこの薬品は世界中の富裕層が欲しがるだろう。

そして死んだ兵士を生き返らせて再度戦場に送る、天才的犯罪者を生き返らせて悪行を働く(まさにショッカー)など死人を生き返らせる技術1つであらゆる欲望が渦巻く社会となる。

そうは言っても今の社会では死人を生き返らせるなんていくら金を積んでも不可能なのでなんとか富裕層の暴走を止めている面もある。

富裕層は若い人の血を飲んだり、浴びたり、変な宗教にハマってみたり、アンチエイジングなどのために金の力で非道なことも行ってきた歴史もある。

それぐらい狂気になるのが不老不死、若さ、命なのだ。

大田黒博士は元々この発明を城北大学で臨床実験を行うつもりであったが取り下げたかもしれない。

それだけ周りと社会を混乱させる薬品だと今回分かったのだから…

今回判明したこと

・ショッカーの車のマフラーにはまきびし(小型爆弾)が搭載されている

・仮面ライダーは毒液攻撃を受けると溶けずに痺れる

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